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恋かもしれない 恋愛偏差値ゼロ 第3部  作者: トモサン


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119/128

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 119

…えっ?…


 …前沢さん?…


 …どうして、ここで、いきなり、前沢さんの名前が出るんだろ?…


 私は、驚いた…


 また、そう、思ったのは、私だけでは、なかった…


 いっしょに、食事を取っている女子社員もいっしょだった…


 皆、一様に、驚いていた…


 「…ちょっと、どうして、ここで、いきなり、前沢さんの話を持ち出すわけ?…」


 私同様、疑問を持った他の女子社員が、聞いた…


 「…いえ、別に理由はないけど…」


 と、最初の女子社員…


 「…はっ? 理由がないなら、ここで、前沢さんの名前が、どうして、出てくるのよ…」


 「…それは?…」


 「…それは、なに?…」


 問い詰められた女性社員が、


 「…ここだけの話よ…」


 と、言って、喋り出した…


 「…なにが、ここだけの話なのよ…」


 「…前沢さん、船見さんと、不倫して、一度、警察に逮捕されたでしょ?…」


 「…でも、それは、濡れ衣で、実際は、船見さんが、会社のお金を使い込んでいたわけでしょ?…」


 「…それは、そうだけれども、私が、言いたいのは、違う…」


 「…なにが、違うの?…」


 「…前沢さんと船見さん、ホントに、不倫していたのかな?…」


 「…えっ? なんで? …なんで、突然、そんなこと、言うの?…」


 「…だって、二人を見ていて、とても、二人が、不倫をしているようには、見えなかったんだよね…」


 「…でも、前沢さんは。不倫を認めたわけでしょ?…」


 「…それは、そうだけれども…でも、二人が、不倫をしているようには、全然、見えなかった…みんなには、二人が、不倫をしているように、見えた?…」


 その質問には、誰も、答えなかった…


 誰もが、沈黙した…


 これは、彼女に言われる、今の今まで、気付かなかったが、たしかに、あの二人が、不倫をしているようには、見えなかった…


 私にも二人が不倫をしているようには、見えなかった…


 「…でも、前沢さんは。不倫を認めたわけでしょ?…」


 「…それよ…それ…前沢さんが、船見さんと、不倫をして、前沢さんが、別れ話を持ち出したから、会社の金を横領して、罪を前沢さんに、なすりつけたと、言われているけれども、どうにも、納得がいかないのよ…」


 「…納得がいかないって、どうして、納得がいかないの?…」


 「…だって、不倫していないのに、不倫をしていることを、認めて、しかも、横領の罪を着せられるなんて…」


 「…だったら、なんで、前沢さんは、横領の罪を一度は、認めたわけ?…」


 「…それよ、それ?…」


 「…それって?…」


 「…つまり、前沢さんが、ありもしない不倫や横領を認めた…これには、なにか、裏があると、思うのよ…」


 「…裏?…」


 「…そう、ぶっちゃけ、誰かに頼まれたとか?…」


 「…頼まれた? 誰に?…」


 「…それは、わからない…でも、そう考えれば、辻褄が合う…」


 「…どう、辻褄が合うの?…」


 「…だって、自分が、不倫もしていないし、会社の金も横領もしていないにも、関わらず、一度は、認めたわけでしょ? …だから、なにか、裏があるわけよ…」


 そう、言われると、たしかに変…


 変だった…


 横領は、ともかく、不倫は、そう…


 いかに、隠そうと、不倫をしていれば、二人の態度を見ていれば、なんとなく、気付くものだ…


 二人が、実は、親密な関係にあることに、気付くものだ…


 しかし、私は、わからなかった…


 少しも、わからなかった…


 そして、それは、おそらく、この場にいる、女子社員全員が、同じだった…


 二人が、不倫をしているようには、どうしても、見えなかったのだ…


 だが、どうして?


 二人が、不倫をしていなかったならば、どうして、前沢が、不倫を認めたのか?


 それが、謎だった…


 まして、横領も、そうだ…


 不倫は、犯罪ではないが、横領は、犯罪…


 罪になる…


 もし、前沢が、不倫も、横領もやっていないとなると、どうして、いっときでも、それを認めたのか?


 それが、わからなかった…


 それが、謎だった…


 が、


 当然、答えは、出ない…


 この場にいる、女子社員全員、誰もが、答えを、知らなかった…


 それゆえ、誰もが、黙り込んだ…


 沈黙が流れた…


 そして、いきなり、一人の女子社員が、


 「…私たち、一体、どうなるんだろ?…」


 と、口を開いた…


 ここにいる女子社員が、誰もが、思っていたこと…


 誰もが、心の中で、思っていたことだ…


 そして、思っては、いても、決して、口にしないことだった…


 口にしても、答えは、出ないからだ…


 「…そうね…一体、どうなるんだろうね?…」


 最初に口にした女子社員に、別の女子社員が、同調する…


 「…仕事、見つかるかな?…」


 別の女子社員が、口にすると、誰もが、沈黙した…


 答えられなかった…


 「…すぐに、見つかれば、いいけど…」


 と、さらに、別の女子社員が、口にする…


 「…ホントは、今の営業所が、閉鎖しなければ、いいことだけれど…」


 と、最初の女子社員…


 「…でも、人生、そんなに、自分の都合が良くは、いかないね…」


 これには、誰も、なにも、言わなかった…


 「…正直、この職場は、天国じゃないけれども、それほど、居心地も悪くない…」


 と、最初の女性社員…


 「…だから、なくなって、欲しくないね…」


 と言うと、誰も、なにも、言わなかった…


 言っても、仕方がないことだからだ…


 「…なにより、ぶっちゃけ、転職活動をするのが、嫌…」


 と、続ける…


 「…履歴書、持って、新卒の子じゃないんだから、会社回りなんて、したくない!…」


 これは、私も同意見だった…


 文系の大卒は、皆、自分で、会社を巡って、就職先を決める…


 大卒の理系は、大学の所属する研究室の教授の推薦で、企業に就職するものが、多いと聞くが、文系は、違う…


 それゆえ、十数年前の当時のように、履歴書を持って、会社回りをするのは、御免だった…


 当時、私の友人の中には、別の友人から、


 「…会社回りで、なにが、わかった?…」


 と、聞かれて、


 「…東京の地下鉄がわかった…」


 と、即答していた(笑)…


 彼女、いわく、会社回りで、あっちの会社、こっちの会社と、都内の地下鉄を使って、いろいろな場所に行ったから、地下鉄の乗り換えなどが、わかったそうだ…


 彼女も、東京出身で、大学も東京の大学に実家から、通っていたが、それまでは、都内に、それほど、詳しくはなかった…


 自分の住んでいる場所以外は、同じ都内でも、行く必要がないからだった…


 まさか、学生時代が、実家と大学の往復だけだったということは、ないだろうが、それでも、東京のさまざまな場所に行くことは、ないだろう…


 就職活動ゆえに、東京のさまざまな場所に行った…


 そういうことだろう…


 そして、そんな機会がなければ、普通は、東京に住んでいても、自分のテリトリーというか、それ以外の地域に行くことは、誰もが、あまりないことだからだ…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、そんなことを、考えている間に、食事は、終わった…


 食事は、会社の昼休みの時間を使って、会社近くの店で、食べるわけだから、いつまでも、いるわけには、いかない…


 それゆえ、会話の時間も、限られてくる…


 つまりは、長居はできないということだ…


 会社に戻って、午後は、仕事に打ち込んだ…


 率直に言って、気分は、グレーだった…


 気分は、グレー=どんよりとしていた…


 まるで、曇り空の天気のように、どんよりとしていた…


 仕事が終わって、会社を出て、家路についたときも、同じだった…


 一向に、気分が、晴れなかった…


 しかし、


 しかし、だ…


 私は、思った…


 営業所の統廃合と言っていたが、これは、事前に、水野良平は、知らなかったのだろうか?


 突然、気付いた…


 そして、すぐに、


 …やはり、知らなかったのだろう…


 と、思った…


 知っていれば、私に、今の営業所を紹介しなかっただろう…


 そう、思った…


 まさか、私を入社させて、一か月か、二か月で、私を入社させた営業所を閉鎖させないだろう…


 そう、考えた…


 すると、これは、やはり、父子の隔絶…


 良平と、透(とおる)父子の断絶なんだろうか?


 二人が、親密でないが、ゆえに、透(とおる)は、父の良平に、無断で、リストラを推し進めようとしているのだろうか?


 水野グループが、サウジアラビア政府との共同プロジェクトを、全力で、推し進めるという名目で、リストラに、着手する…


 それを、父の良平に、無断で、透(とおる)が、進めたのだろうか?


 考えた…


 たしかに、ありえない話ではない…


 十分にありえる話だ…


 いや、


 水野グループが、総力を挙げて、サウジアラビア政府と共同プロジェクトを推進するよりも、もっと、ありえる話だ…


 何度も、言うように、水野グループが、いかに、総力を挙げようと、サウジアラビア政府と共同プロジェクトをするなんて、役不足…


 とてもではないが、できない…


 そんなことが、できるのは、この日本では、三井や三菱や、住友、それに、五井ぐらいだ…


 五井


 あの五井…


 あの諏訪野伸明が、率いる五井…


 だが、その諏訪野伸明は、お飾りと言うか…


 五井の実権は、伸明の叔母の和子に握られているという…


 そして、その叔母の諏訪野和子は、水野グループ総帥の水野春子と、犬猿の仲…


 かつて、若き日に、同じ男を巡って、大げんかになり、それ以来の犬猿の仲だそうだ…


 そして、それを知らない者は、日本の財界で、皆無…


 ほとんど、いないそうだ…


 それぐらい有名だそうだ(爆笑)…


 そして、そんなことを、考えると、やはり、この水野のリストラにも、あの諏訪野和子が、絡んでいるのだろうか?


 五井の女帝が、絡んでいるのだろうか?


 ふと、気付いた…


 このリストラの話が出る前までは、あの五井の女帝が、透(とおる)を焚きつけて、サウジアラビア政府と共同プロジェクトを推進させたのでは?


 と、考えた…


 が、


 今では、水野が、サウジアラビア政府と共同プロジェクトをすると、発表したのは、ブラフ…


 ブラフ=ハッタリではないか?


 そう、思うようになった…


 もちろん、真実は、わからない…


 だが、いずれにしても、あの水野透(とおる)が、水野グループが、総力を挙げて、サウジアラビア政府と共同プロジェクトを推進するといった背後に、あの女傑の姿があっても、おかしくはない…


 あの女傑、諏訪野和子の姿が、あっても、おかしくはない…


 そう、思った…


 そう、思いながら、家に、向かった…


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