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恋かもしれない 恋愛偏差値ゼロ 第3部  作者: トモサン


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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 61

それは、米倉平造だった…


 米倉正造の実父の平造だった…


 引退した、米倉家前当主の平造だった…


 私は、驚愕した…


 単に驚くという言葉では、言い表せない…


 それほど、驚いたということだ…


 同時に、


 「…なぜ?…」


 「…どうして、平造が、ここに?…」


 と、考えた…


 当たり前だ…


 平造は、米倉が、経営する大日産業をぼろぼろにした…


 一代で、弱小企業から、大企業とまでは、呼べないが、世間に知られるような知名度を誇る企業になった…


 急速に、大きくなった…


 が、


 その代償は、大きかった…


 いわゆる、図体は、デカいが、内実は、借金まみれだったのだ…


 わずか、三十年か、そこらで、大きな企業になった宿命だったとも、言える…


 どうしても、企業が、大きくなるには、設備投資等で、金がかかる…


 そして、自分の会社の金で、儲けて、それを、設備投資等に、回すのには、時間がかかる…


 それゆえ、手っ取り早く、金を得るには、誰かに金を、借りるに限る…


 金を借りて、設備投資に回し、さらに、儲けた金でも、設備投資優先で、金を回す…


 いわば、言葉は、悪いが、自転車操業になる…


 いつまでも、必死になって、自転車をこいでいなければ、ならなくなる…


 そして、やがて、必死になって、自転車をこいでも、借金が返せなくなる…


 借りた金で、設備投資をしても、金が回収できなくなる…


 思ったよりも、金を稼いでいないからだ…


 だから、追い詰められた平造は、盟友の水野良平を騙して、米倉と水野の合併を持ちかけた…


 大幅な赤字を抱えた大日産業の業績を隠して、水野との合併を持ち掛けた…


 要するに、大日産業は、もはや、自力では、立ち直れないほど、業績が悪化した…


 だが、倒産は、できない…


 大日産業は、歴史ある企業…


 そして、平造の役割は、次世代に、この大日産業を渡すこと…


 次世代=好子さんに、渡すことだからだ…


 だから、安易に倒産は、できない…


 安易に、破産は、できない…


 そして、その結果、平造が、考えたウルトラCともいえる、秘策が、水野との合併だった…


 合併すれば、大日産業の巨額の赤字は、いずれ発覚するのは、わかっているだろうに、それを隠して、合併を強行した…


 米倉を救うためだ…


 代々続く、米倉を救うためだ…


 平造は、米倉の分家出身…


 しかしながら、その能力を買われて、本家の跡取りのお嬢様と、結婚した…


 そして、平造と結婚したときに、お嬢様には、すでに、娘がいた…


 それが、好子さん…


 だから、好子さんこそ、米倉の後継者…


 米倉の正統な後継者だった…


 正造は、平造の息子…


 好子さんとは、血が繋がっていない…


 だから、正造は、幼い好子さんに、将来、結婚しようと、言い続けた…


 好子さんを、護るためだ…


 正造は、イケメン…


 その正造が、幼い好子さんに、結婚を、囁くのだから、好子さんは、正造に、夢中になった…


 が、


 正造の真意は、別にあった…


 好子さんは、美人…


 私同様、女優の常盤貴子さんの、若い頃に似た美人だった…


 だから、幼い好子さんが、将来、大きくなったら、男にモテまくると、思ったのだろう…


 そして、好子さんが、男にモテまくった結果、ろくでもない男と結婚して、米倉家を継いだら、大変なことに、なると、心配したのだろう…


 それゆえ、正造は、イケメンの自分のルックスを生かして、幼い好子さんに、将来、結婚しようと、囁いた…


 そうすれば、好子さんは、正造に、夢中になる…


 他の男には、目もくれなくなる…


 そう、考えたのだ…


 だが、正造の誤算は、好子さんが、正造に、夢中になり過ぎたこと…


 正造は、あくまで、好子さんが、大人になるまで、自分に夢中になれば、よいと、考えた…


 大人になると、いうのは、成人になると、いう意味ではない…


 しっかりとした自分の価値観を持てる年齢になるということだ…


 他人の意見に、簡単に左右されない、自分の意見を持てる年齢になるということだ…


 その年齢に達すれば、好子さんも、男を見る目が、できてきて、簡単に男を選ばないと考えたのだ…


 バカな男に騙されないと、考えたのだ…


 しかしながら、正造の目論見は外れた…


 好子さんが、正造を好きになり過ぎたのだ…


 正造は、あくまで、好子さんが、しっかりとした大人になるまで、好子さんが、自分を好きでいてくれれば、よいと、考えた…


 が、


 好子さんは、違った…


 三十歳を過ぎても、正造を好きなままだった…


 これが、誤算だった…


 大きな誤算だった…


 そして、正造が、見つけた解決策が、私だったのかも、しれない…


 今となっては、そうとも、考えられる…


 好子さんと、外見が、似た私を米倉家に、招くことで、好子さんの変化を期待したのかも、しれない…


 同じ顔を持つ二人が、知り合い、色々な話をする…


 その中には、当然、恋バナもあるだろう…


 互いに、好きな男の話をして、好子さんに、もっと、色々な男に目を向けて、もらいたかったのかも、しれない…


 今となっては、正造の、そんな狙いがわかる…


 いつまでも、自分を見ているのではなく、私から、恋バナの話を聞いて、好子さんも、刺激を受けて、正造以外の男に目を向けて、もらいたかったのかも、しれない…


 もはや、三十路を過ぎた好子さんが、バカな男に騙されることはないと、考えたのかも、しれない…


 そして、今、目の前の平造も、やはり、好子さんを、護ろうとした…


 好子さんに、米倉を、大日産業を大きくして、渡そうとした…


 結果は、失敗だったが、目的は、同じ…


 好子さんに、幸せになって、もらうことだったに違いない…


 つまりは、この平造と正造の父子は、誰よりも、好子さんを大事に思っていたということだ…


 私は、今、目の前の米倉平造を見て、考えた…


 これまでのいきさつを考えた…


 そして、そんなことを、考えていると、


 「…ご苦労だった…」


 と、正造が、告げた…


 その言葉は、まぎれもなく、この米沢京子に、向けられたものだった…


 私に向けられたものでは、なかった…


 彼女は、無言で、頭を下げた…


 「…ありがとう…」


 平造は、告げた…


 平造の言葉に、米沢京子は、黙って、頭を下げた…


 「…では、私は、これで…」


 と、言って、この部屋から、出ようとした…


 が、


 平造が、それを、止めた…


 「…いや、このままで、いい…」


 と、告げた…


 その言葉に、米沢京子は、動揺したようだ…


 「…ですが…」


 と、抗弁した…


 が、


 平造は、


 「…キミも、この部屋にいて欲しい…」


 と、言うと、米沢京子は、黙った…


 さすがに、それ以上、平造に、抗弁できなかった…


 「…まずは、座ってくれ…」


 平造が、言う…


 現に、平造は、すでに、座っていた…


 私と米沢京子が、部屋に入る前から、座っていた…


 まあ、それも、そうだろう…


 いつ、やって来るか、わからないものたちを、待っているのに、立って待っている人間は、いないからだ…


 当たり前のことだ…


 平造の一言で、私と米沢京子は、初めて、目を合わせた…


 互いに、座っていいか、わからなかったから、互いの反応を探ったのだ…


 そして、私が、先に、口火を切った…


 「…座りましょう…」


 と、口火を切った…


 私の声を聴いて、米沢京子も、頷いた…


 そして、ほぼ、同時に、椅子に座った…


 これで、テーブル越しに、平造と向かい合ったことになる…


 平造は、すでに、テーブルの向こう側に、最初から、座っていたからだ…


 そして、私と米沢京子が、椅子に座ると、


 「…驚かせたようだね…」


 と、平造が、口を開いた…


 そして、平造の視線は、私に向けられていた…


 明らかに、私、高見ちづるに向けられていた…


 米沢京子には、向けられていなかった…


 それから、平造が、


 「…M商会の研修に呼ばれて、なぜ、私が、いるのか、理解不能だと思う…」


 平造が、笑った…


 「…そうでしょ? 高見さん?…」


 私の名前を、読んだ…


 私は、その通りなので、


 「…ハイ…」


 と、頷いた…


 すると、平造が、


 「…答えは、簡単だ…」


 と、呟いた…


 「…答え?…」


 と、私。


 「…この手品の種明かしだよ…」


 平造が、穏やかに、笑う…


 「…忍者に、草という言葉があるのは、知っているかな?…」


 「…いえ…」


 「…徳川幕府時代の侍にも、いたらしい…」


 「…どういうことですか?…」


 「…例えば、徳川御三家と呼ばれる、紀伊、尾張、水戸と呼ばれる、親藩と呼ばれる徳川一族の中で、紀伊藩に、所属する藩士でも、内実は、徳川幕府と通じている…」


 「…どういうことですか?…」


 「…いわゆる、スパイだ…例えば、高見さんの家の家系が、代々スパイだとする…表面上は、紀伊藩の藩士だが、実際は、幕府のスパイ…定期的に紀伊藩の内情を幕府に報告している…」


 「…」


 「…それと、同じだよ…」


 「…同じ?…」


 「…私と良平は、仲が良く、互いに馬が合った…しかし、それと、ビジネスは、別だ…」


 「…なにが、おっしゃりたいんですか?…」


 「…互いに、すべてを信頼しあっているわけではないということだ…」


 「…」


 「…つまりは、良平の率いる水野にも、米倉と、通じているものが、いるということ…その証拠が、コレだ…」


 「…コレ?…」


 「…今、高見さんが、就職した会社にも、米倉のために、動くものがいる…その証拠に、人事から、研修の名目で、この熱海に、高見さんを呼び出すことができた…」


 平造が、言う…


 思いかけないことを、言う…


 つまりは、水野の中に、今も、米倉のために、動く人間がいるということ…


 しかも、水野の人事部の中にいるということ…


 いや、水野の人事部ではない…


 M商会の人事部にいる…


 いや、そうではない…


 おそらく、水野の上層部にいる…


 水野本体の上層部=取締役クラスにいるのではないか?


 その取締役クラスの人間が、系列のM商会の人事部の人間に命じたのではないか?


 熱海で、研修をする名目で、私を呼び出すことを、命じたのではないか?


 目の前の平造に頼まれて、命じたのではないか?


 私は、気付いた…


 つまりは、平造は、水野良平と盟友だと、信じていたが、内実は、そうでは、なかったということか?


 私は、思った…


 私は、考えた…


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