恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 51
そして、そんなことを、浴槽で、湯船に浸かりながら、考えては、ダメ…
ダメだと、思った…
もう、何度目か、わからないが、思った…
長湯をして、気持ち悪くなっては、困るからだ(苦笑)…
だから、それに気付くと、慌てて、湯船から、出た…
それから、急いで、カラダを洗って、風呂から出た…
いつまでも、湯船に浸かっていると、この前の二の舞になる…
そう、思ったからだ…
すでに、カラダは、洗ったので、風呂場から、出ることにした…
そして、ひとりで、夕食を食べた…
すでに、家族は、食べ終えていた…
会社に勤めるようになって、家族と、夕食は、別々になることが、多かった…
父も私もサラリーマンだから、会社から帰る時間が、日によって、異なる…
それゆえ、夕食は、家族別々になる…
父や私の帰りを待っているわけには、いかないからだ…
だから、私は、ひとりで、夕食を食べ、自分の部屋に行った…
正直、自分の部屋に戻ると、落ち着く…
おおげさに言えば、自分の城に戻るというか…
自分だけの部屋だから、心が安らぐ…
私は、部屋に、戻ると、パソコンを立ち上げた…
ちょっとしたことなら、スマホを見れば、いいのだが、家にいるときは、パソコンの方が、便利だからだ…
パソコンの大きな画面が、好きだからだ…
家にいるときも、スマホをする同世代の人間が、多いが、私に言わせると、どうしてだか、わからない…
どうしても、画面が、大きい方が、便利だからだ…
画面が、大きな方が、見やすいからだ…
今は、誰もが、パソコンが、複数、家にあるだろう…
それが、家に戻っても、パソコンではなく、スマホを見る人間の気持ちがわからない…
外では、携帯が便利だから、スマホを使うが、家では、画面が、大きいから、パソコンの方が、使いやすいからだ…
私は、パソコンを立ち上げ、画面を見た…
別に、なにか、見たいものが、あるわけでは、ない…
ただ、単に時間潰しというか…
ハッキリ言えば、暇つぶし(苦笑)…
なにか、することがなければ、家にいるときは、ついパソコンを立ち上げて、複数のサイトを、見て、遊ぶことが多い…
ヤフーやその他のサイトを見て、遊ぶことが、多い…
だから、パソコンを立ち上げると、真っ先に、ヤフーのサイトを見た…
そして、なにか、気になる、ニュースがあるか、どうか、見る…
そうしたら、あった…
気になるニュースが、あった(笑)…
それは、好子さん…
透が、結婚して、別れた、米倉好子さんの話題だった…
好子さんが、またも、あの諏訪野伸明氏と、密会しているという記事だった…
私は、驚いた…
なぜなら、好子さんは、この前、会ったときに、諏訪野さんを諦めたようなことを、言っていたからだ…
それが、また、会うとは?
正直、驚いたが、好子さんの場合は、ただの恋愛感情だけでは、ない…
好子さんの肩には、米倉が、あるからだ…
米倉を背負っているからだ…
米倉=大日産業を背負っているからだ…
好子さんが、直接、米倉の経営に携わっているわけでは、ないに違いないが、好子さんは、米倉の正統後継者…
米倉本家の血を継ぐ、ただひとりの正統後継者だからだ…
だから、兄の正造も、好子さんを、補佐している…
これは、ちょうど、さっきまで、会っていた水野良平と、似ている…
水野良平の妻の春子は、水野本家のお嬢様…
水野の正統後継者だ…
その水野の正統後継者が、夫に選んだのが、同じ一族の分家出身の良平…
その方が、おそらく、周囲を納得させられると、思ったのかも、しれない…
ふと、思った…
いわゆる、お金持ちは、背負っているものが、多い…
それゆえ、簡単に好きだから、結婚すると、いうことが、できない…
これは、政界の有力者の子弟の婚姻関係を見れば、わかりやすい…
大抵の有力者の子弟が、やはり、同じように、有力者の子弟と、婚姻関係を、結んでいるからだ…
しかも、それが、二代、三代と、続くことが、多い…
それゆえ、従弟同士で、有力議員の例も多い…
それと、同じで、春子の結婚も、難しかったのかも、しれない…
基本は、やはり、自分と同じような金持ちの子弟と結婚しなければ、ならない…
だが、そう簡単に見つからない場合も多いに違いない…
同じレベルのお金持ちで、しかも、年齢がある…
例えば、自分が、二十歳で、四十歳のオジサンと、結婚は、無理…
できない…
自分が、二十歳ならば、せいぜい相手は、三十五歳くらいか?
これは、春子が、女だから…
だから、男が、年上で構わないからだ…
真逆に、春子が、二十歳ならば、年下は、無理…
結婚はできない…
春子が、二十歳で、十五歳の男のコと、結婚は、できないからだ…
春子が、三十歳になれば、相手も、二十五歳になるから、結婚はできるが、二十歳では、無理だからだ…
それゆえ、家柄、年齢等の条件を絞ると、なかなか、結婚が、難しかったに違いない…
だから、身内に目を向けた可能性が高い…
同じ一族の人間ならば、周囲の反対の声も少ないからだ…
私は、思った…
私は、考えた…
が、
おそらく、当時の春子と、今の好子さんとは、立場が、違う…
置かれた状況が、違う…
なぜなら、米倉は、人間でいえば、病み上がり…
病院を退院したばかりのような状態だからだ…
借金は、返し終わったが、再建が、軌道に乗ったわけでもない…
それゆえ、好子さんは、またも、諏訪野伸明氏に会ったのだろう…
五井に後押しを、してもらうべく、五井の当主、諏訪野伸明氏に会ったのだろう…
だから、これは、恋愛ではない…
いわば、米倉の生き残りをかけた生存戦略だ…
それゆえ、諏訪野伸明氏が、好子さんに、興味が、ないとしても、そう簡単には、引き下がれないのかも、しれない…
なにしろ、米倉の生き残りが、かかっているのだ…
好子さんとしても、そう簡単に引き下がるわけには、いかないのだろう…
なにより、好子さん自身が、先日、会ったとき、
「…諏訪野さんには、寿さんっていう、物凄い美人がいて、諏訪野さんは、寿さんに、べた惚れしている…」
と、言っていた…
そんな状況で、諏訪野さんの心を掴めるとは、思えない…
それが、わかっているにも、かかわらず、好子さんは、そう簡単に引き下がるわけには、いかないのだろう…
なにしろ、米倉の再建が、かかっているのだ…
私は、思った…
私は、考えた…
そして、そんなことを、考えていると、パソコンの画面を見るのを、いつのまにか、やめていた…
目には、パソコンの画面が、映っていたが、頭の中には、入ってこなかった…
考え事に夢中になっていたからだ…
それゆえ、我ながら、これでは、いけないと、思った…
これでは、パソコンを開いた意味がない…
いかに、時間潰しとは、いえ、パソコンを開いた意味がない…
だから、あらためて、パソコンの画面に集中することにした…
そうしたら、好子さん以外に、気になる情報が、あった…
やはり、米倉のことだった…
米倉=大日産業のことだった…
要するに、内紛だった…
米倉の主導争い…
米倉=大日産業は、経営危機に陥り、それを、隠して、水野と合併しようとした…
しかし、合併直前にそれが、バレ、経営が、破談になりかけたが、当初、思ったよりも、負債が、少なかったことから、合併は、強行した…
しかしながら、いざ、合併してみると、社風が、水と油で合わなかった…
米倉は、イケイケの社風…
前当主の平造が、米倉=大日産業を、飛躍的に、大きくした…
それまでとは、比較にならないほど、大きくした…
それゆえ、どうしても、経営が、イケイケになる…
慎重居士では、物事が、進まないからだ…
真逆に、水野は、慎重な社風…
戦前に、日本で、二十大財閥に入っていた歴史ある企業だから、悪くいえば、古臭い…
そんな米倉と水野が、合併して、いっしょになったのだから、うまくいくはずがなかった…
そして、合併の軋轢が、あちこちで、生じて、問題になったとき、偶然、大日産業の子会社が、以前、先物取引で、取得した資源の価値が、今回のロシア・ウクライナ戦争を契機に、価格が上昇…
それで、大日産業の持つ、負債が帳消しになった…
それゆえ、水野に援助を受ける必要がなくなったので、あっけなく、米倉は、水野との合併を解消した…
そして、米倉と水野の合併の象徴であった好子さんと、透の結婚の解消…
二人は、離婚した…
しかしながら。米倉は、人間でいえば、病み上がりの状態…
負債は、解消したが、とてもではないが、どこかの援助が、必要だった…
それゆえ、好子さんは、五井に近付いた…
五井の若き当主、諏訪野伸明氏に近付き、五井から、資金援助を得ようとしたのだろう…
五井ならば、容易に、米倉を助けることが、できるからだ…
そして、好子さんが、私に、
「…諏訪野さんには、寿さんっていう、物凄い美人の恋人がいて、寿さんに、諏訪野さんは、べた惚れなんだって…」
と、言っていたにも、かかわらず、再度、諏訪野氏に、接触したのだろう…
米倉を五井に援助してもらうためだ…
五井に援助してもらうためには、一度、接触して、良い反応を得られなくても、そう簡単に引き下がるわけには、いかなかったのだろう…
米倉を救うためには、そうするしか、なかったのだろう…
私は、思った…
私は、考えた…
そして、そんなことを、アレコレ、考えながら、ネットに載った、米倉の内紛の記事を読んだ…
当たり前だが、弱り目に祟り目というか…
何事も、ダメになったときには、どこの会社でも、内紛が、伴うものだ…
いわゆる、再建方法の違い…
どうやったら、会社を再建できるか?
以前、米倉がやったように、他社と合併するか、あるいは、提携するか?
それとも、他社に頼ることなく、自主再建にこだわるか?
さらには、子会社として、他社の下に入るか?
ふと、思いついただけでも、さまざまな再建の方法がある…
当然、社内でも、さまざまな意見が、出ているに違いない…
そして、今、それが、表面化したに違いない…
私は、その記事を読みながら、考えた…
そして、その記事を読みながら、気付いたことは、米倉の再建が、中途半端なこと…
とりわけ、負債を完済したことが、マズかったと、書いてあった…
なぜ、負債を完済したのが、マズかったのか?
それは、マイナスが、なくなるから…
負債という負い目が、あるから、仕方なく、他社と合併や提携をする…
しかしながら、その負債を完済すれば、ある程度、自分の意見が通るようになる…
それゆえ、言葉は、悪いが、我がままになるからだ…
だから、再建の仕方で、揉める…
負債がなくなったことで、選択肢が、増えるからだ…
そして、その記事に書いてあったのは、米倉の内紛の当事者の名前…
澄子の名前だった…




