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恋かもしれない 恋愛偏差値ゼロ 第3部  作者: トモサン


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120/128

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 120

家に着いても、気分が、重いままだった…


 気分が晴れなかった…


 相変わらず、気分は、曇り空のように、どんよりとしていた…


 当たり前だった…


 自分が、転職したばかりの会社で、再びリストラの危機に晒されているのだ…


 再び、リストラされようとしているのだ…


 これで、気分が、落ち込んでなければ、おかしい…


 気分が落ち込んでなければ、まともな人間ではない…


 そう、思った…


 しかし、


 しかし、だ…


 やはり、今回の騒動の原因は、透(とおる)…


 水野グループ次期後継者、水野透(とおる)の父親の良平との確執が原因なんだろうか?


 そう、思った…


 そう、考えた…


 なにより、私の勤務する営業所の閉鎖が、あらかじめ、決まっていれば、良平は、私に閉鎖を予定している営業所に、入社はさせなかっただろう…


 ということは、どうだ?


 仮に、透(とおる)の真の目的が、水野グループの再編にあるのだとしても、父の良平は、それを、知らなかった?


 あるいは、知っていたとしても、それが、今回、水野グループが、サウジアラビア政府と共同プロジェクトを推進すると、いった、真の目的だと、知らなかった…


 あるいは、気付いていなかった?…


 そもそも、透(とおる)が、サウジアラビア政府と共同プロジェクトを隠れ蓑にして、水野グループの再編を目論んでいることを、知らなかったということだろうか?


 私は、考えた…


 そして、そんな大事なことを知らないなんて、ことは、あるのだろうか?


 そう、考えた…


 いや、


 あるかも、しれない…


 元々、父子の仲は、決して、良くはない…


 だから、仮に、何年も前から、水野グループの再編の構想が、良平や透(とおる)の間で話題になっていたとしても、まさか、今回、サウジアラビア政府と共同プロジェクトを推進する名目で、水野グループの再編=リストラをするとは、夢にも思っていなかった可能性がある…


 私は、考えた…


 だから、仮に、水野グループの再編=リストラが透(とおる)と、良平の間で、以前から、暗黙の了解であったとしても、まさか、今回、サウジアラビア政府と共同プロジェクトを、名目にして、リストラを強行するとは、思ってもいなかった可能性がある…


 そう、考えた…


 つまり、結局は、おそらく、二人の間のコミュニケーション不足…


 透(とおる)と、良平の間で、意思の疎通が、図れていない…


 それが、今回の問題の遠因になるのでは?


 そう、思った…


 そう、考えた…


 しかし、


 しかし、だ…


 どうして、そんな大層なことに、私が巻き込まれるんだろうか?


 私、高見ちづるが、巻き込まれるのだろうか?


 つくづく、不運…


 つくづく、運がない…


 そう、思った…


 この平凡な高見ちづるが、なんで、そんな大層なことに、巻き込まれるのか?


 考えてみれば、不思議…


 不思議だ…


 いや、


 不思議では、ない…


 元はと、言えば、正造…


 米倉正造のせいだ…


 あの米倉正造と出会ったせいだ…


 あの米倉正造が、私と出会って、私を利用しようとした…


 そのせいだ…


 私が、正造の血の繋がっていない妹の好子さんと、ルックスが、似ているから、利用しようとした…


 そのせいだ…


 それゆえ、私は、それ、以来、あの米倉一族と知り合い、付き合うようになった…


 あの米倉一族を中心に、あの水野の一族とも、付き合うようになった…


 米倉家と、水野家が、仲が良かったからだ…


 米倉家の当主の平造と、水野家の当主の良平が、仲が良かったからだ…


 無二の親友だったからだ…


 それゆえ、私も、水野家の人間と知り合った…


 水野家の次期後継者の透(とおる)とも、知り合った…


 透(とおる)は、軽い男だった…


 見るからに、軽い男だった(笑)…


 いつも、おちゃらけて、ピエロを演じている、軽い男だった…


 そして、なぜ、透(とおる)は、ピエロを演じるのか?


 それは。透(とおる)の生い立ちにあった…


 透(とおる)は、愛人の子供…


 父の良平の本妻の子供ではない…


 良平は、本妻の春子との間に子供はいなかった…


 子供はできなかった…


 それゆえ、透(とおる)は、良平と愛人の間にできた子供であるにも、かかわらず、良平の跡取りとして、水野家に入った…


 将来の水野の後継者として、入った…


 が、


 いかに、子供とはいえ、すぐに、水野家に馴染めるわけはない…


 まだ、子供だった透(とおる)は、子供ながら、どうやったら、水野家に馴染めるか、考え、その結果、ピエロを、演じることにした…


 ピエロ=道化師を演じることにした…


 その方が、簡単に周囲に馴染めるからだ…


 そして、それが、習い性になったのか、どうかは、わからないが、透(とおる)は、いつも、軽い男だった…


 大人になっても、威厳など、まるでない…


 威厳など、無縁の男だった…


 それゆえ、おそらく、周囲から、軽く見られていたに違いない…


 そう言えば、今回、透(とおる)が、サウジアラビア政府と共同プロジェクトを立ち上げると発表したときに、今のM商会の会社の女子社員は、透(とおる)が、五井に対抗しようとしたのでは? 


 と、言った…


 なぜなら、その直近の日に、好子さんが、五井の若き当主、諏訪野伸明と、いっしょにいるところを、写真週刊誌に撮られたからだ…


 好子さんが、私に語ったところに、よると、諏訪野伸明と会って、米倉=大日産業に融資して、もらおうと、思ったそうだ…


 しかしながら、まったく相手にしてもらえなかったと、笑っていた(苦笑)…


 米倉=大日産業は、経営危機から、立ち直ったが、まだ、再建途上…


 人間で、言えば、病み上がりの状態…


 それゆえ、融資が必要…


 融資=資金が必要だ…


 その資金を、好子さんは、五井から調達したかったと、私に告白した…


 が、


 それが、いけなかった…


 なにが、いけなかったのか?

 

 好子さんが、諏訪野伸明といっしょに、いるところを、写真週刊誌に撮られたことが、いけなかった…


 それを、見た、透(とおる)が、五井に対抗心を燃やした…


 五井=諏訪野伸明に対抗心を燃やした…


 その結果、透(とおる)は、水野が、サウジアラビア政府と共同プロジェクトをすると、記者会見を開いたのでは?


 そう、M商会の女子社員が推測した…


 透(とおる)は、好子さんと、結婚して、半年も経たないで、離婚したが、憎みあって、離婚したのでも、なんでもない…


 なにより、透(とおる)と、好子さんは、幼馴染…


 子供の頃から、知っている…


 それゆえ、余計に、透(とおる)が、五井の若き当主、諏訪野伸明に対抗心を、燃やしても、おかしくはない…


 そう、思った…


 それゆえ、透(とおる)が、五井に負けじと、水野が、サウジアラビア政府と共同プロジェクトをやると言った…


 そう、言って笑った、M商会の女子社員の見立ても、まんざら、外れているわけでもないのかも、しれない…


 誰しも、離婚した元の夫婦が、どんなパートナーと、いっしょになったか、気になるものだ…


 しかも、それが、大々的に、写真週刊誌に載れば、気にならないわけは、ないからだ…


 私は、考えた…


 だから、もしかしたら、それも、影響したのかも、しれない…


 仮に、水野がサウジアラビア政府と共同プロジェクトをやると、宣言したのが、ブラフ=ハッタリだとしても、水野も、五井に負けないと、対抗心を示したのかも、しれない…


 水野=透(とおる)も、五井=諏訪野伸明に負けないと、対抗心を示したのかも、しれない…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 が、


 一方で、それは、ないか?


 とも、思った…


 なぜなら、水野と五井では、企業規模が、雲泥の差…


 比較にならない…


 相手にならない…


 その差は、まるで、大人と子供の差…


 相撲で言えば、横綱と、幕下以下…


 とても、十両にも、及ばない…


 だから、水野が、どう、あがいても、勝てる相手ではない…


 水野が、グループ全体を含めても、五井の一部門のような扱いだからだ…


 だから、とてもではないが、歯が立たない…


 とてもではないが、水野が、立ち向かえる相手ではない…


 しかし、


 しかし、だ…


 それでも、透(とおる)が、五井の諏訪野伸明に対抗心を燃やした可能性も、なきにしもあらず…


 それは、やはり、別れた元の妻であった好子さんが、あの諏訪野伸明と、密会報道があったから…


 所詮は、水野では、五井に、対抗するなど、できないことだが、それでも、やはり、対抗したい…


 古い言葉で言えば、一寸の虫にも五分の魂ありということか?


 そして、その原動力は、なにかと、言えば、嫉妬…


 透(とおる)の諏訪野伸明に対する嫉妬に他ならない…


 たとえ、勝てないまでも、一矢報いたい…


 そんなところか?


 これは、気持ちがわかる…


 透(とおる)の気持ちがわかる…


 やはり、別れた元の妻が、明らかに、自分より、レベルが、高い男と、交際報道があるのは、辛い…


 すでに、別れたのだから、元の奥さんが、誰と付き合おうが、構わないじゃないか?


 と、言いたいところだが、やはり、物事は、そう単純ではない(笑)…


 誰もが、簡単に割り切れるものでは、ないからだ…


 誰もが、どうしても、気になるものだからだ…


 どうしても、男女の別なく、別れたパートナーの新しいパートナーに、対抗心を抱くものだからだ…


 別れた当初は、


 「…あんな女…もう別れたんだから、どんな男と付き合おうが、オレには、関係ない…」


 とか、


 「…あんな男…誰と、結婚しようが、アタシには、関係ない…」


 と、誰もが、断言するが、その別れた元の夫や、元の妻が、再婚したりすれば、どんな相手と再婚したのか、気になるものだ…


 ただ、今回の好子さんと、諏訪野伸明のように、有名人でない限り、もはや、風の噂ですら、届かない場合もある…


 なぜなら、別れた後に、一切の交流がないからだ…


 別れた元の夫婦でも、お互いに、共通の知人や友人がいれば、いいが、それもない場合は、お互いの近況がわからない…


 まあ、昨今は、インスタ等のネットで、家族の写真などを、挙げているひともいるから、わかる場合もあるが、それは、ごく少数派に、過ぎない…


 まして、離婚して、元の夫婦が、まったく、違う地方に住んでいれば、一生会うこともないだろう…


 もはや、二度と顔を会わせることもないだろう…


 そう、思った…


 そして、そんなことを、思いながら、テレビのスイッチをつけた…


 もはや、答えの出ないことを、いくら考えても、仕方がないからだ…


 だから、テレビのスイッチをつけた…


 そして、テレビのリモコンで、あちこちのチャンネルを回した…


 すると、だ…


 と、あるチャンネルで、あろうことか、透(とおる)の姿が、映っていた…


 水野グループ次期後継者、水野透(とおる)の姿が、映っていた…


 間違いなく、透(とおる)の姿が、映っていた…


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