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恋かもしれない 恋愛偏差値ゼロ 第3部  作者: トモサン


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121/128

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 121

私は、驚いた…


 まさか、今、ここで、透(とおる)の姿を、見るとは、思わなかったからだ…


 まさに、まさか、だ…


 なにしろ、今、透(とおる)のことを、考えていた最中だ…


 まさに、グッドタイミング…


 願ってもない、グッドタイミングだった(笑)…


 そして、テレビに透(とおる)の顔は映っていたが、本人の姿はなかった…


 透(とおる)の姿を映している番組は、ニュース番組…


 しかも、経済ニュースだった…


 私は、全神経を集中して、テレビの画面に釘付けになった…


 ニュースでは、水野グループとサウジアラビア政府との共同プロジェクトを扱っていた…


 そして、その内容は、と言えば、やはり、プロジェクトの延期、あるいは、中止という話だった…


 水野グループの関係者が、漏らしたところによると、社内でも、反対意見が多く、とても、プロジェクトを行える状況ではないと、いうことだった…


 「…というと、中止ですか?…」


 テレビの女性キャスターが質問する…


 「…まあ、そうでしょう…中止でなければ、延期…」


 と、メインの男性キャスター。


 「…延期ですか? だったら、いつ、やるんですか?…」


 と、女性キャスター。


 「…いや、やらないでしょ…」


 と、男性キャスター。


 「…やらない? だったら、それは、中止でしょ?…」


 と、女性キャスター。


 「…それが、そうですが、建て前というか、面子でしょうね…」


 「…面子?…」


 「…ほら、出版業界で、あるでしょ? 雑誌が、廃刊ではなく、休刊…」


 「…どういうことですか?…」


 「…休刊なら、いずれは、再び、その雑誌を発行するでしょ? なにしろ、雑誌の発行を、いっとき、休むだけですから…でも、大抵、それはない…二度とその雑誌を発行することはない…でも、それでは、世間体が悪い…だから、休刊という形にする…いったん、休むという形にする…でも、実際は、廃刊と同じ…二度と、その雑誌は、発行しない…」


 「…それと、水野グループの今回の件と同じだと?…」


 「…たぶん、そうでしょう…延期は、名目…おそらく、二度とやらない…社内に反対が、多ければ、できないでしょ? しかも、発表したのが、いかに水野グループの後継者でも、こう言っちゃ、悪いが、三十そこそこの若造ですよ…とても、社内の反対派を抑えられないでしょ?…」


 「…それは、そうですね…あの若さでは…」


 「…下手にプロジェクトを推進すれば、社内が、ガタガタになりますよ…」


 「…ガタガですか?…」


 「…そうですよ…それに、水野には敵がいる…」


 「…敵?…」


 「…五井ですよ…」


 「…五井?…」


 「…まあ、ここでは、さすがに言えませんが、五井のトップの女性と水野のトップの女性が、仲が悪い…」


 「…どうして、仲が悪いんですか?…」


 「…それは、ボクの口からは、ちょっと…ただ、昔、その女性たちが、若い頃に、私生活で、なにやら、ゴタゴタがあったそうですよ…」


 「…私生活で、ゴタゴタ? なんですか、それ? まさか、同じ男を取り合ったとか?…」


 「…どうして、そう思うんですか?…」


 と、慌てる、男性キャスター。


 「…だって、若い女同士のゴタゴタの原因なんて、大抵、それですよ…大抵、男がらみ…」


 「…まあ、それは、よくわかりませんが、やはり、公共の電波に乗せるようなことでは、ありませんので…この話題は、これで、終わりにしましょう…」


 「…それって、私の今の発言が、正しいって、ことですか?…」


 「…それは、言いません…とにかく、この話題は、終了…次のニュースに移りましょう…」


 と、言って、男性キャスターが、強引に話題を変えた…


 私は、それを、見て、危うく、


 「…プッ!…」


 と、吹き出すところだった…


 まさに、的を得た発言だったからだ…


 これは、おそらく、事前に打ち合わせたのだろうか?


 男女のキャスターが、事前に打ち合わせて、言ったのだろうか?


 考えた…


 笑い話にしているが、これは、明らかに、わざと、言っていると、見て、いい…


 水野春子と諏訪野和子をわざと、あてこすっていると、言っていい…


 二人とも、財界に名が知れている…


 なにより、水野も五井もテレビに広告を出している…


 テレビのスポンサーだ…


 それゆえ、テレビの放送で言えるのは、これが、限度…


 これが、限界だ…


 それ以上は、できない…


 それ以上、この話題に触れることは、できない…


 アンタッチャブルな存在だ…


 だから、それを、知って、わざと、笑いにした?


 わざと、笑いにして、ほのめかして、終わられせた?…


 そう、思った…


 いわば、ギリギリを、狙った…


 そう、思ったのだ…


 そして、私が、そう、思っている間に、次のニュースに移った…


 私は、慌てて、テレビのリモコンで、他の番組に変えたが、透(とおる)を扱っているニュース番組は、なかった…


 それゆえ、スマホか、パソコンで、検索して、透(とおる)の話題を探そうとも、思ったが、止めた…


 どうせ、ネットに載っているのは、今、見たテレビのニュースと同じ内容に決まっているからだ…


 それゆえ、ネットを見るのは、止めた…


 しかし、


 しかし、だ…


 まさか、こうも、こちらが、思った通りになるとは、思わなかった…


 夢にも、思わなかった…


 まさに、まさか、だ…


 こちらの予想通りの展開になってきた(笑)…


 が、


 当然、このままでは、いかないだろう…


 なぜ、いかないのか?


 それは、父子の隔絶…


 おそらく、今回の騒動は、事前に、良平には、知らされていない…


 透(とおる)の独断だろう…


 いや、


 透(とおる)の独断では、ないかも、しれない…


 現に、透(とおる)の背後には、平造がいる…


 正造の父である、米倉平造がいる…


 あの米倉平造が、透(とおる)が、突如、ぶち上げた水野とサウジアラビア政府と共同プロジェクトの背後にいたと、正造が、言っていた…


 そして、それに、五井が、一枚、嚙んでいる…


 五井の諏訪野和子が、一枚噛んでいる…


 そういうことだ…


 しかし、


 しかし、だ…


 ここまで、考えて、今、気付いた…


 透(とおる)が、もし、最初から、水野が、サウジアラビア政府と共同プロジェクトをやると、立ち上げて、実際は、それを、名目にして、水野の再編と、リストラをするのが、目的だったとしたら、透(とおる)は、米倉平造も、諏訪野和子も出し抜いたことになる…


 米倉平造と諏訪野和子をうまく、利用したことになる…


 つまりは、最初から、二人を利用したことになる…


 だとすれば、大物…


 透(とおる)は、大物となる…


 もの凄い才能の持ち主となる(苦笑)…


 なにより、海千山千の二人を手玉に取ったのだ…


 自分の親世代の老練な経営者を手玉に取ったのだ…


 もし、これが、透(とおる)一人で、考えたことなら、十分に、水野の後継者たりえる…


 十分、水野の後継者の資格がある…


 才能が、あることが、水野の社内のみならず、社外にも、伝わるだろう…


 十分に、水野の次期後継者にふさわしい実力の持ち主と、伝わるだろう…


 と、ここまで、考えて、気付いた…


 まさか、これが、目的?


 水野がサウジアラビア政府と共同プロジェクトをすると、言って、実際は、水野グループの再編…あるいは、リストラをする…


 それが、透(とおる)の手柄になり、今回の件で、透(とおる)の名前が、世間に知られるのが、目的…


 そう、思った…


 そう、気付いた…


 そして、それが、真の目的ならば、やはり、裏があるに違いない…


 まさか、これを透(とおる)一人で、考えたわけでは、あるまい…


 誰か、透(とおる)に知恵をつけた人間がいるはずだ…


 まさか、正造?


 米倉正造が、知恵をつけた?


 米倉正造が、透(とおる)に、教えた?


 まさか、そんなことは、あるまい…


 が、


 それを、否定もできない…


 否定も、肯定も、できない…


 証拠が、なにも、ないからだ…


 だから、答えは、出ない…


 私は、そう、思った…


 そう、思ったのだ…


 

 が、


 その後、事態は、急展開した…


 たしかに、水野グループはリストラを実施した…


 リストラ=事業の再編をすると、世間に、発表した…


 が、


 世間に発表した=記者会見を開いたのは、透(とおる)では、なかった…


 まったく、見知らぬ人物だった…


 と、同時に、私の勤務する、M商会の営業所の統廃合も、M商会の社内で、発表されたが、そこに、私の勤務する営業所は、含まれてなかった…


 M商会の統廃合は、記者会見も、なにも、しなかったのは、M商会が、世間では、まったくの無名な会社だったからだ…


 だから、記者会見も、なにも、しなかった…


 まして、水野グループの再編のときも、言及しなかった…


 世間では、まったく、無名の会社だったので、当然と言えば、当然だった…


 ハッキリ言えば、水野グループの再編のときも、あえて、触れる必要のない、チンケな会社だったからだ(苦笑)…


 こんなことを、言うと、私をM商会に入社させてくれた、水野良平には、失礼だが、事実だった…


 水野良平が、私のために、水野グループ内で、就職先を探してくれて、私は、今のM商会に、転職したが、水野グループは、それほど、大きくはない…


 私の実家から、通える、範囲の会社を、水野グループの中で、探したから、今のM商会に転職した…


 そういうことだからだ…


 だから、会社は、選べない…


 だが、今回、M商会の営業所の統廃合が、社内で、発表されたときに、私が通う営業所が、統廃合の候補に入っていないのは、やはり、水野良平が、事前に、私に配慮してくれたのかも、しれなかった…


 事前に、M商会の営業所の統廃合の営業所を調べて、統廃合に含まれない営業所を、紹介してくれたのかも、しれなかった…


 が、


 真実は、わからない…


 真相は、わからない…


 ただ、私の勤務する営業所は、M商会の営業所の統廃合からは、外れていた…


 それが、真実…


 それだけが、私のわかる真実だった…


 ただ、営業所の統廃合から、私の勤務する営業所が、外れたことで、営業所の誰もが、歓喜した…


 おおげさではなく、歓喜した…


 これで、ひとまず、リストラからは、逃れられると、誰もが、思ったからだ…


 だから、歓喜した…


 当たり前だった…


 誰しも、歓喜した…


 これから、職探しをしなくて、いいからだ…


 そして、それは、私も同じだった…


 私、高見ちづるも、同じだった…


 転職して、まだ一か月も経たないで、再び、転職活動をするのは、正直、しんどい…


 しんどい=心が折れる、だ…


 だから、ホッとした…


 心底、ホッとした…


 正直、このM商会には、まだ馴染めていない…


 しかしながら、これから、転職活動をするのは、もっと、しんどい…


 そして、仮に、すぐに、次の転職先が決まっても、その会社に馴染めるかどうかは、わからない…


 率直に言って、今いる、M商会の方が、居心地がよかったと、思えるかも、しれない…


 そして、それは、転職してみなければ、わからない…


 そんなことを、考えると、以前、勤めていた金崎実業は、たまたま、自分に合っていたんだろう…


 つくづく、思った…


 正直、いたときは、そんなことは、思わなかった…


 そんなことは、露ほども、思わなかった…


 なにしろ、十年超、いた会社だ…


 ホントに、嫌なら、すぐに、退職したはずだ…


 これも、すでに、何度も書いたが、私も、学生時代は、それなりに、バイトをした…


 世間を知るためだ…


 社会を知るためだ…


 その中には、一日で、逃げ出したところもある(爆笑)…


 自分に合わなかったからだ…


 それに、比べれば、今のM商会は、たいしたことはない…


 自分に合うか、合わないかは、まだ、わからない…


 ただ、簡単には、辞められない…


 なにしろ、水野グループのトップの推薦で、決まった会社だ…


 おいそれと、辞められるわけはない…


 そう、考えた…


 そう、考えたのだ…


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