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恋かもしれない 恋愛偏差値ゼロ 第3部  作者: トモサン


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124/128

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 124

…なにを、証拠に?…」


米沢京子が、言う…


 明らかに、動揺した様子で、言う…


 が、


 正造は、淡々とした口調で、


 「…証拠は、前沢と言う男だ…」


 と、断言した…


 「…前沢さん?…」


 思わず、私の口を突いて、出た…


 あまりにも、意外な名前だった…


 会社の金を、横領した疑いで、一度は、逮捕された前沢…


 なにより、私の勤務するM商会の前営業所長…


 船見さんと、不倫していて、その船見さんに、会社の金を横領していると、罪を着せられて、逮捕された…


 しかしながら、それは、船見さんに、かけられた濡れ衣だと、わかり、警察から、釈放された…


 が、


 その後、どこで、どうしているか、わからない…


 M商会を、辞めたか、どうかも、わからない…


 同じ営業所の人間も、誰一人、前沢が、警察から、釈放された後、どこで、なにを、しているか、わからない…


 だから、私も、前沢のことは、すっかり、忘れていた(苦笑)…


 しかし、その前沢の名前が、ここで、出るとは?


 思いも、しなかった…


 まったく、考えも、しなかった…


 「…前沢は、米倉にも、通じている、水野の中にいた、米倉のスパイだ…」


 「…スパイ?…」


 と、私。


 「…そうです…」


 と、正造。


 「…彼は、M商会の社員だが、米倉にも、通じていた…父の平造にも、通じていた…」


 「…ウソ?…」


 と、私。


 「…ホントです…」


 と、正造。


 「…彼は、転職組…水野のプロパーじゃない…大学を出て、いくつかの会社を、渡り歩いて、今のM商会に、転職した…」


 私は、正造の言葉を聞いて、思い出した…


 たしか、以前、前沢は、私と二人きりで、食事をして、同じことを、言っていた…


 自分は、高見さんと、同じ転職組だと、言っていた…


 それゆえ、水野グループのことが、よくわからないとも、ぼやいていた…


 水野グループの仕組みが、よくわからないと、ぼやいていた…


 仕組みというのは、出世システム…


 出世システム=人事評価だ…


 いわゆる、出世するには、なにを基準に、評価するのか、わからない…


 どうすれば、出世できるのか、わからない…


 人事システムが、よくわからない…


 なにを、基準に評価するのか、わからない…


 そう、ぼやいていた…


 それを、今、思い出した…


 思い出したのだ…


 「…だから、狙われた…」


 「…狙われた? 誰に、狙われたんですか?…」


 「…水野の中で、米倉に通じた社員に狙われた?…」


 「…どういうことですか?…」


 「…スパイですよ…」


 「…スパイ?…」


 「…水野の情報を米倉に流した…」


 「…えっ?…」


 「…とりわけ、高見さんの情報を…」


 「…私の情報を? どうして、ですか?…」


 「…高見さんは、重要人物なんですよ…」


 「…重要人物? 私が? ですか?…」


 「…そうです…」


 正造が、真顔で言う…


 「…どうして、重要人物なんですか?…」


 「…水野グループ総帥の水野良平に気に入られている…その妻の春子おばさまにも…」


 「…」


 「…現に、今のM商会も、良平おじさまの紹介でしょ?…」


 「…ハイ…」


 「…世間に知られた大企業のオーナー社長が、一介の女性に、そこまで、しますか?…」


 「…」


 「…よほど、良平おじさまに、気に入られている証拠です…」


 「…」


 「…高見さんが、良平おじさまと、男女の関係があり、それで、おじさまが、高見さんを、優遇したのなら、わかります…ですが、そんなこと、ありえないでしょ?…」


 「…それは…」


 「…つまり、それほど、気に入られている証拠です…」


 「…」


 「…ですよね? 米沢さん?…」


 と、いきなり、正造が、隣にいる、米沢京子に話を振った…


 それまで、黙って、私と正造の話を聞いていた米沢京子は、驚いた…


 同時に、焦った…


 明らかに、焦って、気が動転していた…


 どう返答して、いいか、わからない状態だった…


 「…アナタもまた、父の平造に世話になっていたにも、かかわらず、良平おじさまに通じていますよね?…」


 いきなり、正造に、そんなことを、言われて、彼女は、どうして、いいか、わからない様子だった…


 明らかに、当惑していた…


 が、


 少し経って、


 「…私は、米倉報公会出身で…」


 と、だけ、言った…


 「…それは、わかっている…」


 正造が、短く言う…


 「…でも、それが、アナタの隠れ蓑にも、なっている…」


 「…隠れ蓑?…」


 と、米沢京子。


 「…そうです…」


 「…どうして、隠れ蓑なんですか?…」


 「…米倉報公会出身だから、決して、米倉を裏切らないと、思われている…」


 「…」


 「…でも、裏切った? 違いますか?…」


 「…それは…」


 「…裏切りましたよね?…」


 「…」


 「…なにを、裏切ったんですか?…」


 と、私は、口を挟んだ…


 「…彼女は、良平おじさまに、高見さんの動静を伝えていたんです…」


 「…えっ? ウソ?…」


 「…ホントです…」


 「…この彼女は、小説や映画で言う、二重スパイ…米倉にも、水野にも通じている、二重スパイ…」


 「…」


 「…いや、それだけではない…」


 「…どういうことですか?…」


 「…前沢というひとを、はめたことにも、彼女は、関係している…」


 「…えっ?…」


 「…前沢というひとに、道を誤らせたのは、この彼女ですよ…」


 「…ウソ?…」


 「…ウソじゃ、ありません…」


 「…ですよね?…」


 正造が、隣の米沢京子に、聞く…


 が、


 当然のことながら、米沢京子は、否定した…


 「…証拠は? …証拠は、あるんですか?…」


 と、言って、否定した…


 「…証拠ですか?…」


 正造が、穏やかに、言う…


 「…そうです…」


 と、米沢京子。


 「…証拠は、前沢という男の証言ですよ…」


 「…証言…」


 「…今、言った、前沢という男…彼を寝返らせた…ぶっちゃけ、米倉のスパイにしたのは、アナタでしょ?…」


 正造が、仰天することを、言った…


 私が、思っても、みないこと…


 私が、考えても、みないことを、言った…


 「…なにを、根拠に?…」


 「…前沢というひとが、警察を、釈放されて、父に助けを求めたからですよ…」


 「…お父様に助け?…」


 と、私。


 「…米倉のスパイになって、父に報告していたのだから、ある意味、当たり前です…」


 「…」


 「…彼女、米沢さんは、前沢さんの弱みを掴んだ…」


 「…弱み? …なにが、弱みなんですか?…」


 と、私。


 「…前沢というひとが、転職者だという弱みですよ…」


 「…えっ?…」


 と、私。


 「…とりわけ、基本、水野は、純血主義といえば、いいのか、中途入社の社員は、いるが、あまり多くない…さらに、中途入社では、水野では、出世が、難しい…その弱みを、掴んで、前沢に接触した…違いますか?…」


 正造が、隣の米沢京子に、聞いた…


 が、


 米沢京子は、答えない…


 「…」


 と、黙ったままだった…


 私は、唖然とした…


 まさに、思っても、みない展開だった…


 これまで、予想もしない展開だった…


 そして、それは、おそらく、この米沢京子にとっても、そう…


 この米沢京子にとっても、同じだったに違いない…


 「…そして、この彼女が原因で、あの前沢という男は、不倫相手に、横領の罪を着せられた…」


 「…どういうことですか?…」


 と、私。


 「…この米沢京子さんと、前沢さんの仲を、前沢さんの不倫相手が、疑った…そういうことです…」


 「…ウソ?…」


 「…ホントです…」


 「…彼女は、この通り、色っぽい…そんな彼女と、親しくしている姿を見れば、前沢の不倫相手が、疑うのが、当然です…」


 正造が、断言した…


 私は、その言葉で、あらためて、目の前の米沢京子を、見た…


 マジマジと、見た…


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