恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 82
私は、驚いた…
当たり前だが、驚いた…
まさか、このタイミングで、米倉正造から、電話があるとは、思わなかったからだ…
が、
少し、考えて、その考えが変わった…
これは、当たり前…
当たり前だと、思った…
なぜなら、私は、つい、さっきまで、あのボンボンのお屋敷にいた…
五井家の当主のお屋敷にいた…
そして、あの五井家の当主と、米倉正造は、友達…
飲み友達と聞いたからだ…
だから、驚きは、なかった…
きっと、あの後、あのボンボンが、正造に連絡を入れたに違いなかったからだ…
だから、このタイミングで、私に連絡を入れた…
そういうことだと、思った…
そして、それが、わかると、電話に出てみたくなった…
あの米倉正造が、どうして、私と、あのボンボンを会わせようとしたのか?
その狙いが、知りたかったからだ…
それゆえ、電話に出てみたくなった…
だから、急いで、電話に出た…
「…ハイ…高見です…」
と、電話に出た…
すると、だ…
「…お元気そうですね…安心しました…」
という声が聞こえてきた…
まぎれもない、あの米倉正造の声が、聞こえてきた…
私は、
「…米倉さん?…」
と、聞き返した…
まだ、正造が、自分の名前を名乗っていないからだ…
「…そうです…米倉です…米倉正造です…」
と、正造が名乗った…
それゆえ、わかり切ったことだが、安心した…
安心して、私は、反撃することにした(笑)…
いや、
反撃ではない…
この米倉正造を質問責めにすることにした…
「…待ってましたよ…」
と、言って、質問責めにすることにした…
「…待っていた?…」
「…そう、待っていました…」
「…ボクが、高見さんに、電話をするのが、わかっていた?…」
「…そうです…」
「…どうして、わかっていたんですか?…」
「…今日、私が、あのボンボンと、あのお屋敷で、なにが、あったか、あのボンボンに聞いたでしょ?…」
私が、怒って言うと、
「…ボンボン…」
と、電話の向こう側の正造が、絶句した…
それを、聞いて、一瞬、さすがに、ボンボンは、言い過ぎたと思ったが、それは、一瞬…
一瞬だけだった…
すぐに、開き直った…
五井の当主のボンボンに会って、それを、ボンボンと呼んで、なにが、悪いんだと、開き直った(爆笑)…
が、
正造は、違った…
さすがに、違った…
「…いくらなんでも、ボンボンは、言い過ぎですよ…高見さん…」
と、私に、言ってきた…
が、
私は、ひるまなかった…
正造の抗議に、耳を貸さなかった…
それゆえ、
「…ボンボンは、ボンボンですよ…」
と、言ってやった…
「…違いますか?…」
私が、勇んで、言うと、さすがに、正造もなにも、言わなかった…
きっと、私になにを言っても、仕方がないと、思ったのだろう…
が、
さすがに、正造が、
「…今日、そんなに、あの諏訪野さんの家で、なにか、高見さんが、気に障ることが、あったんですか?…」
と、私にストレートに聞いたときは、頭に来た…
むかっ腹が立った…
思わず、
「…なにが、あったか、知っているはずですよ!…」
と、スマホに向かって、大声で怒鳴ってしまった…
自分でも、さすがに、怒鳴ったあとは、やり過ぎたと、思ったが、後の祭り…
怒鳴ってしまったものは、仕方がない…
開き直ることにした…
それしか、方法が、なかった(笑)…
が、
私が、怒鳴ってから、しばらく、電話の向こう側から、声が、聞こえてこなくなった…
まさか、故障ではあるまい…
まさか?
そんなバカなことが、あるわけはない…
思わず、本気で、そう思うほど、長く沈黙があった…
それから、ようやく、
「…高見さんが、そんなに、怒っているとは、知りませんでした…」
と、正造の殊勝な声が、聞こえてきた…
「…あの諏訪野さんは、決して、悪いひとでは、ありません…高見さんが、どんなひとか、試すために、わざと高見さんを、怒らせたんだと、言ってました…だから、悪意はありません…許して、やって、くれませんか?…」
正造が、言った…
私の気持ちを逆なでするようなことを、言った(怒)…
だから、余計に、頭に来た…
余計に、むかっ腹が立った…
「…悪いひとじゃなくて、どうして、わざと、私を怒らせるような真似をするんですか!…」
と、つい、大声を出した…
「…あんな真似を、するひとが、悪いひとじゃなかったら、この世の中に、悪いひとは、一人もいませんよ!…」
と、大声で、続けた…
自分でも、ビックリするほど、大声で、続けた…
これには、自分でも、自分に驚いた…
まさか、こんなに、大声を出して、怒るとは、自分でも、驚いた…
まさかと言う気持ちだった…
「…でも、諏訪野さんは、高見さんに、お詫びしたんじゃ…」
正造が、蚊のなくような小さな声で、抗議する…
が、
私は、正造の意見を受け入れなかった…
「…謝れば、いいって、もんじゃないんですよ!…」
と、怒鳴って言ってやった…
「…問題は、そんな真似をする、あのボンボンの性根です…」
「…性根?…」
「…どうせ、あのボンボンは、生まれて、このかた、なんの苦労もなく、これまで、生きてきたんでしょ?…ノホホンと生きてきたんでしょ? …だから、あんな真似ができるんです…」
「…」
「…きっと、だから、正造さんも、私を、あのボンボンに、紹介したんでしょ? …違いますか?…」
「…どういう意味ですか?…」
「…正造さんも、本音では、あのボンボンが、好きではない…だから、あのボンボンが、妹の好子さんと、週刊誌に撮られたのを、見て、慌てた…あのボンボンと、大切な妹の好子さんと、いい関係になって、もらいたくない…だからでしょ? 正造さんが、私をあのボンボンに紹介したのは?…」
「…どういう意味ですか?…」
「…妹の好子と、そっくりの女がいる…会ってみませんか、と、あのボンボンに、話を持ちかけた…そうすれば、あのボンボンも私に、興味を持つ…つまりは、私は、好子さんの身代わり…好子さんの代替品です…違いますか?…」
私が、勢い込んで言うと、正造は、
「…」
と、答えなかった…
いや、
答えられなかったのが、真相か?
私が、言ったのが、真実だから、答えられないのが、真相か?
私の言ったことが、真実であることは、今の正造の沈黙で、わかった…
ハッキリと、わかった…
が、
正造は、否定した…
「…そんなことは、ありません…」
と、否定した…
「…じゃ、正造さんの真意は、なに? どうして、私を、あのボンボンに、紹介したんですか?…」
「…それは、単純に、妹の好子と、よく似た女性を知っていると、諏訪野さんとの話の中で、出て、それなら、ぜひ一度、会ってみたいと、諏訪野さんが、言って…」
「…ウソですね…」
「…どうして、ウソなんですか?…」
「…正造さんは、あの諏訪野さんを…あのボンボンを、認めていないんですよ…だから、あのボンボンと、好子さんが、結婚するのは、嫌だった…それが、本音でしょ?…」
「…」
「…あの水野透は、認めた…あの透は、子供の頃から、知っている…どんな人間か、知っている…だから、認めた…違いますか?…」
「…」
「…そう言えば、あの水野さん、サウジアラビア政府と組んで、なにやら、壮大なプロジェクトをやるって、テレビでも、ネットでも、言ってましたね…案外、それを、透さんに、焚きつけたのは、正造さんだったりして…」
「…どうして、そう思うんですか?…」
「…正造さんが、水野にいい印象を持っていないからですよ…好子さんと、別れた水野にいい印象を持っていない…だから、身の丈を超えた投資をさせて、水野にダメージを与えたい…それが、正造さんの本音じゃないですか?…」
私が、言うと、正造が、黙った…
「…」
と、沈黙した…
だから、
「…でしょ?…」
と、念を押した…
追い打ちをかけた…
が、
敵もさるもの…
私の意見を認めなかった…
「…それは、想像ですよ…」
と、電話の向こう側から、正造が、あっさりと、言った…
「…高見さんの想像ですよ…」
「…だったら、米倉さんの本音は、なに? どうして、私をあのボンボンに紹介したの?…」
「…それは、今も言ったように、諏訪野さんと、酒を飲みながら、色々な話をしている最中に、偶然、好子の話が出て、その流れで、好子そっくりの女性がいると、言う話をボクがして、それで、高見さんを…」
「…ウソですね…」
「…どうして、ウソだと、わかるんですか?…」
「…正造さんの本音は、あのボンボンを認めていない…だから、妹の好子さんと、あのボンボンが、いい関係になるのは、嫌…結婚なんて、とんでもない…だから、好子さんの代わりに、私をあのボンボンに紹介した…私を好子さんの身代わりにした…でしょ?…」
「…それは、違います…」
「…ウソをおっしゃい…」
私は、怒鳴った…
大声で、怒鳴った…
途端に、
「…話になりませんね…」
と、いう声が聞こえてきた…
「…まったく、話にならない…」
「…どうして、話にならないんですか?…」
「…だって、全然、ボクの話を聞かないでしょ?…」
「…それを、言えば、正造さんこそ、私の話を聞いてないじゃないですか?…」
「…それは、当然です…」
「…なにが、当然なんですか?…」
「…だって、高見さん、ボクの話を全然、聞かないじゃないですか?…」
「…ウソを言うから、聞かないんですよ…」
「…ウソは、言っていませんよ…」
「…それが、ウソなんですよ…」
私が、言うと、さすがに、正造も、なにも、言わなくなった…
いつまで、話しても、話が、平行線…
全然、話が、交わらないからだ…
それゆえ、互いに、疲れた…
それは、私も、正造も同じだった…
だから、これ以上、話しても、仕方がない…
電話を切ろうと思った…
さすがに、これ以上、話すのは、無理…
体力的にも、精神的にも、無理だった…
だから、
「…正造さん、これ以上は…」
と、私が、言いかけると、電話の向こう側から、
「…米沢京子…」
と、いう名前が、聞こえてきた…




