恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 57
が、
しかし、考えても、仕方がない…
いつまでも、考えても、仕方がない…
だから、仕事に集中することにした…
アレコレ、考えず、仕事に集中することにした…
そして、昼休みになり、会社のひとたちと、会社を出て、近くのコンビニで、昼食を買い、会社の一室で、食事をとった…
すると、そのときに、
「…しかし、高見さんも、大変ね…」
と、会社の同僚の女子社員が、言った…
「…大変? …なにが、大変なんですか?…」
「…だって、高見さん…あの米沢さんと、いっしょに、熱海に研修に行くんでしょ?…」
「…ええ…ご存じなんですか?…」
「…それは…だって、こんな小さな営業所で、所長の前沢さんが、なにを喋ったのか、なんて、筒抜けよ…」
女子社員が、一笑する…
私は、そう言われると、苦笑するしか、なかった…
このM商会は、以前、勤めていた、金崎実業と、同じ…
なにが、同じかと言えば、営業所の規模…
駅の近くの雑居ビルの一室に、間借りしている小規模の営業所だ…
営業所の人員、全員を含めても、30名程度…
決して、大きくはない…
だから、話が筒抜け…
誰が、どんな話をしたのか、全員に筒抜けだ…
だから、私が、来週、あの米沢さんと、熱海に研修に行くことは、ほぼ全営業所の人間が、すでに、知っているに違いない…
だから、それを、考えると苦笑するしか、なかった…
「…でも、会社の人事も、謎よね…」
と、今度は、違う女子社員が、言う…
「…謎? …なにが、謎なんですか?…」
と、私。
「…だって、そうでしょう…仲の悪い、高見さんと米沢さんをいっしょに、研修を受けさせるなんて…」
「…」
「…まるで、小学校か、なにかで、仲の悪い者同士をわざといっしょに、いさせて、仲良くさせるみたい…」
「…」
「…でも、これは、会社よ…そんな子供だましみたいなことは、ありえないし…」
「…それは…」
「…だから、謎なのよ…会社の意図が見えない…」
「…それは、所長の前沢さんが、おっしゃったように、単なる新人の研修なんじゃ、ないですか? 私も米沢さんも、歳はとっていますが、一応は、新人社員ですので…」
「…でも、それが、謎なのよ…」
「…どうして、謎なんですか?…」
「…私もだけれども、新人研修なんて、中途じゃなかった…」
「…えっ?…」
「…いえ、この営業所も、中途採用の人間が、多いのよ…今は、どこも、そうでしょ?
昔とは、違う…このM商会は、水野系列だから、それなりに、歴史ある企業系列だから、純粋主義というか…新卒で、入社して、ずっと、いる社員も、それなりに、いるけれども、そうでない社員も多い…もちろん、水野本社なら、純粋に、新卒で、水野に入社した人間が、大半かも、しれないけれども、ここは、水野系列といっても、末端といえば、言い過ぎだけれども、まあ、お世辞にも、大きくはないわよね…」
「…」
「…そう、それに、中途と言えば、前沢さんも、そう…」
「…えっ?…」
「…前沢さんの前職は、なんだったのか、誰も、知らない…前沢さんも、絶対、そのことを、口にしないし…」
…そう言えば、以前、たしか、前沢さんの口から、一度だけ、
「…自分も、高見さんと、同じ中途入社だから…」
と、言ったのを、聞いたことがあるような…
しかし、そんなことは、とっくに忘れてしまった…
なぜなら、私には、まったく関係のないことだから…
これが、私が、前沢さんと結婚したり、不倫したりするならば、また、違うだろう…
不倫といっても、遊びではなく、結婚を前提とする不倫…
言葉は悪いが、旦那さんを、奥さんから、盗ることを、前提とした不倫だ…
それならば、わかる…
前沢の経歴が、気になる…
どんな高校や大学を出て、前職は、なんだったのか?
気になる…
それは、なぜか?
それは、出世に直結するからだ…
会社での出世に直結するからだ…
やはり、有名大学を出なければ、普通の会社では、出世は、難しいからだ…
とりわけ、前沢とは、知り合って、まもない…
だから、前沢という人間を知るには、学歴や前職しか、知る手立てがない…
性格は、もう少し長く付き合ってみなければ、わからないし、出世も、周囲の評判から、探るが、それも、まだ転職して、早々では、知る由もないからだ…
だから、学歴や前職で、なにをしていたか、しかない…
が、
それにこだわらないのは、言葉は、悪いが、前沢に興味がないから…
前沢には、悪いが、これが、答えだった…
「…でも、とにかく、高見さんは、来週、あの米沢さんと、研修に行く…だから、頑張って…」
「…なにを頑張るんですか?…」
「…うまくいくように、頑張って…」
「…うまくいく?…」
「…そうよ…米沢さんは、あの通り、一匹狼だし、私たちとも、群れない…会社の誰とも、群れない…もっとも、だから、ここで、平然と、こんな話もできるんだけれども…」
言われてみれば、その通り…
その通りだった…
米沢さんは、言葉は悪いが、会社で、独りぼっち…
誰とも、群れない…
だから、会社で、昼休みとは、いえ、米沢さんのことを、語れる…
普通なら、できない…
なぜなら、この場所にいっしょにいるからだ…
私同様、普通に、女子社員たちとつるむからだ…
が、
彼女には、それがない…
なぜ、ないのか?
わからない…
それとも、それは、ただ彼女の性格…
ただ、単にひととつるむのが、嫌なのだろうか?
ひとりが、好きなのだろうか?
考える…
男と女の決定的な違い…
それは、なにかと、いえば、男より、女の方が、群れたがるということだ…
群れたがる=ひとりでいたがらないということだ…
これは、会社に就職せずとも、すでに、学生時代から、わかる…
小学生でも、中学生でも、高校生でも、男より、女の方が、群れたがるからだ…
群れたがる=ひとりで、行動しないということだ…
常に誰かといたがるということだ…
これは、なぜなのかは、わからない…
ひとりより、大勢でいれば、気が強くなる?
あるいは、気が大きくなる?…
それとも、女子の習性?
それは、わからない…
きっと心理学の先生か、誰かに、聞けば、答えがわかるかも、しれない…
そして、女に比べると、男の方が、群れたがらない…
もちろん、学校のクラスでも、会社でも、ひとりでいる男は、少ないが、女のように、べったりとは、つるまない…
つるまない=いっしょにいない…
男でも、皆、女のように、気があう者同士が集まって、いるが、女ほど、親密ではない…
親密=べったりしない…
男で、いつも、いっしょにいるのは、ヤンキーだけ…
ヤンキーだけだ(苦笑)…
ヤンキーだけが、いつも、つるんでいる…
ヤンキーだけが、いつも、いっしょにいる…
アレは、若いときは、わからなかったが、きっと、気が小さいのだろう…
だから、いつも仲間といっしょにいる…
ひとりでは、いない…
彼らが、ケンカをしているのを、見たことがあるが、決して、ひとりでは、ケンカをしない…
仮に、ひとりが、誰かと一対一で、ケンカをしていても、必ず、周囲に、自分たちの仲間がいる…
つまりは、集団で、敵対するひとりを囲んで、ケンカをしている…
仮に、手は出さすとも、集団で、相手を威圧しているわけだ…
それと、女が、いつも、集団で、行動しているのは、似ている…
つまりは、群れで行動する…
動物が、群れで、行動するのと、同じ…
ひとりではいない…
なぜなら、ひとりでは、危険だからだ…
だから、それを、思えば、防衛本能…
鹿などのように、群れで、行動しないと、危険だと、本能で、認識している…
それが、人間でも、ヤンキーでも、同じ…
同じかも、しれない(苦笑)…
そして、それを、思えば、群れになじまない人間や、動物は、なぜ、群れに、なじまないのか、考える…
すると、考えられる理由は、限られる…
ひとつは、群れから、拒絶される…
つまりは、群れに入れてもらえない…
だから、ひとりぼっちになる…
そして、もうひとつは、それとは、真逆…
自分から、群れになじまないという選択だ…
要するに、群れたくない…
だったら、なぜ、群れたくないのか?
これにも、いくつか、理由があるだろう…
群れている人間たちと、自分が、気が合わない…
だから、群れない…
だから、いっしょにいない…
あるいは、ひとりが好き…
他人といっしょに、いるのが、嫌いというやつだ…
が、
それには、気が強くなければ、できない…
集団が、拒絶するのではなく、自分から、集団に入らないのは、強い意志が、必要だからだ…
そして、それを思えば、あの米沢京子が、そう…
まさに、それだ…
集団に入れないのではなく、自分から、集団に入らない…
女子の集団に入らない…
だから、怖い…
気が強いのは、明白だからだ…
意志が、強いのが、明白だからだ…
とりわけ、この営業所のように、人数が、少ないのに、集団に入らないのは、余計に、意志の強さが、必要だからだ…
なぜなら、集団に入る方が、楽だからだ…
それをしない方が、難しいからだ…
それゆえ、それをしない米沢京子が、怖い…
米沢京子が、強いことが、わかるからだ…
私は、思った…
私は、考えた…
そして、そんな米沢京子と、来週、いっしょに、熱海で、研修を受ける…
それを、考えれば、緊張した…
まだ、今週が、始まったばかりなのに、緊張したのだ(苦笑)…




