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恋かもしれない 恋愛偏差値ゼロ 第3部  作者: トモサン


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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 31

…これって、偶然?…


 …それとも、必然?…


 真っ先に、考えた…


 会社で、米倉好子さんのことが、話題になり、まさか、その日に、その好子さん当人が、私の目の前に現れるなんて…


 …まさか、偶然?…


 …それとも、必然?…


 考えざるを得なかった…


 私の頭の中が、その思いで、いっぱいになった…


 そして、そんなことを、考えていると、


 「…お久しぶり…高見さん…」


 と、好子さんが、挨拶した…


 私より、先に、挨拶した…


 これには、慌てた…


 私より、偉い人間の方が、私より先に挨拶するなんて…


 普通は、下の人間の方が、先に挨拶するのが、礼儀なのに…


 それに、気付くと、私は、慌てて、


 「…ご無沙汰をしています…」


 と、丁寧に、腰を折って、挨拶した…


 腰を、九十度まで、曲げて、挨拶した…


 さすがに、マズい…


 私より先に、好子さんに、


 「…お久しぶり…」


 と、言わせたのは、マズいと、思ったからだ…


 だから、慌てて、腰を折って、挨拶した…


 これ以上、腰を折れないと、思うほどの角度で、腰を曲げた…


 実際は、さらに、それ以上、腰を曲げることはできるが、これ以上、やると嫌味になると、思うので、止めた…


 何事にも、限度があるからだ(苦笑)…


 私が、腰を折るのを止め、米倉好子さんと、向かい合った…


 路上で、見つめ合った…


 私は、目の前で、好子さんを見ながら、


 …きっと、この路上で、私と好子さんを見て、道行くひと、驚くだろうな…


 と、思った…


 あまりにも、似ているから、驚くと、思ったのだ…


 それから、いや、違うと、思い直した…


 …きっと、姉妹か、なにかと、思うかも、しれない…


 と、思い直したのだ…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、


 「…高見さん…ホント、久しぶり…」


 と、好子さんが、実に、嬉しそうに、言った…


 事実、好子さんは、実に嬉しそうな表情だった…


 私は、なぜ、私風情に会うのが、そんなに、嬉しいのだろうと、内心、思いながらも、


 「…いえ、私の方こそ、好子さんに、またお会いできて、嬉しいです…」


 と、返した…


 いわゆる、社交辞令というやつだ(苦笑)…


 しかしながら、好子さんの私を見る笑顔は、単なる社交辞令とは、思えないほど、嬉しそうだった…


 「…ホント、嬉しい…」


 と、好子さんが、言う…


 おそらく、心の底から、言う…


 そして、それを、考えると、なんだか、こちらが、単なる社交辞令で、


 「…好子さんと、また、お会いできて、嬉しい…」


 と、言った言葉に、罪悪感を、感じた…


 いや、言葉ではない…


 本音で言っていないことに、罪悪感を、感じたのだ…


 それから、私は、遠慮しながらも、


 「…もしかして、ここで、私を待っていたんですか?…」


 と、聞いた…


 聞かざるを得なかった…


 なぜなら、米倉好子さんが、この街に住んでいないことを、知っているからだ…


 だから、ここで、私に会ったのは、偶然とは、考えにくい…


 私を待っていたと、考えるのが、正しいからだ…


 だから、聞いた…

 

 「…もしかして、ここで、私を待っていたんですか?…」


 と、聞いた…


 私の質問に、


 「…実は、高見さんが、会社を出てから、ずっと…」


 と、笑った…


 笑いながら、好子さんが、告白した…


 私は、その告白に、仰天した…


 思わず、


 「…エッ? …会社を出てから、ずっと?…」


 と、素っ頓狂な声を上げた…


 周囲の道行く人々が、なにが、あったのかと、思わず、こちらを見かねない大声を上げた…


 それに、気付いた私は、自分の行動に、恥ずかしくなったと、同時に、


 「…ウソでしょ?…」


 と、小さく、呟いた…


 思わず、呟いた…


 「…いいえ、ホント…」


 好子さんが、笑いながら、返す…


 正直、私の頭の中が、混乱した…


 …一体、なぜ、好子さんが、私を待ち伏せたのか?…


 さっぱり、わからない…


 なにしろ、身分が、違い過ぎる…


 江戸時代では、ないが、身分が、違い過ぎる…


 好子さんが、江戸時代の大名の娘に例えれば、私は、水飲み百姓の娘…


 雲泥の差がある(爆笑)…


 比べようのない差がある(爆笑)…


 いくら、外見が、似ていても、埋めようのない差がある(爆笑)…


 それが、現実…


 一般のどこにでもいる、サラリーマンの娘と、世間に知れた、大きな会社のオーナー一族の娘だ…


 比較もなにも、あったものじゃ、ないからだ…


 しかし、なぜ、そんな高貴な、お嬢様が、私風情に会いたいなんて…


 俄然、興味が、出てきた…


 出てきたのだ…


 すると、さらに、仰天の言葉が、米倉のお嬢様の口から、飛び出した…


 「…私、ずっと、高見さんに、会いたかった…」


 と、言ったからだ…


 私から、してみれば、驚きしかなかった…


 「…ホントは、高見さんが、会社を、出てきたところで、声をかけても、よかったんだけれども、それをして、近くの店で、会ったりすると、誰かに、見られる可能性もあるから…」


 と、好子さんが、言う…


 「…もちろん、私は、誰に見られても、構わないけれども、高見さんは、今の会社に入ったばかりだし、なにしろ、同じ顔が、二つあれば、どこにいても、人目を引くし…」


 と、笑う…


 私は、好子さんの言葉に、内心、激しく同意した…


 好子さんの言うことは、もっとも…


 実に、もっともなことだったからだ…


 だから、同意した…


 激しく同意した…


 「…だから、私が、会社から出てきたところを、尾行しても、ずっと、声をかけなかったんですか?…」


 と、私は、好子さんに、確認するように、呟く…


 すると、好子さんは、それを、聞いて、満面の笑顔で、頷いた…


 「…高見さんの勤める会社の近くで、高見さんに、声をかけて、近くの店で、おしゃべりしたりでもしたら、高見さんの会社の同僚に、見られるかも、しれないでしょ? そしたら、もしかしたら、高見さんに、迷惑をかけるかも、しれないから…」


 と、米倉好子が、告白する…


 実に、意味深に、告白する…


 

 結局、私と好子さんは、私の住む、駅の駅前のカフェに入って、二人で、話した…


 「…ずっと、高見さんに、会いたかった…」


 好子さんが、もう何度目か、わからないほど、同じ言葉を繰り返す…


 そして、おそらく、その言葉にウソはないのは、好子さんの表情で、わかった…


 実に、屈託のない笑顔…


 その笑顔を見ながら、きっと、自分が笑っているのは、こんな感じなのだろうな?


 と、思った…


 なにしろ、私と、好子さんは、似ている…


 姉妹レベルで、似ている…


 だからだ…


 そして、そんなことを、考えると、この好子さんの弟の新造さんが、以前、私に、実は、この私の先祖もまた、米倉一族であることを、告げたことを、思い出した…


 何世代前か、わからない…


 たしか、新造さんが、言うには、私のおじいちゃんのおじいちゃんレベルの先祖が、米倉一族だった…


 米倉一族の出身だったということだ…


 だから、似ている…


 私と好子さんは、似ている…


 だから、まるっきり他人のそら似じゃない…


 きちんと、私と好子さんのカラダの中には、同じ血が流れている…


 だいぶ、薄まっているが、同じ血が流れているということだ…


 私は、今、それを、思い出した…


 それを、藻い出したのだ…


 しかしながら、元は、同じ一族なんだから、好子さんと、私は、同じレベルの人間に違いない…


 なんて、愚かなことは、考えない…


 そんな、バカなことは、考えない…


 ただ、血が繋がっているだけ…


 それだけだ…


 一方は、世間に知られた、大きな会社のオーナー一族…


 もう一方の私はと、言えば、単なる平凡なサラリーマン家庭の娘…


 差がありすぎるからだ(苦笑)…


 例えれば、私の祖先が、ずっと前に、江戸時代のどこかの、大名だった…


 私は、その末裔…


 しかしながら、その大名の本家の一族とは、もはや、なんの関係もない…


 本家の人間は、そもそも、私の存在すら、知らない…


 それと、似ている…


 血が繋がっているのが、事実としても、あまりに、薄いからだ…


 だから、関係も、薄い…


 いや、


 薄いのでは、ない…


 そもそも、なんの関係もなくなったというのが、正しいのかも、しれない…


 私は、目の前の米倉好子さんの顔を、見ながら、考えた…


 そんなことを、考えた…


 そして、そんなことを、考えていると、好子さんが、


 「…高見さん…今度の会社は、どう?…」


 と、いきなり、聞いた…


 これには、私は、驚いた…


 いや、驚くことでは、ない…


 なにしろ、この好子さんは、今日、私が、今の会社を退社したときから、私を尾行してきたと、言っていた…


 だから、当然、私が今勤めている会社を知っているのが、当たり前だったからだ…


 私は、一瞬、驚いたことは、好子さんに、悟られないように、注意して、


 「…ええ…なんとか、やってます…」


 と、曖昧に返事した…


 が、


 次の好子さんの言葉は、私の予想を裏切るものだった…


 「…今の会社…高見さんの勤める会社、水野のおじさまの紹介ですってね…」


 と、告げたからだ…


 これには、驚いた…


 文字通り、仰天した…


 私のカラダが、一瞬、硬直しかけたが、すぐに、


 「…そこまで、ご存じだったんですか?…」


 と、聞いた…


 内心の動揺を隠して、聞いた…


 「…人づてにね…」


 と、好子さん…


 「…人づて、ですか?…」


 と、私。


 「…そう、人づて…なんといっても、水野のおじさまとは、子供の頃から、知っている…父の親友で、昔から、それこそ、親戚のように、家に、頻繁にやってきたから…」


 と、好子さん…


 「…親戚のように、ですか?…」


 「…そう…つまり、それほど、頻繁に家にやってきたということ…」


 「…」


 「…なにしろ、父と水野のおじさまは、気があった…それは、子供心にも、傍から、見ていて、わかった…」


 「…」


 「…あんなことさえ、なければ、二人は、今も親友なのに…」


 好子さんが、悔しそうに言う…


 あんなこととは、もちろん、米倉が、破産しかけたことだ…


 米倉が、実力以上に、会社を広げ過ぎて、借金で、首が回らなくなったことだ…


 「…でも、まあ、水野のおじさまには、いっときは、迷惑をかけたけれども、助けてもらったし、今は、関係なくなった…」


 好子さんが、笑った…


 が、


 その笑いは、どこか、陰があるというか…


 たしかに、迷惑をかけたと言えば、聞こえは、いいが、その内実は、水野を騙したこと…


 米倉の財務内容が、火の車であることを、隠して、米倉と水野の合併を推進したことだからだ…


 水野の立場から、言えば、迷惑どころでは、なかった…


 迷惑という言葉では、言い表せないほどのことだった…


 そして、


 「…今は、関係がなくなった…」


 というのは、合併が、破談になったこと…


 合併したのは、事実だが、すぐに、破談になった…


 米倉の関連会社の中で、エネルギー関連の先物取引をしている会社があって、それが、保有しているエネルギー関連の資産が、ロシア・ウクライナ戦争で、急騰して、米倉の借金が、帳消しになったのだ…


 それゆえ、合併が、破断した…


 米倉だけで、水野の助けがなくても、事業を継続できると、判断したからだ…


 つまり、人間で、言えば、結婚に例えると、女が、男に、借金の肩代わりで、結婚を迫られて、結婚したが、その借金を返すことが、できるようになったから、借金を返して、離婚したのと、似ている…


 ただ、米倉の場合は、その女の方が、騙した…


 借金があるのを、隠して、男と結婚したということだ(笑)…


 だから、厳密には、その例えは、間違いだ(苦笑)…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、目の前の好子さんが、実に、楽しそうに、私を見ていることに、気付いた…


 そして、そのニコニコした笑顔の下に、なんらかの思惑があることを、わかった…


 なんらかの思惑があることが、見て取れた…


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