↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋かもしれない 恋愛偏差値ゼロ 第3部  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/128

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 24

私のカラダが、固まった…


 思わず、固まった…


 まさか?


 まさか?


 この時間に、彼女がいるとは、思わなかった…


 彼女、米沢京子が、いるとは、思わなかった…


 彼女が、私の顔を見て、


 「…おはよう…」


 と、言うものだから、

 

 私は、とっさに、


 「…おはようございます…」


 と、返したが、自分でも、声が裏返っている気がした…


 あまりの、ショックに、声が裏返っている気がした…


 それほどのショックだった…


 それほどの衝撃だった…


 すると、やはり、私の声が、若干、裏返っているのが、気付いたのだろう…


 目の前の米沢京子が、うっすらと、笑った気がした…


 いや、


 気がしたではない…


 明らかに、私を見て、笑った…


 笑ったのだ…


 そして、それを見た瞬間、カッと、私の頭に血が上った…


 自分でも、それが、わかるほど、頭に血が上った…


 自分で、自分を抑えられない…


 そんな予感がした…


 私にしては、珍しい…


 実に、珍しいことだった…


 「…おはようございます…」


 と、再度、言った…


 大きな声で、言った…


 あるいは、


 怒った声で、言った…


 自分でも、声が大きすぎたと、思った…


 が、


 やり直すことは、できない…


 私は、すばやく、ロッカーに行って、制服に着替えた…


 この会社には、制服がある…


 イマドキ、少数派…


 しかし、これは、たぶん、水野グループだから…


 戦前には、日本の二十大財閥に入っていた、由緒ある企業の歴史を継いでいるせいかも、しれない…


 昔ながらの、制服がある…


 ちょうど、中学や高校のときと同じ…


 学生服やブレザー、セーラー服と、同じだ(笑)…


 私は、着替えながら、考えた…


 そして、一息、ついた…


 頭を冷やすためだ…


 このままでは、あの米沢京子と、ぶつかってしまう…


 下手をすれば、頭に血が上って、怒鳴ってしまう…


 そう、思ったのだ…


 まさか、つい最近、転職してきたばかりの新入社員が、古参の社員を怒鳴りつけるわけには、いかない…


 自分でも、当然、それが、わかっている…


 だから、そのことを、肝に銘じて、動かなければ、ならない…


 肝に銘じて、行動しなければ、ならない…


 私は、深呼吸をひとつすると、ロッカー室を出て、職場に向かった…


 そして、職場に戻ると、何度目かの、


 「…おはようございます…」


 と、言った…


 私が、


 「…おはようございます…」


 と、言うと、すでに、出社していた、人間たちが、


 「…おはようございます…」


 と、返した…


 しかしながら、当然、その中には、あの米沢京子は、いなかった…


 私の、


 「…おはようございます…」


 と、いう声に、反応しなかった…


 私の、


 「…おはようございます…」


 を、無視したのだ…


 これは、当然と言えば、当然…


 あらかじめ、わかっていたことだ…


 だから、驚きも、なにも、なかった…


 私は、ただ、黙って、自分の席に向かった…


 別にやることも、あまりない…


 が、


 掃除は、別…


 当たり前だが、掃除は、女性社員がやる…


 イマドキ、時代遅れかも、しれないが、水野グループは、昔から、ある企業…


 それゆえ、感覚が、少し、古いのかも、しれない…


 が、


 文句を言うことは、できない…


 他社から、転職してきた人間が、


 「…イマドキ、女が、掃除するなんて、古い!…」


 なんて、言い出すことは、できない…


 それでは、敵を作ってしまう…


 今いる、この会社で、敵を作ってしまうからだ…


 だから、無理…


 できない…


 私も、ぞうきんを探して、机の周りを掃除した…


 もちろん、自分の席だけではない…


 自分以外の席も、だ…


 が、


 そんなことを、しても、まだ、私に話しかけてくるものは、いなかった…


 私に、親しみを込めて、話しかけてくるものは、いなかった…


 すでに、私より、早く出社した女性社員が、


 「…ねえ、昨日のテレビ見た?…」


 と、別の女性社員に話しかけた…


 「…それは、テレビは、見たわよ…でも、なんの番組?…」


 「…ニュースよ…この会社のニュース…」


 「…エッ? …この会社のニュース? そんなのあった?…」


 「…あった…あった…水野グループの御曹司のニュースがあった…」


 「…水野グループの御曹司って…」


 「…水野透(とおる)って、名前の、見るからに頼りなさそうな男…」


 「…頼りなさそうな男?…」


 「…そう、頼りなさそうな男…」


 …頼りなさそうな男?…


 やはり、あの透(とおる)は、誰の目にも、頼りなさそうな男に見えるのか?…


 思わず、内心、笑った…


 内心、吹き出しそうになった…


 「…で、その頼りなさそうな男が、どうしたの?…」


 「…なにやら、ビッグプロジェクトを、仕掛けるらしい…」


 「…ビッグプロジェクトって、なに?…」


 「…それが、まだ秘密って…」


 「…秘密って?…」


 「…アドバルーンよ…アドバルーン…」


 「…アドバルーンって、なに?…」


 「…とにかく、世間で、目立つ、なにか、派手なことを、したいわけ…ほら、その御曹司…この前、やらかしたでしょ?…」


 「…なにを、やらかしたの?…」


 「…米倉との合併…その御曹司が、音頭を取って、合併を推進したけれども、あっけなく破談…結婚に例えれば、結婚は、してみたけれども、すぐに、離婚したのと、いっしょ…」


 「…エッ? …離婚?…」


 「…実際、その御曹司も、米倉と、合併する象徴として、米倉の娘と結婚したけれども、水野と米倉の合併が白紙に戻ったことで、その娘とも、離婚…世間に恥を晒したわ…」


 「…恥って?…」


 「…しかも、噂では、その御曹司…水野の会長の奥さんの子供じゃないみたい…」


 「…じゃ、誰の子供?…」


 「…愛人というか、お妾さんの…」


 「…」


 「…だから、余計に、目立とうとするのかな…」


 「…どういう意味?…」


 「…自分自身に、引け目というか、負い目があると、変に、カッコつけたがるというか…無理をするでしょ? …ほら、会社でも、大卒の中に、一人だけ、高卒がいると、仕事で負けまいと、無理に肩ひじ張っているのが、見え見えだったり…わざと、難しい話をして、オレは、大卒には、負けない知識があるんだと、言いたいのが、傍から、バレバレだったり…」


 私は、それを、聞いて、ビックリした…


 文字通り、ビックリした…


 …知っている!…


 …水野の内情を知っている…


 …米倉のことも知っている…


 と、思った…


 同時に、


 …なんで、こんなに知っているんだ?…


 と、思った…


 そして、それは、話を聞いていた同僚も同じだった…


 「…どうして、そんなに、詳しいんですか?…」


 と、もうひとりの同僚に聞いた…


 「…ネットよ…」


 「…ネット?…」


 「…家でも、通勤の最中も、スマホで、ネットを検索すると、出てくる…出てくる…」


 同僚が、笑う…


 「…まあ、私が、末端とは、いっても、この会社が、水野グループだから、少しばかり、興味があるから…」


 と、言って、笑った…


 それから、続けて、


 「…でも、だからと言って、私たちが、あの頼りなさそうな御曹司と、どうこうなるわけじゃ、ないし、たぶん、一生、会うことも、ないでしょ? 身分が、違い過ぎるもの…」


 「…身分って…そんなおおげさな…」


 「…あら、いつの時代も、身分は、あるわ…この会社だって、部長と、平社員じゃ、もらう給与が、違うから、生活に開きができる…それが、身分よ…」


 もっともなことを、言う…


 傍から、聞いていて、思わず、相槌を打ちたくなるほどだった(苦笑)…


 が、


 年長の女性社員の話に、若い女性社員は、納得がいかなかったようだ…


 「…でも、身分…身分って、今の時代に、そんな身分の差が、存在するんですか?…」


 若い女性社員が、年長の女性社員に、食ってかかった…


 「…存在するわ…その証拠に、あの頼りなさそうな、水野グループの御曹司が、結婚したんだって、米倉のお嬢様でしょ? あの御曹司が、私たちのような一般の人間と、結婚するなんて、ありえないわ…」


 年長の女性社員が、若い女性社員に諭すように、言う…


 が、


 しかしながら、その言葉は、若い女性社員ではなく、私に刺さった…


 私、高見ちづるに刺さった…


 なぜなら、その年長の女性社員の言う通りだからだ…


 お金持ちの水野透(とおる)が、私のような身分の女を相手にするわけはない…


 結婚相手に選ぶわけはない…


 当たり前のことだ…


 そんな当たり前のことが、わからないなんて…


 冷や水を浴びせられた気分になった…


 文字通り、頭の上から、冷や水をかけられた気持ちになった…


 あまりにも、身勝手というか…


 つくづく、自分が、調子に乗っていたと、思った…


 自分自身に、都合の良い未来ばかり、見ていたと、思った…


 おそらく、あの水野良平が、今回、この、水野グループのこの会社を、私に紹介してくれたのは、私に迷惑をかけたから…


 私が、以前に勤めていた金崎実業を退職せざるを得ないきっかけを作ったから、私に、この会社を、紹介してくれたに違いない…


 しかしながら、もしかして、この先、私も、あの透(とおる)と、結婚できるかも、しれない…


 水野グループの御曹司と結婚できるかもしれない…


 そんな玉の輿に乗れるかも、しれない…


 そんな気持ちが、私の中にあったかも、しれない…


 自分では、気付かずとも、あったかも、しれない…


 が、


 今の彼女の言葉で、その気持ちが、なくなった…


 きれいさっぱりなくなった…


 今の彼女の言葉で、あらためて、私の立場が、わかった…


 あらためて、私の身分がわかった…


 同時に、夢がなくなった…


 私のバラ色の未来がなくなった(苦笑)…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。