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恋かもしれない 恋愛偏差値ゼロ 第3部  作者: トモサン


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54/128

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 54

が、


 たしかに、わかる…


 そう言われれば、わかる…


 借金まみれとはいえ、米倉を、大日産業をそれまでとは、打って変わって、飛躍的に大きくしたのは、平造の功績…


 分家出身の平造の功績だ…


 だから、好子さんを押しのけて、自分たち、平造の子供たちが、米倉本家を継いでも、おかしくないと、考えるのは、わかる…


 わかるのだ…


 「…でも、父にその気は、なかった…」


 好子さんが、続けた…


 「…私を押しのけて、自分の子供たちを、米倉本家の後継者にするつもりは、微塵もなかった…それが、わかったから、余計に、澄子は、逆上して…」


 好子さんが、説明する…


 澄子さんは、好子さんより、十歳以上、年上…


 きっと平造が、米倉本家に入ったときから、父の平造の立ち位置が、わかっていたに違いない…


 そして、それは、おそらく、弟の正造も同じ…


 正造は、澄子の一歳年下…


 それゆえ、二人とも、平造の立ち位置が、わかっていたに違いない…


 が、


 二人の違いは、そんな父の平造の立ち位置を受け入れるか、否か?


 澄子は、そんな平造の立ち位置に反発し、正造は、受け入れた…


 その違いだろう…


 「…でも、根本は、違う…」


 「…違う? …なにが、違うんですか?…」


 「…私が、米倉の正統後継者だから、澄子は、私が、気に入らないんじゃない…」


 「…どういうことですか?…」


 「…澄子の本音は、私が、嫌い…ただ、それだけ…それだから、自分が、嫌いな、私に米倉を継いでもらいたくない…それだけ…」


 好子さんが、吐露する…


 そして、それを、聞けば、たしかに、その通り…


 その通りだと、思った…


 好子さんが、嫌いだから、好子さんが、米倉を継ぐのが、許せない…


 理由は、ただ、それだけだ…


 好子さんを、好きならば、案外、好子さんが、正統後継者だから、米倉を継ぐことを、簡単に受け入れるかも、しれない…


 が、


 嫌いだから、受け入れない…


 嫌いだから、絶対、受け入れない…


 そういうことだ…


 「…澄子は、とにかく、私が、嫌いなの…私を認めたくないの…」


 好子さんが、吐露する…


 「…それは、自分で、言うのも、なんだけれども、私が、美人だからっていうだけじゃない…とにかく、私のやることなすこと、気に入らないの…」


 「…」


 「…だから、なにが、あっても、反対する…私に対抗する…」


 「…」


 「…つまり、澄子は、私に対抗するのが、生きがいなの!…あの女の存在意義なの!…」


 好子さんが、ぶちまけた…


 おそらくは、自分の思いのたけを、すべて、私にぶちまけた…


 私は、驚いたが、さも、ありなん…


 これこそが、好子さんの偽らざる気持ちであることが、明白だった…


 が、


 それを、考えれば、疑問がある…


 なぜ、これまで、二人は、いっしょに、暮らしていたか?


 それが、疑問だ…


 なぜなら、そんなに、嫌なら、どちらかが、家を出れば、いいことだからだ…


 どちらかが、家を出れば、互いに、顔を合わすことが、なくなる…


 だから、どっちかが、家を出れば、いいのではないか?


 そう、思った…


 そう、思ったのだ…


 だから、直球で、


 「…ひとつ、お聞きして、いいですか?…」


 と、好子さんに、言った…


 「…なに、高見さん?…」


 「…澄子さんも、好子さんも、そんなに、相手が、嫌いなら、どっちかが、家を出れば…」


 私が、言うと、私が、最後まで、言い終わらないうちに、


 「…そんなこと、できない!…できるわけない!…」


 と、好子さんが、大声で、怒鳴った…


 「…私は、米倉の正統後継者…その正統後継者の私が、どうして、家を出なければ、ならないの!…」


 好子さんが、怒鳴った…


 それから、すぐに、


 「…でも、それは、たぶん、澄子も同じ…」


 と、声のトーンを落として、続けた…


 「…エッ? 同じ?…」


 「…そうよ…同じ…」


 「…どうして、同じなんですか?…」


 「…澄子は、実の父の平造が、米倉を…大日産業を大きくしたのだから、自分たち、平造の子供たちが、米倉の家を出ていく必要は、ないと、思っている…むしろ、出ていくのは、私の方だと、思っている…」


 「…」


 「…でも、それも、わからないわけじゃない…話としては、わかる…澄子の言い分も、わかる…納得できる…」


 「…」


 「…でも、兄の正造も、弟の新造も、そんなことは、しない…私に対抗しない…私に対抗するのは、澄子だけ…」


 「…」


 「…どうして、澄子だけが、私に対抗しようとするのか、わからず、若い頃には、随分、悩んだ…」


 「…」


 「…そして、その答えが、今は、見つかった…」


 「…答えが、見つかった?…」


 「…そうよ…見つかった…」


 「…で、その答えって、なんですか?…」


 「…それは、私も、澄子も、同じ女だから…」


 「…エッ?…」


 「…同じ女だから、同性だから、余計に対抗心を燃やす…」


 「…」


 「…正造も、新造も、男だから、対抗心を燃やさない…それが、答え…私が、見つけた答え…」


 「…答え…」


 「…考えてみて、高見さん…」


 「…なにを、考えるんですか?…」


 「…同性で、同じ女なら、余計に相手のルックスから、なにから、気になる…これが、男なら、それほど、気にならない…でしょ?…」


 「…それは…」


 「…同じ女だから、余計に、相手のルックスは、身長は…胸の大きさは、となる…歳が、十歳以上離れていても、つい、自分と比べたくなる…」


 「…」


 「…その結果、澄子は、ルックスでは、なにひとつ、私に勝てない…頭は、澄子の方が、いいけれども…とりわけ、女は、ルックスにこだわる…そのルックスで、澄子は、私に勝てない…きっと、それが、澄子は、気に入らないんだと、思う…」


 それが、好子さんの、澄子さんが、自分を嫌う原因だと、語った…


 私は、それは、わかる…


 それは、理解できるが、本当に、それだけか?


 なにか、ほかに、理由が、あるのでは、ないか?


 そう、思った…


 そう、思ったが、さすがに、口に出せなかった…


 そして、私が、そう思っていると、好子さんが、


 「…とにかく、澄子は、私が、嫌いなのよ!…」


 と、電話の向こう側から、大声で、怒鳴った…


 「…だから、私も澄子が、嫌い…大嫌い!…」


 と、大声で、続けた…


 そして、それが、最後だった…


 後は、世間話というか…


 一転して、たわいもない話をして、電話を切った…


 そして、電話を切り際に、


 「…そうだ…高見さん…」


 と、好子さんが、言って、意外な提案をした…


 「…高見さん…そんなに、父のことが、気になるなら、熱海に行ってみればいい…」


 と、言った…


 仰天の提案をした…


 「…熱海へ?…」


 思わず、絶句した…


 「…そうよ…」


 好子さんが、短く、言う…


 「…高見さんが、そんなに父のことが、気になるなら、直接、熱海に足を運んで、父に会うべきよ…」


 「…平造さんに?…」


 「…父に、会って、直接、話を聞くべきよ…でしょ?…」


 そう、言われると、言葉もなかった…


 たしかに、その通り…


 その通りだが、それは、できないというか…


 私には、関係ないという気持ちが強かった…


 たしかに、興味は、ある…


 平造が、なにを考えていたか、興味は、ある…


 が、


 私は、部外者というか…


 米倉とは、なんの関係もない…


 そんな私が、平造に会って、これまで、平造が、どんな気持ちで、米倉を継ぎ、どうしたかったか?


 直接、問いただしても、話をしてくれるとは、思えなかった…


 なにしろ、私は、部外者なのだから、当たり前だった…


 部外者の私に、平造が、いくらなんでも、そんな話をするとは、思えなかったからだ…


 だから、


 「…そんな、私なんて…」


 と、言った…


 が、


 好子さんが、


 「…いえ、きっと、父は、高見さんに、会いたがっているわ…」


 と、意外なことを、言った…


 「…私に会いたがっている? どうして、ですか?…」


 「…それは…」


 「…それは?…」


 「…それは、父に会って、みれば、わかる…」


 と、実に、意味深なことを、言った…


 「…わかるって?…」


 言いながら、好子さんが、なぜ、そんなことを、言うのか、わからなかった…


 まさか、平造が、私を好きなわけでは、あるまい…


 平造は、女好きだと、聞いているが、私に対して、変な言動をしたことは、一度もないし、平造から、いわゆる、セクハラまがいの言動を受けたことは、一度もない…


 それどころか、いやらしい目で、見られたことも、一度もない…


 男が、女を好き…


 あるいは、


 女が、男を好き…


 そんなときは、大抵は、見ていれば、わかるものだ…


 そして、その好きが、ただ、好きか?


 あるいは、下心があるか、否か、わかるものだ…


 ハッキリ言えば、その男や女と寝たいと思う感情があるかないか、わかるものだ…


 そして、さらに言えば、それが、単なる遊びか?


 それとも、それが、結婚に結びつくような真剣なものか、どうか、わかるものだ…


 そして、私には、平造からは、そのどれもが、感じられなかった…


 まあ、親子ほど、歳が離れているから、結婚はないが、私に対して、変な下心を、感じたこともなかった…


 もっと言えば、平造が、そもそも、私に関心があるようには、見えなかった…


 しかしながら、それが、私に会いたいとは?


 意味不明…


 実に、意味不明な言葉だった…


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