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恋かもしれない 恋愛偏差値ゼロ 第3部  作者: トモサン


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43/128

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 43

…エッ?…


 …正造さん?…


 内心、ビックリした…


 なにより、たった今、その正造のことを、考えていたところだ…


 まさか、その正造本人から、電話があるとは、思わなかった…


 なにより、このタイミングで、あるとは、思わなかった…


 まさに、グッドタイミング…


 これ以上ないほどのグッドタイミングだった(苦笑)…


 が、


 なにか、違う…


 なにが、違うんだ?


 声だ…


 声が違う!…


 そう、気付いた…


 だから、とっさに、


 「…アナタ、どなたですか?…」


 と、聞いた…


 声の主が、明らかに、米倉正造では、ないからだ…


 すると、沈黙した…


 「…」


 と、黙った…


 「…一体、アナタは…」


 私が、言うと、


 「…忘れちゃったの? …悲しいな…」


 と、電話の向こう側から、軽い口調で、返ってきた…


 私は、その声で、考え込んだ…


 たしかに、この声は、聞いたことがある…


 以前、聞いたことがある…


 「…誰ですか? …アナタ?…」


 私が、きつめに言うと、今度は、


 「…忘れちゃったの?…寂しいな…」


 と、またも、軽い口調で、返ってきた…


 それから、間髪入れずに、


 「…しかし、相変わらず、気が強そうだね…高見ちづるさん…」


 と、フルネームで、私の名前を呼んだ…


 そして、その軽い口調で、相手が誰だか、わかった…


 見当がついた…


 「…アナタ…透(とおる)さん…水野透(とおる)さん…」


 私が、問い詰めると、


 「…ピンポン!…」


 と、調子のいい声が、間髪入れずに返って来た…


 私は、その言葉で、さっき、好子さんが、私の回答に、同じく、


 「…ピンポン!…」


 と、答えたことを、思い出した…


 調子良く答えたことを、思い出した…


 まさに、似たもの夫婦…


 いや、


 今は、もう夫婦ではないか…

 

 が、あまりにも、同じだから、吹き出す寸前だった…


 しかしながら、


 「…でも、すぐに、電話に出たね…」


 と、いう言葉で、我に返った…


 たしかに、その通り…


 その通りだった…


 それは、お風呂場の外に、着替えといっしょに、スマホを置いていたから…


 そんなことはないと、思うが、もし会社から、電話が、あったら、いつでも、出られるようにしていた…


 私は、今の会社は、転職したばかり…


 少しでも、いい印象を持ってもらうためだ(苦笑)…


 女子中学生や、女子高校生でもないのだから、いまどき、肌身離さず、スマホを身近に置いているひとはいない…


 まして、私は、33歳…


 立派な大人だ(笑)…


 しかしながら、転職したばかりの今は、身近に、スマホを持ち歩くことにした…


 どこから、連絡があっても、すぐに出られるようにするためだ…


 我ながら、用心深いと、言いたいところだが、ホントは、ただ、気が小さいだけかも、しれない…


 幼いときから、用意周到といえば、おおげさだが、身の回りのものは、いつも、すぐに、使えるように、きちんと揃えていた…


 なにかあったときの用心のためだ…


 それを、私の周囲の大人たちが、


 「…ちづるちゃんは、いつもきちんとして、しっかり者ね…」


 と、褒めてくれたが、今、考えると、ただ、気が小さいだけ…


 なにかあったらと、思うと不安だから、そうしておいただけだ…


 そして、その性格は、同じ…


 今も同じだ…


 33歳になった今も同じで、変わっていない…


 それゆえ、お風呂場の外に、着替えといっしょに、スマホを置いていた…


 誰から、連絡があっても、すぐに、電話に出られるように、するためだ…


 私は、透(とおる)の質問から、そんなことを、考えた…


 そんなことを、思い出した…


 そして、そんなことを、思い出しながら、


 「…偶然です…」


 と、答えた…


 「…偶然?…」


 と、透(とおる)…


 「…そうです…偶然、近くに、ケータイがあって…」


 と、答えた…


 そして、答えながら、


 …ウソは言っていない…


 …私は、決して、ウソは言っていない…


 と、考えた…


 たしかに、ウソではないからだ(爆笑)…


 だから、強気に出られた…


 すると、透(とおる)が、


 「…それは、まあ、トイレや風呂に入ってなかっただけだろ? …トイレや風呂に入っていれば、すぐに出られないから…」


 と、言った…


 私は、


 「…そうですね…」


 と、答えた…


 わざと、ツンとすました感じで、答えた…


 今の私を透(とおる)が、見れば、吹き出すところだ…


 あるいは、大声で、


 「…ウソつき!…」


 と、罵倒するところだ…


 が、


 透(とおる)は、見ていない…


 見ていないと、わかっているから、強気に出られた(笑)…


 「…なんの御用ですか?…」


 私は、強気に言った…


 急に、一時も、早く、この電話を終わらせたくなったからだ…


 今は、夏ではない…


 秋だ…


 すでに、肌寒くなってきている…


 いつまでも、こんな裸同然の格好で、いては、たまったものではない…


 だから、そう言った…


 なにより、私は、この透(とおる)とは、関係ない…


 正直、結婚もなにもないだろう…


 また、友人としての付き合いもないだろう…


 だから、強気…


 強気になれる…


 今後、付き合うこともないから、強気になれるのだ…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、


 「…冷たいな…」


 と、透(とおる)が、電話の向こう側から、言ってきた…


 「…まんざら、知らない仲でもないのに…」


 …アナタが、そう思っているだけです…


 と、言いたいところだったが、言えなかった…


 いや、


 言えなかったというだけではない…


 危うく、言うところだった…


 危うく、口に出すところだった…


 透(とおる)は、大金持ちの御曹司…


 水野財閥の御曹司だ…


 なにより、私は、今、勤めている会社を、透(とおる)の父親の良平に紹介してもらった…


 だから、ホントは、透(とおる)に頭が上がらない…


 にもかかわらず、私が、透(とおる)に対して、つい強気になってしまうのは、透(とおる)のキャラクター…


 威厳もなにもない(笑)…


 だから、つい、こちらも、強気に出られる…


 つい、相手の立場を忘れて、強気に出られる…


 が、


 もしかしたら、それこそ、透(とおる)の才能かも、しれないと、気付いた…


 なぜ、威厳がないのが、才能なのか?


 その方が、簡単に、相手が、素(す)の姿を見せるからだ…


 なまじ、相手が偉かったり、威厳が、あったりすれば、こちらも低姿勢になる…


 へりくだった態度に出る…


 が、


 威厳もなにもなければ、つい相手を軽く、見て、軽く扱ってしまう…


 それゆえ、相手に、簡単に、その人間の本性を見られる…


 だから、透(とおる)のような、ひとの上に立つ人間は、その方が、都合がいいのかも、しれない…


 容易に、他人の本性を見抜くことがでるからだ…


 そして、そんなことを、考えると、透(とおる)への態度を変えざるを得なかった…


 ホントは、嫌だが、態度を変えざるを得なかった…


 透(とおる)を尊重せざるを得なくなった(苦笑)…


 私が、そう思っていると、


 「…今日、好子とあっただろ?…」


 と、いきなり、言った…


 「…エッ?…」


 と、思わず、声が出た…


 …どうして、アンタが、知っているんだ?…


 と、思わず、問い詰めたくなったが、さすがに、こらえた…


 相手の立場が、わかっているからだ…


 いくら、言いやすい相手でも、さすがに、口に出すわけには、いかなかった…


 すると、


 「…驚いた?…」


 と、私をからかうように、聞いてきた…


 だから、


 「…ええ…」


 と、素直に、答えた…


 「…探偵さんでも、雇っているんですか?…」


 「…探偵? …どうして?…」


 「…別れた奥様だから…」


 私が、言うと、


 「…」


 と、絶句した…


 あまりにも、ストレートに私が、言ったから、言葉が、出てこなかったのかも、しれない…


 すると、


 「…面白い意見だ…」


 と、言って、電話の向こう側から、透(とおる)の笑い声が、届いた…


 「…貴重な意見だ…」


 とも、言った…


 それから、


 「…さすがに、探偵は、雇っていないよ…」


 と、告げた…


 「…雇ってない? 本当ですか?…」


 「…本当さ…」


 「…だったら、どうして?…」


 「…どうして、わかったか?…」


 「…ハイ…」


 「…簡単さ…」


 「…簡単?…」


 「…オレが、今度、水野グループで、ビッグプロジェクトをすると、発表しただろ?…知っている?…」


 「…ハイ…知ってます…」


 「…なら、話が早い…きっと、それを、聞いて、好子は、焦ったんだと、思う…」


 「…焦った? どうしてですか?…」


 「…米倉さ…」


 「…米倉?…」


 「…大日産業の経営さ…」


 「…それが、どうかしたんですか?…」


 「…うまく、いってないのさ…」


 「…エッ?…」


 「…いや、うまくいってないとは、言い過ぎかも、しれないが、独り立ちするほどの力は、ない…人間でいえば、病み上がり…病院を退院したばかりの状態だ…ふらふらの状態だ…」


 「…」


 「…だから、好子は、今、パトロンを探しているのさ…」


 「…パトロン?…」


 「…若い女のパパ活じゃないが、要するに、スポンサーだ…米倉…大日産業に金を貸してくれるスポンサーを探しているんだ…」


 「…」


 「…五井の御曹司に会ったのも、それが、目的だ…」


 「…それは、好子さんに、聞きました…」


 と、言いたかったが、言えなかった…


 さすがに、口に出せなかった…


 私の立場では、口に出せなかった…


 でも、それが、どうしたと言うのか?


 この透(とおる)と、好子さんとは、すでに、離婚した…


 だから、透(とおる)は、今、好子さんと、なんの関係もない…


 それが、今、どうして、好子さんの話をするのか?


 いや、


 わからないのは、そこではない…


 そもそも、どうして、この透(とおる)は、私に話をするのか?


 私、高見ちづるに電話をするのか?


 わからない…


 私に電話をする必要は、なにもないからだ…


 謎が深まった…


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