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恋かもしれない 恋愛偏差値ゼロ 第3部  作者: トモサン


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36/128

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 36

そして、そんな私の落ち込んだ姿に気付いた好子さんが、


 「…どうしたの? 高見さん?…」


 と、声をかけた…


 「…どうしたと、言われても…」


 正直、今、思ったことを、口にして、いいものか、どうか、悩んだ…

 

 一般人の私が、世間知らずと思われた好子さんに、劣っていると、思って、落ち込んでいることを、話していいものか、どうか、悩んだ…


 「…どうした? 話せ、高見ちづる…話して、楽になれ!…」


 好子さんが、冗談めかして、言う…


 私は、一瞬悩んだが、おそるおそる、


 「…今の話です…」


 と、切り出した…


 「…今の話のどこで、高見さんが、落ち込んだの?…」


 好子さんが、きょとんとする…


 「…今の話で、男便所に、落書きする話…」


 「…それが、どうしたの?…」


 「…女の場合は、どうするのか、考えました…女なら、男便所に入れない…でも、それは、男友達にでも頼んで、書いてもらう…それが、答えでした…でも、そんな簡単な答えが、すぐに出せなかった…」


 私は、正直に答えた…


 たぶん、落ち込んだ表情で、答えた…


 すると、当然のことながら、好子さんが、あっけに取られた表情になった…


 こんな簡単なことも、わからないのとも、思ったのだろう…


 が、


 好子さんの口から出た言葉は、意外なものだった…


 「…これって、たぶん、運動神経とか、なにかと、同じだと思う…」


 「…運動神経?…」


 「…お金持ちなら、運動神経が、悪くて、一般人なら、運動神経が、いい…そんなことは、ないでしょ?…」


 「…」


 「…要するに、勘というか…すぐに、わかるひとと、わからないひとが、いるってこと…それに、お金のあるなしは、別…関係ない…」


 「…」


 「…どうしても、お金持ちだと、誰もが、世間知らずとか、トロいとか、思っちゃうのよね…でも、違う…」


 「…違う…」


 「…当てはまるものもあるし、当てはまらないものもある…」


 「…」


 「…とりわけ、今の話なんか、そう…単に、想像力というか…それが、簡単にわかるひとと、わからないひとが、いる…」


 「…」


 「…そして、面白いことに、そこに学歴は、関係ない…頭のいい、悪いは、関係ない…勉強のできる、できないは、関係ない…」


 好子さんが、笑う…


 「…要は、わかるひとは、わかり、わからないひとは、わからないだけ…でしょ?…」


 好子さんが、まとめた…


 それを、聞いて、その通りだと、思った…


 たしかに、その通りだと、思った…


 運動神経が、いいか、悪いかに、お金持ちか、どうかは、関係ない…


 だが、どうしても、お金持ちならば、トロいと、思ってしまう…


 トロい=運動神経が、悪いと、思ってしまう…


 それと、同じだ…

 

 私が、トロいのも、それと、同じだ…


 そう、思って、自分自身を慰めた(苦笑)…


 そして、そう考えていると、


 「…でも、高見さん…」


 と、好子さんが、急に、表情を変えて、切り出した…


 「…なんですか?…急に…」


 「…アナタの会社に米沢京子さんっているでしょ?…」


 いきなり、言った…


 たぶん、本題に入った(笑)…


 「…どういうひと?…」


 「…どういうひとと言われても…」


 いきなり、そんなことを、聞かれても、どう、答えていいか、わからなかった…


 「…高見さんと、仲がいい?…」


 …私と、仲がいい?…


 これには、仰天した…


 思わず、吹き出しそうになった…


 仲がいいどころか、敵対している…


 私を一方的に、目の敵にしている…


 だから、どう答えていいか、わからなかった…


 本当のことを、ありのままに、答えていいか、わからなかった…


 それよりも、一体、なぜ、好子さんが、米沢さんのことを、知っているのか、謎だった…


 むしろ、その方が、気になった…


 それゆえ、


 「…たしかに、米沢さんというひとは、私の会社にいます…でも、それを、どうして、好子さんが…」


 と、聞いた…


 すると、好子さんが、笑いながら、


 「…それは、どうして、いきなり、そんな名前が出たのか? 高見さんから、すれば、不思議よね…」


 と、答えた…


 「…ハイ…その通りです…」


 「…耳に入ったのよ…」


 「…耳に入った? …なにが、ですか?…」


 「…透(とおる)の愛人が、高見さんと、同じ職場で、働いているって…」


 「…エッ? …愛人?…」


 思わず、吹き出しそうになった…


 愛人という言葉が、まずは、おかしかったからだ…


 愛人というのは、普通、歳をとった男が、若い女を指して、言う言葉…


 歳をとった男が、お金の力で、自分より、はるかに、若い女を囲うことだからだ…


 が、


 透(とおる)は、まだ、30歳ぐらい…


 とても、歳を取っているとは、いえない…


 歳をとっているどころか、若い(笑)…


 なにより、あの米沢京子は、三十代前半…


 私と同じくらいの年齢…


 だから、そんな年齢の女を指して、愛人と、呼ぶなんて、おかしい…


 それゆえ、


 「…プッ!…」


 と、吹き出しそうになった…


 そして、そんな私の態度を見て、


 「…なにが、おかしいの?…」


 と、好子さんが、聞いた…


 私は、迷わず、


 「…だって、透(とおる)さんは、まだ30ぐらいでしょ? それが、愛人なんて…愛人を囲うなんて、五十代、六十代のオジサンの発想ですよ…」


 私が、笑いながら、言うと、好子さんが、唖然とした…


 唖然とした表情で、私を見た…


 が、


 それは、一瞬…


 すぐに、私と同じに、笑い出した…


 「…言われてみれば、そうね…」


 と、言って、笑った…


 それから、


 「…でも、私の耳に入ったのは、透(とおる)の愛人って、聞いたから…」


 好子さんが、言い訳する…


 「…そう、聞いたから…」


 と、言い訳をする…


 「…でも、たしかに、変ね…透(とおる)は、愛人を持つような歳でも、ないし…」


 言いながら、苦笑した…


 「…そうですよ…」


 思わず、私は、相槌を打った…


 私が、言うと、好子さんは、言葉もなかった…


 言葉も、なく、ただ、苦笑した…


 「…どういう経緯で、好子さんの耳に入ったんですか?…」


 私は、つい、聞いてしまった…


 が、


 それが、いけなかった…


 「…それは、言えないわ…」


 と、好子さんが、一転して、凛とした、毅然とした表情で、言ったからだ…


 だから、私は今さらながら、自分の立場を考えた…


 私と好子さんの違いを考えた…


 こうして、話していると、つい、身分の垣根というか…


 私と好子さんを同等の人間と思ってしまう…


 が、


 それは、間違い…


 大いなる、間違いだ…


 私と好子さんは、違う…


 おおげさに、いえば、天と地ほども、違う…


 それを、肝に銘じなければ、ならない…


 あらためて、思った…


 それゆえ、


 「…申し訳ありません…」


 と、謝った…


 「…出過ぎたことでした…」


 と、詫びた…


 が、


 好子さんは、別に怒っているわけでも、なかったようだった…


 「…話せないこともあるのよ…」


 と、好子さんが、口を開いた…


 「…マスコミが、取材源を明らかにしないように、私でも、話せないことも、あるのよ…」


 と、繰り返した…


 「…」


 「…まあ、もっとも、知っていることを、誰彼なく、べらべら喋っていたら、誰にも、信用されないけれど…」


 「…」


 「…とにかく、話せないことも、あるのよ…」


 好子さんが、語気を強める…


 私は、それを、見ながら、よほど、痛いところを突いたなと、思った…


 そうでなければ、これほど、情報源を隠す理由が、わからない…


 もちろん、情報源の名前を聞いたところで、私は、知らない可能性が高い…


 が、


 もしかしたら、情報源は、正造?


 好子さんの兄である、米倉正造かとも、思った…


 ウソかホントか、正造は、私のことが、好きらしい(苦笑)…


 正造自身の口から、直接、告白された…


 しかしながら、私は、まったく、それを信じていない…


 なぜなら、身分が、違い過ぎるからだ…


しかしながら、もしかしたら、好子さんは、それを、鵜呑みにしている可能性がある…


 好子さんは、正造が、好き…


 兄弟といっても、血が繋がってないから、結婚だってできる…


 事実、正造は、好子さんを、


 「…将来、結婚しよう…」


 と、言って、守った…


 十歳ぐらい歳が、離れた正造が、幼い好子さんに、


 「…将来、大人になったら、結婚しよう…」


 と、繰り返し、囁いて、好子さんをその気にさせた…


 好子さんは、米倉の正統後継者…


 米倉本家の血を継ぐ、ただ一人の、正統後継者だからだ…


 兄の、正造も、弟の新造さんも、好子さんと、血が繋がっていない…


 二人とも、分家出身の先代当主、平造の子供だからだ…


 平造は、米倉の分家出身…


 分家出身の平造が、本家に婿入りする形で、米倉本家を継いだ…


 しかしながら、平造も、好子さんの母親も、共にバツイチで、子供がいた…


 だから、平造と、好子さんは、血が繋がってない…


 平造の連れ子である、正造も、だ…


 だから、正造は、好子さんを守った…


 この好子さんこそ、米倉本家の血を継ぐ、ただ一人の人間だからだ…


 将来、米倉を継ぐ好子さんに、変な男が、寄り付かないように、正造は、自分を好きにさせることで、守ったのだ…


 お金持ちで、ルックスのよい好子さんの元には、男たちが、殺到する…


 その中で、好子さんが、変な男を選んでしまっては、困るからだ(苦笑)…


 が、


 それゆえ、好子さんが、正造を好きになったのは、いいが、当然のことながら、正造は、好子さんと、結婚する気は、なかった…


 あくまで、正造は、幼い好子さんを、守るために、


 「…将来、結婚しよう…」


 と、言い続けたに過ぎないからだ…


 そして、それは、正造が、イケメンだったから、できたことだった(笑)…


 そして、その結果、予想外のことが、起きた…


 大人になった好子さんが、本気で、正造と結婚したがったことだ…


 本気で、正造との結婚を望んだことだ…


 そして、そんな立場の好子さんから、見れば、私は、ライバル…


 共に、正造を、巡るライバルだった…


 だから、教えない…


 情報源を明かさないとも、いえる…


 いえるのだ…


 私は、そんなことを、考えた…


 私は、そんなことを、思った…


 目の前に、米倉好子さんを見ながら、好子さんの血が繋がらない兄の正造のことを、思ったのだ…


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