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恋かもしれない 恋愛偏差値ゼロ 第3部  作者: トモサン


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84/128

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 84

そして、そこまで、考えたとき、


 「…彼女には、謎がある…」


 と、正造が、言った…


 「…謎?…」


 「…そうです…」


 「…なにが、謎なんですか?…」


 「…まずは、父が、彼女を選んだこと…」


 「…選んだこと?…」


 「…米倉報公会の名簿には、多数の人間が、います…ですから、なぜ、彼女なのか、わからない…それが、謎です…」


 「…」


 「…そして、もう一つは…」


 「…もう一つは?…」


 「…なぜ、今の職場に配属されたのか?…」


 「…どういう意味ですか?…」


 「…彼女が、今の職場に、配属されたのは、高見さんより、先です…ですが、高見さんと、同じ職場に配属された…」


 「…」


 「…これは、単なる偶然か? それとも…高見さんが、配属されるのを、事前に知っていて、あらかじめ、同じ職場に、配属したのか?…」


 正造が、言う…


 実に、意味深に言う…


 まるで、解けないミステリーのように、言う…


 が、


 それでは、まるで、私が、重要人物…


 それでは、まるで、私をマークするように、彼女を配置したことになる…


 そう、考えると、ちゃんちゃら、おかしかった…


 なにしろ、私だ…


 私、高見ちづるだ…


 生まれも、平凡なら、育ちも、平凡…


 平凡そのものの女だ…


 そんな平凡な女を、まるで、重要人物のように、扱う…


 それが、面白かった…


 同時に、バカバカしかった…


 だから、


 「…正造さん…それでは、まるで、私が、重要人物のようですよ…」


 と、笑った…


 笑って言った…


 「…私が、そんな大物のわけ、ないじゃないですか?…」


 私が、言うと、


 「…いえ、大物です…」


 と、正造が、答えた…


 至極、真面目な感じで、答えた…


 私は、思わず、


 「…ふざけないで、下さい!…」


 と、怒鳴りかけたが、それでは、面白くない…


 だから、


 「…あら、一体、私が、どうして、大物なんですか?…」


 と、真逆に正造に、聞いてやった…


 その方が、面白いと、思ったからだ…


 すると、正造が、電話の向こう側から、


 「…人脈ですよ…」


 と、一言、答えた…


 「…人脈?…」


 「…そうです…」


 「…一体、私にどんな人脈があるんですか?…」


 「…水野透(とおる)と、米倉好子…」


 「…二人が、どうか、したんですか?…」


 「…二人とも、高見さんが、好き…高見さんを、頼りにしている…」


 「…頼りにしている? そんなことは、ありませんよ…」


 「…いえ、高見さんが、思っていないだけです…」


 「…」


 「…それに、二人の素性です…」


 「…素性?…」


 「…透(とおる)は、次期水野クループ総帥…好子は、米倉家当主です…ですから、二人とも、大物です…」


 「…大物…」


 「…高見さんは、近付き過ぎたんですよ…」


 「…近付き過ぎた?…」


 「…ボクが、言うのも、なんですが、二人とも、凄い肩書です…二人の結婚は、高見さんも、ご承知のように、テレビやネットで、大々的に話題になりました…でも、身近に、いて、親しくなれば、なんともない…なんとも、思わない…」


 「…なんとも思わない?…」


 「…二人とも、至って、平凡な人間です…だから、高見さんも、最初は、二人の生まれを見て、緊張したかも、しれませんが、じきに、なんとも、思わなくなったでしょ?…」


 米倉正造に、言われると、その通り…


 その通りと、頷かざるを得なかった…


 最初は、この正造に、あの米倉の豪邸に、招かれ、緊張した…


 次には、あの透(とおる)と、知り合った…


 透(とおる)は、身分を隠して、私と会ったが、元来は、透(とおる)は、軽い性格…


 その後、水野財閥の御曹司と、わかったが、それでも、偉いとは、思えなかった…


 私より、偉いとは、思えなかった(笑)…


 そういうことだ…


 好子さんに、しても、そう…


 好子さんに、しても、同じだ…


 最初は、大金持ちのお嬢様だから、私とは、身分が違うと思ったが、知り合って、会話を交わす間に、だんだんと、距離が、縮まり、仲良くなった(苦笑)…


 つまりは、私は、いつのまにか、二人と仲良くなったということだ…


 私とは、身分違いの二人と、仲良くなったということだ…


 私は、考えた…


 そして、そんなことを、考えていると、


 「…だから、高見さんが、重要なんですよ…」


 と、正造が、電話の向こう側から、念を押した…


 「…私が、重要?…」


 「…二人に、影響力がある…だから、高見さんを監視する必要がある…」


 「…私を監視?…」


 「…たぶん、あの米沢京子が、高見さんと、同じ職場に配属されたのは、そのためです…」


 正造が、断言した…


 私が、思ってもいないことを、断言した…


 と、同時に、驚いた…


 私が、そんな重要人物扱いされていることに、驚いた…


 が、


 しかしながら、そう、言われれば、わかる…


 そう、説明されれば、わかる…


 私が、重要人物であることがわかる(苦笑)…


 監視したくなるほどの重要人物だということが、わかるのだ…


 「…ですから、くれぐれも、気を付けることです…」


 正造が、言った…


 そして、それを、最後に、電話を切ろうとした…


 「…いいですか? 自分の立ち位置、影響力を考えて、行動して下さい…」


 「…影響力?…」


 「…そうです…」


 その言葉を最後に、正造が、電話を切った…


 私は、まだ、正造と、話したかった…


 だから、電話を正造に、かけようかと、思った…


 一瞬だが、思った…


 が、


 止めた…


 これ以上、正造と話しても、情報が、得られないと、思ったからだ…


 正造は、おしゃべりではない…


 それゆえ、余計なことは、言わないだろう…


 いくら、私が、聞いても、しゃべらないだろう…


 これが、おしゃべりな人間なら、違う…


 私と話している最中に、つい、余計なことを、しゃべってしまうからだ…


 だから、それを、狙って、会話を続けることが、できる…


 が、


 正造は、おしゃべりではない…


 こちらが、聞いても、肝心なことは、はぐらかすだろう…


 それが、わかっているから、電話をかけるのは、止めた…


 それに、しても…


 それに、しても、ストレスがたまる…


 一体、なにが、目的だ?…


 一体、なにを、目的にして、動いているのか?


 さっぱり、わからない…


 誰が、なにを、目的に、動いているのか?


 さっぱり、わからない…


 それゆえ、不満が、たまった…


 ストレスが、たまった…


 私は、そんなことを、考えながら、お風呂に入った…


 お風呂に入って、湯船に浸かり、考える…


 すると、なんだか、ホッとする…


 ホッとして、考えが、浮かぶ…


 今回の一件は、私が、今のM商会に、入社してから、始まった…


 M商会は、水野グループ…


 M商会のMは、水野のM…


 M商会の支店、いや、営業所が、私の自宅から、近い場所にあったから、そこに入れてもらった…


 透(とおる)の父親である、水野グループ総帥の水野良平に入れてもらった…


 以前、勤めていた、金崎実業の居心地が悪くなり、自分から、退職せざるを得なくなったからだ(涙)…


 だから、働く場所をなくした私に水野良平が、手を差し伸べてくれた…


 それゆえ、私は、良平に感謝した…


 滅茶苦茶、感謝した…


 が、


 さっきの米倉正造の言葉で、ふと、気付いた…


 見方を変えれば、私は、良平が、トップの水野グループで、働いている…


 それゆえ、私の動静は、すべて、良平に伝わっているに、違いない…


 見方を変えれば、私は、監視されているに、等しい…


 良平に監視されているに、等しいのだ…


 私は、それに、気付いた…


 遅まきながら、気付いた…


 つまりは、私は、良平の手のひらの中にいる…


 私の一挙手一投足は、良平に伝えられている可能性がある…


 だとしたら、一体、良平は、なぜ、そんな真似をするのか?


 すべては、透(とおる)のため?…


 息子の透(とおる)のためだ…


 透(とおる)は、私と親しい…


 それゆえ、私を監視していれば、透(とおる)の動静がわかる…


 今、透(とおる)は、制御が、効かなくなっている…


 父の良平に無断で、サウジアラビア政府と共同で、なにやら、ビッグプロジェクトをやると、大風呂敷を広げた…


 とても、水野グループのすることではない…


 水野グループの実力をはるかに、超えている…


 それが、できるのは、日本では、三井や、三菱、住友、そして、五井ぐらいのものだ…


 サウジアラビアのような大国と共同で、プロジェクトを立ち上げることなど、水野グループの力では、到底できない…


 それが、わかっている良平は、心配して、私に相談した…


 この高見ちづるに、相談した(苦笑)…


 この高見ちづるに、胸の内を明かした…


 が、


 考えてみれば、おかしい…


 こんな平凡な私に、水野グループの総帥が、そんなことを、打ち明けるのは、おかしい…


 なにしろ、私だ…


 高見ちづるだ…


 平凡な女だ…


 どこにでも、いる平凡な女だ…


 他人様よりも、優れているとすれば、ルックスだが、それでも、この世の中には、私よりも、キレイな女は、ごまんといる(苦笑)…


 現に、私は、米倉好子さんと、ルックスが似ている…


 姉妹レベルで、似ている…


 つまりは、私レベルのルックスの女は、世の中に、ごまんといるということだ…


 が、


 私は、たしかに、その好子さんとも、仲がいい…


 なぜか、わからないが、仲がいい…


 いや、


 なぜか、わからないのでは、ない…


 なぜなのか、わかっている…


 それは、今も言ったように、私と好子さんが、姉妹のように、似ているから…


 同じタイプの美人だから…


 身長、155㎝ほどの小柄な美人だからだ…


 それゆえ、好子さんは、私に悩みを打ち明けた…


 学生時代から、大勢の男に告白された悩みを打ち明けた…


 これは、普通なら、できない…


 なぜなら、普通にそんなことを、打ち明ければ、いかに、仲の良い同性の友人でも、調子に乗っていると、思われるからだ…


 美人だから、調子に乗っていると、思われるからだ…


 だから、相談することが、できない…


 打ち明けることが、できない…


 そういうことだ…


 だが、それが、私なら、できた…


 私なら、話すことが、できた…


 同じルックスだから、同じような環境だろうと、推察されたからだ…


 同じように、大勢の男たちから、コクられた経験があると、思われたからだ(笑)…


 だから、仲良くなれた…


 そして、そこまで、考えたとき、あらためて、良平が、私を手元に置きたい理由がわかった…


 水野グループに置きたい理由が、わかった…


 透(とおる)と、好子さんと、仲が良い私…


 私、高見ちづる…


 私を監視することで、二人の動静を知ることが、できる…


 そう、思ったに違いなかった…


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