恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 19
が、
以外にも、そんな透の意思を評価したのは、米倉との合併に猛烈に反対する、父の良平だった…
子供の頃から、周囲に馴染むため、自分を殺して、生きてきた、透が、初めて、自分の意思を見せたと、思ったのだ…
それゆえ、嬉しかった…
経営者としては、米倉との合併には、断固、反対だが、好子を好きだから、好子を守るため、水野との合併を破談にするのに、反対する透の姿が、嬉しかったのだ…
おそらく、その胸中は、複雑だったに違いない…
が、
結局、米倉と水野は、合併した…
調査の結果、米倉の負債が、当初、思っていたよりも、少ないのが、一番の原因だった…
そして、当然のことながら、二人は、結婚…
米倉を代表する好子さんが、水野財閥後継者の透と、結婚する…
それは、米倉と水野の合併の象徴だった…
なにより、二人が、結婚することで、周囲の雑音を黙らせることが、できる…
雑音というのは、米倉と水野の合併に反対するもの…
倒産寸前の米倉の側に、水野との合併に反対するものは、いないだろう…
内心、複雑なものは、あるかも、しれないが、会社が、倒産するよりも、ましだからだ…
会社が倒産すれば、当然、他社に転職しなければ、ならないが、必ずしも、転職が、うまくいくとも、限らない…
社員の中には、路頭に迷うものも、出るかかも、しれない…
子供では、ないのだから、そう考えるのが、当然だ…
だから、米倉の側の人間で、水野との合併に反対するものは、皆無だろう…
皆無=誰もいないだろう…
が、
一方の水野は、違う…
米倉と合併することで、借金まみれの米倉を背負うことになるからだ…
だから、当然、水野の中には、米倉との合併に反対するものも、出てくる…
が、
しかし、だ…
経営者の一族同士が、結婚するとなれば、その反対の声も収まる…
なにより、米倉も、水野も、オーナー企業…
一族が、株を持っている…
だから、一般の会社より、社長の力が強い…
社長一族の力が強い…
その米倉と水野の社長一族同士が、結婚するのだから、水野の側の社員も、表立って、文句を言うことは、できなかった…
不満は、あるだろうが、文句を言うことは、できなかった…
しかしながら、合併はしたが、結局は、うまくいかなかった…
米倉と、水野の会社の社風が、水と油だったのだ…
互いの経営者同士は、仲が良かったが、社風は、全然違った…
これは、合併前には、まったく、気付かないことだった…
あるいは、関係者の中には、気付いているものもいたかも、しれないが、米倉の救済が、先決だった…
だから、あえて、知っていても、目をつぶったのかも、しれない…
が、
いざ、合併すると、その社風の違いが、出て、合併が、うまくいかなかった…
それは、ちょうど、お互いの性格があまりわからないまま、結婚したのと、似ている…
会社の社風は、個人の性格と似ている…
わかりやすい例で、言えば、おとなしいのか、イケイケなのか?
まじめなのか?
ヤンキー系なのか?
至極、単純に言えば、そんな感じだ…
となれば、当然、同じような業務でも、仕事の進め方が、違う…
だから、当たり前だが、戸惑うし、両社の社員の軋轢を生む…
その結果、こんなことなら、合併なんか、しなければ、よかった!…
となる…
当たり前だ…
そんなことが、起こり始めたとき、偶然にも、米倉の系列の子会社で、予想外の資産があることが、判明した…
エネルギー関連で、事前に、購入していた先物取引の物資の価格が、ロシア・ウクライナ戦争を契機に、予想外に高くなり、莫大な利益を生んだことが、わかった…
なにより、その利益で、米倉を救うことが、できることが、わかった…
その莫大な利益が、米倉の負債を帳消しにすることが、できると、わかったのだ…
それゆえ、その存在がわかって、まもなく、米倉と水野の合併は、解消…
元に、戻った…
さらには、好子さんと、透の結婚も、解消した…
ずばり、離婚した…
二人は、幼馴染だが、いざ結婚すると、うまくいかないことがわかったのだ…
これも当たり前…
いくら幼馴染とはいっても、結婚して、夫婦になるのとは、違う…
いっしょに生活すれば、互いに譲れないものも、出てくるに、違いないからだ…
なにより、いくら、幼馴染で、子供の頃から、知っていても、夫婦になるのとは、違うものだ…
互いの生活習慣や、互いの価値観など、違うものだからだ…
だから、うまくいかなくなる…
これも、当たり前だった…
仮に、兄妹同様に、育ち、いっしょの家に、住んでいれば、これもまた、違ったかも、しれない…
幼馴染ではなく、兄妹、あるいは、姉弟同様に育ったなら、違っていたかも、しれない…
なぜなら、一つ屋根の下、いっしょに、生活するからだ…
だから、互いに、外で、見せない顔を知っている…
どんなに、仲の良い、友人や、恋人でも、知らない素顔を知っている…
いっしょに、暮らしているから、知っている…
が、
それでは、互いに、結婚は、できないかも、しれない…
なぜなら、互いに秘密が、ないからだ…
互いに、神秘性がないからだ…
だから、できない…
なにより、ひとつ屋根の下にいっしょに、育てば、それは、兄妹、あるいは、姉弟同様だ…
誰もが、きょうだいと、結婚したい、きょうだいは、いない…
そういうことだ…
あくまで、相手のことが、わからないから、いい…
だから、大げさに言えば、妄想できる…
彼、あるいは、彼女は、どんな生活をしているのか?
妄想できる…
だから、恋ができる…
大げさに言えば、妄想=恋だ…
互いに、知らない部分があるのが、いい…
きょうだいのように、いっしょに、育てば、互いに、知らない部分は、ないから、恋は、生まれないからだ…
ただ、もし、互いに、きょうだいのように、育てば、互いが、どんな人間か、知っているから、結婚した後、
「…エッ? こんなひとだったの?…」
とは、ならない…
互いに、すべてを知っているとまでは、いわないが、たいがいのことは、知っているからだ…
だから、結婚したとしても、
「…エッ? こんなひとだったの?…」
とは、ならない…
もちろん、すべてを知っているわけではないから、想定外のこともあるに違いない…
が、
仮に、そんな事態になっても、
「…それは、親も知らないことだった…実の親でも、知らないことだったから、仕方がない…」
とでも、なるのでは、ないか?
実の親が、知らないのだから、いっしょに住んでいるきょうだいも知らない…
だから、仕方がないと、なる…
実の親でも、息子や娘の知らない部分は、あるからだ…
とりわけ、異性の好みなど、この典型…
食べ物の好き嫌いではないから、子供の頃は、わからないし、中学生など思春期になって、初めて、どんな異性が、好きか?
わかるが、それでも、親も、知らないことは、あるからだ…
だから、わからない(苦笑)…
私ごとになるが、この高見ちづるなど、その典型…
これまで、33年、生きてきて、好きになった男もいないから、両親も、私が、どんな男が、好みなのか?
わからないに違いない…
なにより、男友達を一度も、家に連れてきたこともないから、わからないに違いない…
いわば、謎…
最大の謎に違いないからだ(苦笑)…
まあ、私のことは、横に置いておいても、つまりは、いくら幼馴染でも、互いに、きょうだいのように、一つ屋根の下で、育ったわけではないから、わからない部分はある…
だから、離婚しても、仕方がない…
米倉好子と、水野透は、離婚しても、仕方がない…
そう言いたかったのだ…
が、
しかしながら、私が、テレビ画面で、水野透を、見て、そんなことを、考えている間に、水野透の顔は、テレビ画面から、消えた…
きっと、水野透に、関する、なにかの、報道を報じていたが、それが、終わったのだろう…
その報道が、なにか、知りたいが、同時に、知っても、仕方がないとも、思った…
もはや、私は、透とは、なんの関係もないからだ…
いや、
なんの関係もないまでは、言えないかも、しれない…
なぜなら、今の会社は、透の父、良平の紹介で、転職した…
前の会社、金崎実業で、色々あって、私は、居づらくなってしまった…
大学を卒業して、33歳の、つい、最近まで、勤めていた会社だが、居づらくなってしまい、辞めるしか、なくなってしまった…
そして、それを知った、良平が、私を、不憫に思い、今の会社を紹介した…
水野グループの会社を私に紹介した…
実は、私が、前に勤めていた会社、金崎実業を辞める原因は、良平にあった…
いや、
厳密には、良平の妻、春子にあった…
だから、それを知った良平は、私に申し訳ないと、思ったのだろう…
それゆえ、水野グループの今の会社を私に紹介したのだろう…
そういうことだ…
が、
しかしながら、透とは、会っていない…
良平の息子、透とは、会っていない…
また、良平には、申し訳ないが、透と、会いたいとも、思わない…
その理由は、簡単…
透を、好きではなくなったからだ…
繰り返すが、私は、ひょうきん者の透が好きだった…
事実、私が、最初、会った透は、ひょうきん者だった…
が、
ひとを笑わせることができると、同時に、他人に対する配慮が、できる男でもあった…
だから、惹かれた…
透に惹かれた…
しかしながら、それは、仮面…
実際の透は、違った…
計算高い冷徹な男だった…
そして、それが、わかると、私は、途端に、透に、興味がなくなった…
子供では、ないのだから、私と同じくらいの年齢の、三十歳前後の男が、ただのひょうきん者であるはずがない…
まして、透は、大金持ちの子息…
水野財閥の後継者だ…
そんな男が、ただのひょうきん者であるはずがない…
当たり前のことだった…
誰が考えても、わかる当たり前のことだったのだ…
しかしながら、それを念頭に置いても、嫌だった…
最初、会ったときと、印象の違う透が、嫌だった…
受け入れられない…
それが、正直な私の気持ちだった…
私、高見ちづるの、気持ちだった…




