恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 39
「…それは…」
言葉に詰まった…
どう答えていいか、わからなかった…
どう返答していいか、わからなかった…
そんな私が、当惑しているのを、好子さんは、面白そうに、見ていた…
「…それは…どうなの?…」
「…それは…」
言葉に詰まった…
「…それは…」
と、なおも、好子さんは、私に、詰め寄る…
私は、覚悟を決めて、
「…それは、驚きますよ…」
と、言った…
それから、一気呵成に、
「…だって、好子さんも、ご存じか、どうか、知りませんが、私の勤める、今の会社を、紹介してくれたのは、水野さんです…透さんの父親です…それが、こともあろうに、透さんの愛人だったひとと、同じ会社に私を入れるなんて…」
と、言った…
偽らざる感情をぶちまけた…
すると、好子さんが、すかさず、
「…透は、高見さんを、好きだったものね…」
と、言って、笑った…
「…透の愛人と、透が、好きだった高見さんが、いっしょの会社で、働く…しかも、同じ営業所…仮に、透の愛人だった女が、高見さんを、透が好きだったことを、知れば、どんな反応を示すか? けだし見ものね…」
「…見もの?…」
思わず、絶句した…
たしかに、言われてみれば、その通り…
その通り…
見ものに、違いない…
透が、好きだった女が、二人、同じ営業所にいる…
しかも、しかも、だ…
おそらく、あの米沢京子は、私が、透が、好きだった女だったということを、知っている…
そして、おそらく、私と透が、なんの関係もなかったことも、知っている…
いわば、透の片思い…
透が、一方的に、私を好きだったことを、知っているに、違いない…
そして、それを、知っているからこそ、私を目の敵にした?
おそらく、そういうことだろう…
自分は、透と、関係して、捨てられた?
にもかかわらず、透と、一度も、男女の関係にも、なっていない、私を、おそらく、透は、まだ、好きに違いない…
うぬぼれではなく、そう、思う…
そう、思うのだ…
そして、それを、知れば、あの米沢京子は、激怒するに違いない…
いや、
激怒して、当たり前だ…
おそらく、自分は、透に捨てられた…
透と、関係して、捨てられた…
それが、同じ営業所に、男女の仲にも、なにもなっていないにも、関わらず、透が、好きだった女がいる…
しかも、まだ、好き…
それが、わかれば、面白くない…
だから、当然、その女と、敵対する…
その女=私、高見ちづると、敵対する…
そういうことだ…
やっと、わかった!…
なぜ、米沢京子が、私を目の敵にするのか、やっと、わかった…
そして、それが、わかると、ホッとした…
おおげさに、言えば、目の前の霧が晴れたというか…
なぜ、米沢京子が、私を目の敵にしているのか?
これまで、わからなかったことが、わかって、ホッとした…
いわば、謎が解けたというか…
ずっと、わからなかったことが、わかって、一気に、気分が、よくなった…
だからか…
だから、私を憎んでいたのか?
だから、私を目の敵にしていたのか?
それが、わかったからだ…
そして、それが、表情に出たのだろう…
「…あら、高見さん…表情が、すっきりしたというか…なにか、納得した顔ね…」
と、好子さんが、言う…
ずばり、私の内面を突いた…
私は、隠すこともなく、
「…ええ…」
と、呟いた…
今さら、隠すことなどない…
なにも、隠すことなどないからだ…
すると、すかさず、好子さんが、
「…だったら、よかったわね…」
と、続けた…
「…よかった? …なにが、よかったんですか?…」
「…高見さんに、米沢京子さんの正体を告げたこと…」
好子さんが、笑った…
屈託なく、笑った…
私は、そんな好子さんの顔を、見て、なんて言っていいか、わからなかった…
たしかに、あの米沢京子の素性がわかったのは、いい…
が、
敵対は、困る…
目の敵にされるのは、困る…
そういうことだ…
私が、米沢京子に、なにひとつ、悪いことをしていないにも、かかわらず、一方的に、目の敵にされるのは、困る…
しかしながら、以前にも、そんなことが、あったことを、思い出した…
ずっと、以前にも、そんなことが、あったことを、思い出した…
学生時代、一部の女子に目の敵にされたことを、思い出した…
私は、自分で言うのも、なんだが、美人…
女優の常盤貴子さんの、若い頃に似た美人だ…
女優の常盤貴子さんを、一回り小柄にした感じの美人だ…
そして、世の中には、私が、美人だということだけで、良く思わないものがいる…
憎むものがいる…
それは、女…
同性の女だ…
要するに、憎らしいのだ…
自分が、美人に生まれなかったから、美人の私が、羨ましいのだ…
ずばり、妬ましいのだ…
だから、それを、ぶつける…
素直に、嫉妬の感情をぶつける…
そういうことだ…
私自身、彼女たちの感情は、わからないものではないが、率直にいって、私が、なにも、彼女たちに、していないにも、かかわらず、目の敵にされては、たまったものではない…
が、
私を、目の敵にする女の数は、少なかった…
それは、私の性格…
おそらく、性格による…
私は、敵を作るタイプでは、ないからだ…
だから、敵がいても、少なかった…
少なかったのだ…
敵を作るものは、どこにいても、誰を相手にしても、敵を作るものだ…
僭越ながら、私を例にとれば、他人様よりも、美人に生まれたりしても、敵を作らないものは、作らない…
要するに、自分が、美人だったりするのは、それほど、問題ではなく、問題なのは、その美人が、他人を見下したりする姿に、反感を買う場合が、多いということだ…
もちろん、その女が、美人だから、妬ましいというだけで、その美人をいじめたり、いやがらせをするものも、いる…
が、
それは、少数派…
大抵が、美人の女が、自分は、いかにも、美人だといったような態度で、相手を見下しているから、相手も、それに、敏感に反応する場合が、多い…
そして、その相手とは、自分のルックスにコンプレックスを抱いているもの…
いや、普段、コンプレックスを抱いていないものでも、目の前に、美人を見て、コンプレックスを抱くものが多い…
だから、反応する…
自分が、意識しようと、意識しなかろうと、目の前に美人を見て、瞬間的に、
…自分では、勝てない!…
と、判断する…
つまりは、彼女たちに、コンプレックス=劣等感を呼びおこすのだ…
これは、男も同じ…
女にモテモテのイケメンが、同性の男たちに、嫉妬されるケースも、多い…
要するに、
…自分では、勝てない!…
と、瞬時に判断される…
その結果、悔しくて、仕方がないのだ…
そして、それは、学歴、家柄、資産、会社での出世等、あらゆるものに、及ぶ…
要するに、自分より、上の人間が、存在するのが、悔しいのだ…
そして、もし、これを、読んで、
「…そんなことない!…」
と、本気で、言うものが、いたら、よほど、これまで、そんな経験がなかったほど、運がいいか、頭が、おかしいか、あるいは、ウソつきかの、どれかだろう…
普通は、そのどれにも、当てはまらないものだ…
つまりは、自分より、なにかで、優れたものを持つ人間を、他人が妬む姿を見たことがあるものだからだ…
そして、話が、遠回りになったが、私は、それほど、他人を差別しないから、私に対する嫉妬が、少なかったとも、いえる…
差別=嫉妬だからだ…
差別が、嫉妬に跳ね返るからだ…
僭越ながら、美人の私が、普通のルックスを持つ、同性の女性たちを見下さなかったから、それほど、敵を作らなかったともいえる…
そして、そんなことを、考えていると、
…ならば、目の前の、好子さんは、どうなんだ?…
と、気付いた…
この好子さんは、私と姉妹のように似たルックスを持つ、美人…
おまけに、大金持ち…
他人が、羨望するものを、生まれつき、持って生まれたからだ…
他人様が、妬むものを、持って生まれたからだ…
そして、そんなことを、考えると、たしか、以前、この好子さんが、今、私が考えたこと…
美人に生まれたゆえに、他人に嫉妬され、困ったことを、私に打ち明けたことがあることを、思い出した…
同じようなルックスを持つ私だから、好子さんも、安心して、私に打ち明けたことを、思い出した…
美人に生まれたゆえの悩みを打ち明けたことを、思い出した…
そして、そのときに、考えた…
この好子さんは、私が、好子さんと、似ているから、私を好き…
それゆえ、私に好感を持っていることに、気付いた…
だから、今も、私に米沢京子のことを、教えてくれた?
私を一方的に憎む、米沢京子の正体を押してくれた?
そう、考えた…
そう、考えたのだ…
そして、私が、今、そんなことを、考えている最中にも、目の前で、好子さんは、ニコニコと私を見ている…
実に、楽しそうに、私を見ている…
だから、私は、思い切って、
「…好子さんが、今日、私に会いに来たのは、やはり、米沢さんのことを、私に教えたくて…」
と、聞いた…
直球で、聞いた…
すると、好子さんは、笑いながら、
「…それもある…」
と、答えた…
「…それもある?…」
私は、オウム返しに、好子さんの言葉を繰り返した…
「…では、他にも、なにか、あると、言うことですか?…」
「…ピンポン!…正解!…」
好子さんが、おどけて、答える…
が、
私は、好子さんが、おどける姿を、することも、驚いたが、それ以上に、なぜ、おどける姿をしたのか?
その心理状態といっては、おおげさだが、好子さんの内面に興味を持った…
そして、その結果、
もしかしたら?
もしかしたら、好子さんに、関係ある?
もしかしたら、好子さんが、もっとも、触れられたくないことかも、しれないと、気付いた…
なぜなら、触れられたくないから、おちゃらける…
おちゃらける=ピエロに徹するということだ…
ピエロ=道化師に徹するということだ…
そして、そこまで、考えたとき、ふと、透のことを、思い出した…
透=ピエロだからだ…
ピエロ=道化師だからだ…
だから、もしかしたら、
…透のこと?…
…好子さんが、これから、話すのは、透のこと?…
と、思った…
と、気付いた…




