恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 85
ということは、どうだ?
誰が、一体、私の動静を良平に伝えているのか?
普通に考えれば、前沢…
営業所長の前沢を置いて、ほかにない…
他の社員の可能性も、なきにしもあらずだが、普通に考えれば、その組織のトップ…
私のいる営業所では、前沢が、所長だから、トップ…
そのトップが、良平に伝えているに違いない…
私は、そう、思った…
私は、そう、睨んだ…
そして、それを、思えば、前沢と、以前、ファミレスで、密談したことを、思い出した…
あの米沢京子のことで、密談したことを、思い出した…
今、思えば、あの密談こそ、重要…
なぜなら、密談することで、親しくなるからだ…
親しくなることで、こちらも、前沢に心を開くからだ…
それゆえ、前沢を、警戒しなくなるからだ…
他人と親しくなるには、なにか、相談を持ちかけるのが、一番…
一番だ…
それによって、距離が縮まる…
そういうことだ…
私も、あれ以来、前沢と距離が縮まった…
信頼できる上司と思うようになった(苦笑)…
そして、それが、密談の成果なのかも、しれない…
それこそが、密談の成果なのかも、しれない…
そして、それを、狙って、前沢が、私を誘った?…
私と米沢京子の仲をおもんぱかるふりをして、誘った?…
そう、考えるのは、うがち過ぎか?
そう、考えるのが、考え過ぎか?
私は、思った…
私は、考えた…
が、
答えは、出ない…
それが、真実か、否かは、答えが出ない…
真実は、いつも、一つ…
これが、名探偵コナンの決め台詞だが、まさに、その通り…
真実は、一つだけだからだ…
そして、その真実は、いずれ、わかる…
なぜなら、もし、前沢が、私を監視しているならば、私が、少し、変わったことを、すれば、いい…
たとえば、あの米沢京子と、仲良くするとか?…
いや、
さすがに、それは、できないか?
あの米沢京子は、私を嫌っている…
私を目の敵にしているからだ…
それゆえ、さすがに、私も彼女に近付くことが、できない…
怖くて、近付くことが、できない(苦笑)…
が、
そこまで、考えて、気付いた…
あの米沢京子…
どうして、私を、ここまで、嫌っているのだろう?
そう、考えた…
先日、あの米沢京子は、熱海で、私と平造と会った…
熱海のハローワークで、私と平造と会った…
そして、平造が、いなくなると、あの米沢京子は、私を罵倒した…
私を、これでもかと、罵倒した…
なぜ、罵倒したのか?
要するに、彼女は、私になりたかったんだと、知った……
私のように、平造、いや、米倉家の人間に大事にされたかったんだと、知った…
彼女が、あのとき、そう、言ったからだ…
だから、知った…
が、
今、考えれば、おかしい…
なにが、おかしいのか?
彼女が、私に嫉妬し過ぎるのが、おかしいのだ…
あまりにも、露骨に、私に嫉妬し過ぎる…
これは、おかしい…
職場で、誰にでも、わかるように、嫉妬するのも、おかしいし、また、あれほど、嫉妬するのも、おかしい…
わざと、やっている?
ふと、そう、思った…
誰にでも、わかるように、わざと、やっている?…
そう、思った…
それならば、私にも、わかる…
私でも、納得する…
そして、もう一つ…
なぜ、あれほど、私に嫉妬するのか?
それは、もしかしたら?
もしかしたら、あの米沢京子…
彼女は、水野のスパイではないか?
ふと、そう、思った…
なぜ、そう、思ったか?
彼女は、おそらく、私が、米倉家の人間と、親しくしているだけでなく、水野家の人間とも、親しくしているのを、知っているのではないか?
具体的には、水野グループの総帥の水野良平…
その妻、春子…
そして、なにより、次期水野グループ総帥の、透と、親しくしているのを、知っているのでは、ないか?
だから、余計に、私を憎む…
だから、余計に、私を激しく憎むのでは、ないか?
ふと、気付いた…
まして、彼女は、ルックスも悪くない…
いや、
ルックスも、いい…
私や、好子さんとは、真逆なタイプだが、ルックスも、いい…
ちょうど、芸能人で言えば、米倉涼子や、飯島直子のような派手なタイプ…
いわゆる、ヤンキーキャラだが、野性的な印象で、おとなしい印象の私や好子さんとは、真逆…
真逆なタイプの美人だ…
そして、その美人というのが、なにより、大きい…
彼女の立場に立てば、どうして、自分は、高見と、同じ美人なのに、高見のように、優遇されないのか?
と、なる…
彼女の立場に立てば、そう、考えられる…
つまりは、ルックスで、私に負けてない…
なのに、なぜ、私は、優遇されず、高見は、優遇されるのか?
と、なる…
彼女の立場に立てば、当たり前だ…
とりわけ、女は、ルックスにこだわる…
ルックス=見た目にこだわる…
頭の良さよりも、ルックスにこだわる…
例えば、職場の身近な同僚で、早稲田や慶応を出た、平凡なルックスの女よりも、高卒でも、美人の女の方を意識する…
そういうことだ…
そして、それは、なぜか?
それは、おそらく、美人の方が、目立つから…
目立つ=価値があると、考えられるからだ…
頭の良い、女より、美人の方が、周囲にチヤホヤされるからだ…
それが、わかっているから、頭の良さよりも、美人の方が、価値があると、考える…
そういうことだ…
それゆえ、あの米沢京子は、私に負けていない…
私、高見ちづるに、負けていない…
にもかかわらず、私のようにチヤホヤされない…
私のように、優遇されない…
おそらく、それが、悔しいのだ…
悔しくて、仕方がないのだ…
私は、思った…
私は、考えた…
それから、翌日、会社に出社した…
会社に出社して、どうしようか、悩んだ…
ときどき、わざとらしく、所長の前沢の方を、見たが、前沢は、私の視線に気付かなかった…
その日は、前沢は、忙しそうで、朝から、バタバタしていた…
それゆえ、たとえ、私の視線に気付いたとしても、私に構っている時間が、なかったのだろう…
前沢は、忙しそうに、バタバタして、どこかに、出張した…
私は、それを、見て、ダメだと、思った…
私は、それを、見て、前沢の反応を見るのは、今日は、ダメだと、思った…
が、
他に、どうして、いいか、わからない…
私が、なにかして、それに、前沢が反応して、その結果、私の行動が、水野良平に、伝わるか、どうか、調べる…
そう、目論んで、会社に出社したが、その予定が、狂った…
前沢が、出張で、いなくなることで、狂った…
さて、それでは、どうするか?
悩んだ…
悩みながら、仕事をした…
仕事は、以前も、書いたが、営業支援…
営業の補佐業務だ…
あくまで、営業所で、パソコンに向かって、伝票の整理等の書類整理が、基本…
それゆえ、最初は、戸惑ったが、慣れれば、単純だ…
基本的に、頭を使う仕事ではない(苦笑)…
誰にでも、できる仕事だ…
ただ、この手の仕事は、手が早いか、遅いか?
それが、すべてだ…
頭は、関係ない(笑)…
いや、関係ないと、言ったら、言い過ぎだろうが、世の中には、この手の仕事が、多い…
基本は、単純労働…
しかしながら、単純労働の基本は、手が早いか、否か?
それが、基準だ…
だから、いかに、偏差値の高い大学を出ていても、手が、遅くては、ダメ…
使い物にならない…
そして、世の中には、それを、見て、
「…なんだ? いい大学を出ても、高卒よりも、使えないじゃないか?…」
と、皮肉を言う人間が、いるが、それでは、バカ丸出し…
要するに、そのひとの基準では、何事も、できるか、否か、それが、すべて…
相手の頭の良し悪しが、自分は、さっぱり、わからないと、言っているようなものだからだ…
幸い、私は、手が早い方では、なかったが、遅くもなかった…
だから、今の仕事にも、すぐに慣れた…
これは、以前も言ったことがあるが、おそらくは、水野良平が、私に気を使ってくれたのだと、思う…
私は、今、33歳…
もうすぐ、34歳になる…
この歳で、まったくの未経験の仕事は辛い…
正直、できるか、否かは、やってみなければ、わからない…
が、
さすがに、それにチャレンジするのが、億劫…
難しい…
これが、もっと、若ければ、違う…
自分自身、もっと、軽く考えるし、周囲の目も、違う…
周囲の人間も、相手が、若ければ、仕方ないと、考える…
しかしながら、歳を取れば、周囲の目も厳しくなる…
あの歳で、こんなことも、できないの?
と、陰口を叩かれるし、本人も、それがわかっている…
それが、わかっているから、余計に憶病になる…
そして、それこそが、歳を取るということだ(苦笑)…
若い時と、違って、少しは、周囲が、見えてくる…
それゆえ、何事も、新しいことに、一歩踏み出すのが、怖くなる…
自分の力量を、少しは、わかってくることも、大きい…
真逆に言えば、それが、わからない人間は、お子ちゃま…
永遠に、お子ちゃまだ…
私は、思った…
私は、考えた…
そして、そんなときだった…
「…あの…高見さん…」
と、私に話しかけて、くるものが、あった…
隣の席の女のコだった…




