恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 32
私の目の前にいる、好子さんの狙いが、見て取れた…
まだ口には、出さないが、好子さんの狙いが、見て取れた…
そして、そんなことに、ようやく、気付くと、店員が、私たちが、さっき頼んだカフェオレを持ってきてくれた…
私は、少し、遅かったな、と、内心、思ったが、その方が、結果的によかったと、気付いた…
なぜなら、なんとなく、好子さんの思惑が、見て取れたから…
もちろん、カフェオレが、もっと早くても、わかった…
遅かれ早かれ、わかった…
しかしながら、誰かが、途中で、やってきては、集中ができない…
それゆえ、今、遅まきながら、注文したカフェオレがやって来たのが、よかったと、思った…
思ったのだ…
そして、そんなことを、考えながら、注文したカフェオレを飲んだ…
おいしかった…
私は、甘いものが、好き…
子供の頃から、甘いものに、目がなかった…
だから、家にある、甘いものは、よく食べた…
年頃になり、
「…そんなに、甘いものばかり、食べていちゃ、太るよ…」
と、母に注意されたが、気にしなかった…
なぜなら、私は、瘦せっぽちだったから…
小柄で、瘦せっぽちだったからだ…
だから、太るなんて、無縁…
それゆえ、安心して、甘いものを、食べることができた…
が、
それは、25歳まで…
30歳に、近付くにつれ、だんだんと、カラダに肉が、ついてくるのが、わかった…
それまで、いくら食べても、食べても、太ることと、無縁だった私のカラダに、肉がついてきた…
これは、驚き…
驚きだった…
…まさか?…
…まさか、私が太るなんて?…
考えてもみないことだったからだ…
しかしながら、以前と比べて少しばかり、ふくよかになったことで、少しばかり、胸に肉がついたのは、良かった…
おかげで、胸が、少しばかりだが、大きくなった…
が、あくまで、少しばかり…
ほんの少しばかりだ(苦笑)…
元々、私は、ちっちゃくて、小柄…
だから、裸になれば、子供と変わらない…
中学生ぐらいの男のコと変わらない…
ハッキリ言えば、男のコとの違いは、男性器があるか、ないか…
それぐらいの違いだ…
痩せっぽちだから、当たり前だ…
白人の女性モデルじゃないんだから、瘦せていて、胸が大きな女性は、いない…
そんな女性がもし、いるとしたら、整形…
豊胸手術をしたに、決まっている(笑)…
それゆえ、胸も以前と比べると、少しばかり、大きくなったが、同時に、そのほかの部分にも、肉がついてきた…
ふっくらとしてきたのだ…
だから、30歳手前になって、それまでとは、一転して、甘いものは、断つようになった…
甘いものは、食べないようになった…
が、
それは、原則…
たまには、自分へのご褒美として、自分に甘いものを、食べさせる日がある…
今日が、その日だった(笑)…
別に、好子さんと再会したからじゃない…
たまには、甘いものを口にしたい…
偶然、そう思ったに過ぎない…
そう、思ったに。過ぎないのだ…
そして、そんなことを、考えていると、好子さんが、
「…なにを、考えているの? …高見さん…」
と、聞いた…
私は、一瞬、今、考えていたことを、言おうか、どうか、迷ったが、言うことにした…
「…いえ、このカフェオレ、すごく美味しいな、と…」
「…エッ?…」
「…実は、カフェオレを、飲むのは、久しぶりなんです…最近、カラダに贅肉が、ついてきて、甘いものは、控えるようししていたから…」
私が、意を決して言うと、
「…高見さんも…」
と、好子さんが、嬉しそうに言った…
「…では、好子さんも、ですか?…」
「…そう、同じ…若い頃は、太るのとは、無縁だったけれども、ここ最近は、贅肉がついてきて…」
好子が、言う…
苦笑しながら、言う…
「…だから、同じね…」
と、好子さん。
「…同じ?…」
と、私。
「…私たち、パッと見は、姉妹レベルで、似ているでしょ…だから、同じ…たぶん、カラダも同じ…」
「…」
「…だから、似た者同士…たぶん、男の好みも…」
好子さんが、笑いながら、言う…
私は、まさか、好子さんが、そんなことを、言うとは、思わなかった…
まさか、話が、そんな展開になるなんて、思わなかった…
「…高見さん…透を、好きだったでしょ?…」
…エッ?…
内心、驚いた…
まさに、まさか、だ…
好子さんが、私が、透を、好きだったことを、知っているとは、思わなかった…
私は、どう答えていいか、わからず、なにも、言わなかった…
すると、好子さんが、笑いながら、
「…隠すな…高見ちづる…」
と、言った…
「…オマエの好みは、バレてるゾ…」
笑いながら、続ける…
それから、
「…実を言うと、私も、透を、そんなに、嫌いじゃ、なかったんだよね…」
と、続けた…
「…嫌いじゃなかった?…」
これは、意外な告白だった…
好子さんは、透を、あまり好きではなかったと、思っていたからだ…
そして、それが、私の表情に出たのだろう…
「…高見さん…意外って、感じね…」
「…ハイ…」
私は、短く即答した…
ホントは、答えない方が、良かったのかも、しれないが、すでに、私の顔に、意外だ、という表情が、出ていたのだから、隠すのも、おかしいと、思ったのだ…
だから、答えた…
かえって、ここで、
「…いいえ、そんなこと…」
とでも、言って、否定すれば、誰の目にも、私が、ウソを言っているのが、わかる…
もちろん、好子さんの目にも、だ…
が、
それでは、信用は、得られない…
好子さんの信用は、得られない…
真逆に、信用できないひとと、いう烙印を押されるだろう(苦笑)…
私は、思った…
思ったのだ…
すると、好子さんが、
「…でも、事実…事実…」
と、続けた…
「…事実ですか?…」
と、私。
「…そうよ…事実…そして、ホントのことを、言えば、要するに、私にとって、透は、身近な親戚とでも、呼べば、いいのかな…子供のときから、知っている…だから、好きも、嫌いもない…」
「…好きも、嫌いもない?…」
「…そうよ、ない…透は、あんな奴…あんな男だと思っている…それは、ちょうど、私にとって、両親や、兄弟と、いっしょ…好きも、嫌いもない…だって、高見さんだって、両親を見ていて、好きも、嫌いもないでしょ? 親は、親…ただ、それだけ…とりたてて、好きも、嫌いも、ない…透も、それと、同じ…」
「…同じ…」
「…そう…同じ…なまじ、子供の頃から、身近な、親戚同様に知っているからかな…正直、甘いというか、透は、こんな奴、こんな男だと、思っていた…だから、透と、結婚するのも、そんなに、嫌じゃなかった…見ず知らずの男と結婚するより、ずっと良かった…」
「…良かった?…どうして、ですか?…」
「…だって、子供の頃から、見知っていれば、安心するでしょ?…」
好子さんが、笑った…
楽しそうに、笑った…
「…全然、知らない他人より、ずっといい…それに、透は、悪い人間では、ないわ…」
「…」
「…でも、いざ、結婚してみると、合わなかったのね…それは、やはり、夫婦になれば、ただ、昔から、見知っているだけじゃダメ…それに、私と透の結婚は、普通の結婚とは、違う…米倉と水野の合併の象徴…私と透が、結婚することによって、二つの会社が、一つになる…その象徴だった…」
好子さんが、激白する…
「…でも、社風が、全然違った…だから、ホントは、最初から、合併は、無理だったのかも、しれない…結局は、それが原因で、合併は、破綻した…そして、それを、契機に、私も、透と、離婚した…でも…」
好子さんが、言葉を詰まらせる…
私は、待った…
好子さんが、話し出すのを、待った…
「…でも、合併の破談が、なければ、私と透の結婚も、もう少し、長く続いていたかも、しれない…」
好子さんが、意外なことを、言った…
それこそ、想定外なことを、言った…
「…意外?…」
私の顔を見て、好子さんが、楽しそうに、笑った…
「…ハイ…」
私は、遠慮なく、言った…
やはり、ウソは、いけないと、思ったからだ(苦笑)…
「…だって、高見さん…どんな夫婦だって、結婚して、ちょっと、違うとか、合わないと、思っても、すぐに、離婚するわけには、いかないでしょ? 世間の目もある…それに、そんなに、簡単に離婚したら、次の結婚も、同じように、嫌になったら、すぐに、離婚って、なっちゃう…それは、避けたい…だから、本音では、離婚したくなかった…」
好子さんが、意外な心の内側を、明かした…
そして、それは、誰にでも、納得できるものだった…
たしかに、好子さんが、言うように、嫌になったからと、いって、簡単に離婚するわけには、いかない…
そんなに、簡単に離婚すれば、また、次も、となる可能性が高い(苦笑)…
なにより、結婚したのは、自分…
自分で、決めたことだ…
結婚する相手を決めたのは、自分だ…
そんなに簡単に離婚するような相手と結婚するのであれば、そもそも、自分の相手選びに、問題が、あると、考えるのが、普通だからだ…
そして、誰もが、そんなことは、考えない…
好きだから、結婚する…
あるいは、
それほど、好きではなくても、嫌いでは、ないから、結婚するからだ…
だから、嫌になったからといって、すぐに離婚するわけには、いかない…
そもそも、最初から、そんなに嫌いだったら、結婚しない…
そういうことだ…
だから、好子さんと、透の結婚は、普通とは、少々違うが、それでも、そんなに、嫌なら、結婚は、しなかったのでは?
と、考えてしまう…
たしかに、米倉が、水野に救済合併される象徴として、二人の結婚は、大切だ…
合併の象徴になるからだ…
しかしながら、いかに、合併の象徴になるからといって、嫌いな男と結婚することは、できない…
まして、好子さんは、生粋のお嬢様だ…
いかに、立場上、水野透と、結婚した方が、有利と判断しても、そんなに、嫌なら、結婚は、しなかっただろう…
いや、
できなかっただろう…
生粋のお嬢様=我がままだからだ…
だから、並みの人間以上に我が強い…
我が強い=プライドが高いからだ…
だから、嫌いなものは、嫌い…
嫌なものは、嫌だからだ…
いわば、こらえ性が、ないからだ…
私は、思った…
私は、考えた…
そして、私が、そんなことを、考えていると、好子さんが、笑った…
うっすらと、笑った…
私は、
「…なにが、おかしいんですか?…」
と、聞いた…
当然だった…
なぜなら、私は、笑われるようなことは、言ってないからだ…
だから、聞いた…
「…今、高見さんと、話していて、透のことを、考えていたのよ…だって、透のヤツ、私が、五井の御曹司と、噂になったら、対抗して、いきなり、水野が、ビッグプロジェクトをするなんて、発表するなんて…そんなに、まだ、私のことが、好きなのかなと、思って?…」
好子さんが、楽しそうに、笑う…
その笑いを見て、実に、小悪魔的だと、思った…
私と、まったく同じ顔にも、かかわらず、小悪魔的だと、思った…
そして、なにより、魅力があった…
思わず、見入ってしまう、魅力があった…




