恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 28
…まさか?…
…まさか?…
水野グループの会社に転職して、まさか、なぜ、あの水野透が、私を好きだったのか?
謎解きをされるとは、思ってもみなかった…
まさか、こんな展開になるとは、予想もしていなかった…
同時に、笑えたというか…
複雑な気持ちになった…
水野グループの会社に転職したら、なぜ、水野透が、私を好きだったのか?
謎解きされた…
これが、皮肉でなくて、一体なんだと、言うのか?…
いや、
皮肉以外の何物でもないのでは、ないか?
私は、思った…
思ったのだ…
そして、そんなことを、私が、考えていると、あの女性社員が、
「…やっぱり、高見さん…覚えがあるんだ…」
と、笑った…
「…覚え…ですか?…」
「…頼りがいがなさそうな男から、好きになられた、覚えよ…」
そう言われると、なにも、言えなかった…
まさか、覚えがあるとも、言えなかったし、まして、その相手が、あの水野透とも、言えなかった…
口が裂けても、言えなかった…
「…でも、高見さんだけじゃないかも…」
別の女性社員が、言う…
「…どういう意味?…」
と、例の女性社員…
「…ほら、あの水野のお坊ちゃんのように、頼りがいがない男は、あの米沢さんのような女にも、惹かれるだろうし…」
いきなり、ここで、あの米沢京子の名前が出るとは、思わなかった…
まさに、予想外…
まさに、想定外の出来事だった…
そして、ここで、あの米沢京子の名前が出た理由…
それは、この場にいないからだった…
あの米沢京子が、この場にいないからだった…
それゆえ、名前が出せた…
出せたのだ…
その女性社員が、続けて、
「…あの米沢さん…私たちと、つるまないのね…」
と、不満そうに、言う…
「…つるまない?…」
と、私。
「…そうよ…つるまない…つまり、いっしょに、行動しない…」
「…」
「…だから、今日も、この場にいないでしょ?…」
「…」
「…女には、珍しいタイプね…」
そう、言われると、思わず、吹き出しそうになった…
もちろん、吹き出すわけには、いかない…
あくまで、気持ちの上で、だ(苦笑)…
たしかに、女は、男とは、違う…
その大きな違いは、集団行動…
女は、男以上に、群れる…
男以上に、集団で、行動する…
男の場合は、稀に一匹狼というと、言い過ぎだが、あまり、集団で、行動しない男も、いるが、女の場合は、稀…
極めて、稀だ…
めったに、お目にかかれない…
おそらく、女の方が、集団生活に、馴染む要素が、強いのかも、しれない…
要するに、コミュニケーション能力が、高いのかも、しれない…
あるいは、現実的…
いわゆる、群れないと、つまはじきされる可能性が、高い…
だから、それを恐れて、どこかの、群れに入る…
どこかの群れというのは、会社でも、学校でも、派閥があるからだ…
派閥=グループがあるからだ…
要するに、気の合うもの同士集まる…
だから、それに入らないというのは…
よほど、意志が強いか?
あるいは、
コミュニケーション能力が、欠如しているか?
の、どっちか?
そのどっちか、だ…
そして、あの米沢京子は、前者…
間違いなく、前者に違いない…
私は、思った…
私は、考えた…
そして、私が、そんなことを、考えていると、
「…あの米沢さんも、中途入社…高見さんが、やってくる二か月ぐらい前に、入ってきたのね…」
「…そうなんですか?…」
初めて、聞いた…
あの米沢京子が、私同様、中途入社なのは、知っていた…
たしか、以前、営業所長の前沢から、聞いた…
が、
それだけ…
彼女に関する情報は、それだけだった…
「…彼女のことは、あまり、わからないのよ…」
と、さらに、別の女性社員が、口を開いた…
「…わからない? …どうして、わからないんですか?…」
「…だって、私たちと、こうして、ランチをしたり、会社で、仕事が終わって、いっしょに、飲みに出かけたりしないから、さっぱり、わからない…」
「…」
「…案外、私たちと、いっしょに、行動することで、なにか、秘密が、バレやしないかと、ヒヤヒヤしているのかも…」
と、前の女性社員…
「…秘密って、なによ…」
「…それは…」
その女性社員は、言いよどんだ…
そして、話は、それで、終わりだった…
「…そろそろ、会社に、戻らなきゃ…昼休みが、終わっちゃう…」
その声で、全員が、慌てて、昼食をすませて、店を出た…
そして、私は、会社に、戻り、いろいろなことを、考えた…
いろいろなことというのは、彼女、米沢京子のこと…
そして、あの水野透のことだ…
なぜ、透が、私を好きだったのか?
今さらながら、考えた…
たしかに、さっき、いっしょに、昼食を食べた、この会社の同僚の女性社員が、言うように、あの透は、頼りない…
見るからに、頼りない(笑)…
それは、事実…
事実だ…
しかしながら、だから、透は、私を好き…
この私、高見ちづるを、好きだったとは、思わなかった…
夢にも、思わなかった…
そもそも、そんなことを、考えたことも、なかった…
いや、
自分のことだから、わからないのかも、しれない…
自分のことだから、そんなふうに、考えてみたことも、ないのかも、しれない…
そう、思った…
そう、考えた…
そもそも、自分が、自分を、どう思うのか?
あまり、考えたこともない…
なぜなら、自分だからだ…
自分のことだからだ…
だから、わかりやすい話で言えば、自分が、どこの高校や大学を出て、その学校の偏差値が、どのくらいだとか、自分のルックスとかは、わかる…
どう世間から、評価されるか、わかる…
が、
それくらい…
自分の性格や、勉強以外の能力は、自分でも、わかっているつもりでも、他人から、見た、私自身の能力とは、違う…
その代表的な例は、私が、落ち着いて見えること…
私自身は、そんなこと、考えたこともない(苦笑)…
さっきも言ったように、子供っぽい…
実は、年齢以上に、子供っぽいのでは?
と、考えていたところだ…
だが、他人は、そう見ないことだ…
似たようなことは、リーダーシップにも言える…
リーダーシップというと、難しいことのように、聞こえるが、要するに、ひとを束ねられるか、否かと、いうこと…
これも、また、同じ…
どう同じかと、言えば、本人が、意識せずとも、ひとを束ねられる人間は、束ねられる…
意識せずとも、束ねられる…
そういうことだ…
つまり、それが、才能なのだろう…
そして、それは、意外なことに、頭の良さに直結しない…
平たく言えば、学歴が高いから、リーダーシップが、あるわけでは、ないということだ…
それは、東大や京大を卒業すれば、誰でも、ひとを束ねられるかと、言えば、違うだろう…
要するに、頭の良さと、リーダーシップは、直結しないということだ…
そして、リーダーシップに欠かせない要素は、頼りがいが、あると、周囲に見られること…
これが、必要不可欠な要素だ…
だから、いかに、頭が、良くても、周囲から、頼りがいがないと、見られると、リーダー失格となる…
そして、そう考えれば、間違いなく、あの水野透は、リーダー失格だろう…
なにしろ、あの透を、一目見た、会社の女性社員が、
「…頼りなさそう…」
と、評しているのだから、間違いなくリーダー失格…
透には、可哀そうだが、リーダー失格だ(笑)…
私は、思った…
私は、考えた…
だが、それを、あの透は、自覚しているのか?
わからない…
さっぱり、わからない…
なぜなら、私は、透と、それほど、接していないからだ…
ただ、私が、透と、接していて、透が、ひとの上に立ちたいとか、そんな上昇志向があるようには、見えなかった…
まったくの平凡人…
それが、私の透の評価だった…
平凡というのは、枠に収まるということ…
ルックスでも、頭の良さでも、明らかに、凡人の枠を超える人間は、少ない…
私を例に取れば、他人様より、美人に生まれたが、それだけ…
それだけだ…
やはり、凡人…
他人様が、羨む才能なんて、なにもない…
が、
透は、たとえ、凡人に生まれようと、水野財閥の後継者として、生まれた…
だから、リーダーシップを取り、水野グループをけん引しなければ、ならない…
それゆえ、リーダーシップの才能があろうとなかろうと、関係ない…
透は、リーダーにならなければ、ならない宿命だからだ…
だから、今回のように、アドバルーンを、挙げて、世間から、注目されなければ、ならない…
なにをやるか、わからなくても、これから、
なにか、すごいことを、やると、アドバルーンを挙げて、世間から、注目されなければ、ならないからだ…
そして、私が、そんなことを、考えていると、今度は、
「…そう言えば、あの水野のお坊ちゃまと、結婚していた、米倉のお嬢様も、今、誰かと、交際しているという噂が、たしか、ネットに出回っていた…」
と、誰かが、言った…
私は、その情報に、仰天した…
まさしく、驚天動地の出来事だったからだ…
だから、仰天した…




