恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 21
米倉正造…
透と、結婚した好子さんの兄…
そして、なにより、この私、高見ちづるが、生まれて初めて、好きになった男…
33年生きて、初めて、好きになった男だった(苦笑)…
透は、正造と同じく、33年、生きていて、初めて好きになった男だが、それは、単に気になるレベル…
それは、ちょうど、テレビを見ていたら、カッコイイ男が、テレビ画面に現れて、好きになったのと、同じレベルというか…
気にはなったが、それ以上でも、以下でもない…
そんなレベル…
しかしながら、米倉正造は、違う…
この高見ちづるが、本気になって、好きになった男だった…
33年、生きて、初めて、好きになった男だった…
いっしょに、いるときは、わからなかった…
そこまで、意識していなかった…
が、
いっしょに過ごすことがなくなったとき、初めてわかった…
私が、米倉正造に恋をしていたことが、初めてわかった…
なくなってから、わかる…
失ってから、わかる…
そういうことだ…
米倉正造と、過ごしていたときは、たいして、気にならなかった…
が、
会わなくなって、初めて、気付いた…
これは、誰でも、同じ…
同じだ…
同じような経験があるはずだ…
それが、もっとも、端的に現れるのが、ひとの死…
若ければ、お爺ちゃん、お祖母ちゃんの死だろう…
亡くなって,初めて、もう二度と会えないことがわかるからだ…
あるいは、そこまで、いかなくても、学校を卒業して、友人や知人と、二度と会うことが、なくなったとき…
中学から、高校…
高校から、大学へと進学して、誰もが、二度と会わなくなる、友人、知人も、多い…
とりわけ、片思いで、自分だけが、相手を好きだった場合、もう二度と会えないのが、悲しい…
しかしながら、そうは言っても、私と正造は、その後、会わなかったわけではない…
再会したが、うまくいかなかった…
それは、なぜか?
それは、正造が、ホントは、好子さんを好きだったから…
それが、わかったから、うまくいかなかった…
正造と好子さんは、兄妹…
しかしながら、血は繋がっていなかった…
好子さんは、米倉の正統後継者だった…
米倉本家の跡取りのお嬢様の血を引いた娘だった…
だが、正造は、違った…
正造は、米倉本家の跡取りお嬢様と、結婚した、父、平造の連れ子だった…
それゆえ、正造と、好子さんは、血が繋がっていなかった…
そして、正造は、好子さんを、守ろうとした…
正造と、好子さんは、十歳ぐらい、歳が、離れている…
正造は、幼い好子さんが、自分になついていることに、気付き、それを、利用した…
大人になったら、結婚しようと言って、好子さんの心を縛った…
正造は、イケメン…
誰が、見ても、いい男だった…
それは、きっと、幼い好子さんにも、わかったに違いなかった…
歳は離れていても、そんなイケメンに、
「…ボクたちは、将来結婚しよう…」
と、いつも、耳元で、囁かれて、幼い好子さんも、それを当然のように、受け入れた…
が、
正造の狙いは、別だった…
結婚では、なかった…
結婚は、ただ、そう言っただけ…
幼い好子さんに、結婚を吹き込むことで、好子さんの心が、他の男にいかないように、考えたのだ…
好子さんは、米倉の正統後継者…
米倉本家の血をただ一人引く者…
そんな正統後継者の好子さんが、やがて、大人になり、ろくでもない男と結婚するかも、しれない危険を排除しようと、したのだ…
好子さんは、米倉家の正統後継者でなくても、キレイで、可愛い…
私と同じく、若い頃の女優の常盤貴子さんを、小柄にした感じで、キレイで、可愛い…
つまりは、大金持ちの跡取り娘でなくても、キレイで、可愛いと、いうことだ…
ただでさえ、キレイで、可愛いから、男たちから人気があるのに、さらに、大金持ちの跡取り娘であれば、余計に、男たちから、人気が出る…
好子さんと、結婚すれば、大金持ちになれるからだ…
それが、わかっていたから、正造は、幼い好子さんに、結婚を囁いた…
自分との結婚を好子さんに囁くことで、好子さんの心が他の男にいくことを、防いだのだ…
そうすることで、好子さんを、守ったのだ…
後にそれが、わかった…
だから、それを知った私は、正造に、
「…好きだ…」
と、言われても、心が動かなかった…
正造が、ホントは、好子さんを、好きなことを、知っていたからだ…
正造は、好子さんが、透と、結婚すると、聞いて、ホッとしたに違いない…
透は、お金持ち…
透と、好子さんは、家柄も同じ名家、名門…
だから、似た者同士と思ったに違いなかった…
似た者同士の組み合わせと思ったに、違いなかった…
また、なにより、正造は、好子さんと、同じく、透を、幼いときから、知っている…
だから、なおさらだった…
透と、好子さんの結婚に賛成だったに違いない…
が、
うまくいかなかった…
正造は、内心、落胆したに違いない…
そして、もう一人、好子さんの身を心配している人間が、いた…
それは、好子さんの父、平造だった…
血は繋がっていないが、父の平造だった…
平造にとって、好子さんは、米倉そのものだった…
好子さんだけが、米倉本家の血を継ぐ、ただひとりの人間だったからだ…
米倉の傍流に生まれた、平造は、なにより、それが、わかっていた…
いかに、好子さんの存在が、大切か、わかっていた…
血の大切さがわかっていた…
だから、誰よりも、大切にした…
が、
それが、いけなかった…
平造の息子の正造が、誤解したのだ…
平造が、好子さんを、可愛がるのは、好子さんを手に入れようとしているのでは?
と、誤解したのだ…
平造は、女好き…
そして、それは、正造も同じ…
二人は、父子…
血の繋がった、実の父子だった…
だから、そう考えた…
そう、考えたのだ…
つまりは、二人とも、好子さんの幸せを考えたが、そのやり方が、違っただけだ…
なにより、正造は、この私を平造に、あてがおうとした…
それは、平造が、好子さんを狙っていると、考えていたから…
だから、好子さんとよく似たルックスの私をあてがおうとした…
いわば、私は、好子さんの代用品…
米倉好子の代用品だった…
米倉好子の身代わりだった…
私は、それを、知ると、内心、激怒すると、ともに、
…やっぱり!…
と、思った…
…やっぱり!…
と、思って、落胆した…
私風情の女が、大金持ちの家庭に入れるわけはない…
大金持ちの人間と結婚できるはずがない…
今さらながら、わかった…
恋に恋する、中学生や高校生ではない…
もはや、33歳の女…
もうすぐ、34歳になろうと、言うのに、
「…なにをそんな夢を見ているの?…」
と、自分自身に、言いたい…
自分自身に、問い詰めたい…
真顔で、問い詰めたい(苦笑)…
そんな気分…
そんな気持ち…
が、
一方で、このチャンスを逃したくない…
このチャンスをなんとか、ものにしたい…
そんな気持ちがある…
矛盾するが、そんな気持ちがある…
そして、
…貧乏人が金持ちと結婚しても、うまくいった実例があるはずだ!…
と、考える…
実に、自分勝手に考える…
実に、自分に都合がいいように、考える…
しかしながら、それが、人間かも、しれない…
仮に、百件あって、ただ一つの成功例だとしても、自分も、同じようになれると、考える…
実に、自分に都合よく考える…
が、
心の底から、そう思うことはできない…
さすがに、この年齢で、そう思うことはできない…
あるいは、年齢は関係ないかも、しれない…
仮に、頭が、悪くなくても、常に、自分に、都合よく考えるものが、いるものだ…
私は、以前、仕事で、そんな人間と出会ったことがある…
学歴は、立派…
肩書も、立派…
話す話も、立派…
知性を感じる…
が、
しかしながら、仕事がまったくといっていいほど、できない…
しかも、仕事が、まったくできないにも、かかわらず、本人は、それに、気付いていない…
どうして、気付かないのか?
最初は、それが、謎だった…
大きな謎だった…
しかしながら、ずっと見ていると、気付いた…
要するに、自分に甘いのだ…
とんでもなく、甘いのだ…
だから、できなくても、構わないと、考える…
そういうことだ…
ならば、なぜ、肩書があるのか?
それは、会社が、小さいから…
ハッキリ言えば、チンケだからだ(爆笑)…
それなりの学歴がある人間は、そんなチンケな会社に入って来ないからだ…
だから、出世できる…
だから、肩書を得ることができる…
そういうことだ…
そして、それを見て、驚いたことは、自分を客観的に、見れるか、否かに、学歴は関係ないということだ…
学歴=頭の良し悪しは、関係ないと、いうことだ…
これが、例えば、偏差値40の高校を出ていればいい…
偏差値40だから、頭が悪いから、わからないだろうと、考える…
しかしながら、それが、偏差値70の高校を出ていれば、どうか?
なぜ、そんなに、頭がいいのに、そんなことも、わからないのか?
考え込んでしまう…
もちろん、人間だから、得手不得手がある…
偏差値40でも、偏差値70の人間に勝てる分野もある…
が、
それと、できる、できないが、わからないのは、別だ…
これは、小学生でも、わかることだからだ…
私は、そんなことを、考えた…
私は、そんなことを、思い出した…
そして、もし、そんな人間が、今、私と同じ立場なら、どうだろう?
おそらく、簡単に、米倉正造と、自分は、結婚できると、考えるはずだ…
そこに、露ほどの疑問はないはずだ(爆笑)…
そして、そんなことを、思うと、そんな人間が、羨ましいと、思った…
おそらく、そんな人間は、なんでも、実に、自分に都合よく考える…
自分に都合のよい未来を考える…
きっと、そんな人間なら、今の私の立場なら、正造と結婚して、どんな新居に住もうとか?
子供は、やはり、慶応の幼稚舎が、いいか?
あるいは、
青山か?
などと、考えているのだろう…
しかしながら、さすがに、自分には、そんなことはできない…
そんな自分に都合のよい未来を思い描くことなど、できない…
そう、思った(爆笑)…




