恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 116
「…それじゃ、高見さん、頼んだわよ…」
「…ハイ…承知しました…」
私は、答え、電話を切った…
そして、呆然としたというか…
率直に、言って、愕然とした…
私は、あまりにも、自分の置かれた立場が、わからなすぎる…
そう、思った…
そう、気付いた…
今、電話をしていた好子さんも、そうだが、
水野良平も、偶然、知り合って、何度か、話したことで、いつのまにか、自分と、同等に、考えていた…
自分と、同じレベルの人間だと、錯覚していた…
それは、ありえない…
彼らは、お金持ち…
平凡な私とは、違う…
平凡な高見ちづるとは、違う…
そんな当たり前のことを、忘れていた…
仲良くなりすぎて、忘れていた…
これは、同じ…
誰でも、同じだ…
本来、自分の住む世界とは、違う世界に住む人間でも、仲良くなれば、つい、自分と同じ人間だと、錯覚してしまう…
錯覚、あるいは、誤解してしまう…
が、
それは、あくまで、誤解…
私が、この先、彼らと付き合って、一生過ごすわけはない…
あくまで、偶然…
偶然、知り合った…
偶然、彼らの知己を得た…
しかしながら、それは、あくまで、偶然の産物…
いつまでも、続くわけはない…
それを、忘れていた…
肝に銘じるのを、忘れていた…
そう、気付いた…
だから、自分は、バカ…
大バカだと、思った…
そして、そんなことを、考えると、落ち込んだ…
滅茶苦茶、落ち込んだ…
33歳にもなって、こんなことも、わからないなんて…
自分のバカさ加減に、落ち込んだ…
自分のバカさ加減に、呆れて、落ち込んだ…
が、
いつまでも、落ち込んでは、いられない…
まだ、食事も取っていない…
風呂から、出て、自分の部屋で、好子さんに、電話をしただけだ…
私の家は、一戸建て…
私の部屋は、一戸建ての二階…
だから、階下に降りて、食事を取った…
幸い、鬼のように、怖い母は、食事を取り終えた後だったらしく、キッチンにいなかった…
だから、これ幸いと、急いで、キッチンで、食事を取った…
母に顔を会わせる前に、急いで、食事をとった…
正直、母は苦手…
子供の頃から、苦手だった(苦笑)…
別段、性格が悪いわけではないが、苦手だった…
もしかしたら、相性が、悪いのかも、しれない…
母娘だから、相性が、悪いなんて、ないと、思うかも、しれないが、それは、違う…
母娘でも、相性はある…
他人同様、ある…
私の場合は、相性うんぬんというよりも、母の存在が、怖い…
怖いのだ…
ずばり、母に逆らえないのだ(涙)…
まるで、会社の上司と部下…
そんな感じだ…
一切、口答えが、できない…
「…ちづる…どうして、そんなことを、したの?…」
と、母に聞かれると、ブルって、答えられない…
ただ
「…」
と、沈黙する…
あるいは、答えられない…
反論できない…
そして、それは、どうしてか?
考えたが、特に理由はない…
威圧感というか…
とにかく、逆らえないのだ…
率直に言って、口調が、私などと、違う…
口調が、半端なく、強い…
さっきの電話で、好子さんが、
「…高見さんは、周囲から、頼られるのよ…」
と、言ったが、バカを言うのも、いい加減にして欲しい…
私と母の関係を見れば、とてもではないが、私が、周囲から、頼られるような人間では、ないことが、わかる…
なにしろ、母親に一切、頭が上がらないのだ…
「…ちづる、こうでしょ? それは、違うでしょ?…」
と、母に言われれば、もはや、なにも、言い返せない(涙)…
そんな私だ…
そんな高見ちづるだ…
そんな私の姿を見て、周囲から、頼られる人間なんて…
笑ってしまう…
自分でも、笑ってしまう…
バカも、休み休み、言えと、言いたくなってしまう…
まあ、しかし、そんなことは、どうでもいい(笑)…
とにかく、母が近くにいないのを、見て、私は、慌てて、キッチンで、食事を、取った…
慌てて、食事を取って、自分の部屋に戻るに限るからだ…
なぜ、私が、そんなに、慌てるのか?
それは、さっき、話していた、好子さんとの長電話…
アレが、母が、知らないわけは、ないからだ…
小さな、一軒家だ…
私が、好子さんと、長電話を、していたのが、わからないわけはない…
しかも、会社から帰って、お風呂場から、自分の部屋に直行した後…
お風呂から、上がったばかりで、そんなに長時間、長話をしているのなら、さっさと、ご飯を食べてから、しなさいと、母に、言われのが、オチだからだ(涙)…
なにしろ、母娘だ…
母が、なにを言うかは、わかっている…
それゆえ、今は、このキッチンにいないから、その間に、急いで、食事を終えるしかない…
母に顔を会わさず、急いで、食事を取って、二階の自分の部屋に戻るのが、一番だと、考えた…
だから、食事をさっさとして、自分の部屋に、戻ろうとした…
幸い、母は、キッチンに姿を見せなかった…
私は、自分の食事を終えた後に、食器を洗って、片づけた…
こうしておけば、母に叱られずに済むからだ…
私の天敵は、母…
いや、
天敵ではないかも、しれないが、事実上、天敵…
私のことを、思ってくれるから、言うのは、わかるが、それに、対して、私が、逆らえない(涙)…
だから、天敵…
天敵=苦手な相手だから…
そして、そんな天敵について、考えた…
あの水野良平の妻の春子と、五井の女帝、諏訪野和子は、天敵だと、言った…
天敵=決して、相容れない存在…
決して、許せない相手だ…
あの二人は、かつて、一人の男を取り合って、それ以来の犬猿の仲だと、聞いた…
そして、それは、財界でも、有名な話だと、言っていた…
しかし、それ以上に、それは、二人に一度、会えば、わかる…
私は、かつて、水野良平の奥様の春子とも、五井の女帝、諏訪野和子とも、会ったことがある…
一言で言えば、似た者同士…
似た者同士の性格の女傑…
一目見て、頼れる女というか…
堂々とした態度の女傑だった…
だから、互いに対立する…
そういうことだ…
真逆に、似た者同士だから、仲がいいのでは?
とも、考えられるが、似た者同士だからこそ、反発する場合もある…
水野春子と諏訪野和子の場合は、後者…
似た者同士ゆえに、反発する…
そういうことだ…
きっと、お互いが、お互いに、自分のことが、よくわかっているのだろう…
もちろん、相手のことも、よくわかっているのだろう…
要するに、女王様は、二人は、いらない…
そういうことだろう(笑)…
同じ会社にしろ、学校のクラスにしろ、同じ、個性の人間や、同じ立場の人間は、二人は、いらない…
あるいは、必要ないということだろう…
私は、思った…
私は、考えた…
だから、反発する…
あるいは、ぶっちゃけ、目障りに感じる…
そういうことだろう…
しかしながら、さっき、好子さんが、言った…
「…春子おばさまが、激怒している…」
と、言ったことが、気になった…
たしかに、それほど、対立する二人なら、今度の透の、一件に、天敵の、諏訪野和子が、絡んでいたのが、わかったのなら、激怒するだろう…
いや、
激怒して、当たり前…
当たり前のことだ…
しかし、そんなことを、考えると、今さらながら、透のバカさ加減が、わかる…
いわゆる、自分が、使われている…
あるいは、利用されていると、事実に、気付かなかったのだろうか?
これは、サッカーで言えば、オウンゴール…
オウンゴール=自殺点だ…
自分で、自分の首を絞めているようなもの…
自分で、水野の名前に恥をかかせたようなものだからだ…
水野が、サウジアラビア政府と、共同で、大きなプロジェクトをやる…
サウジアラビアの駐日大使と、透が、共同で、記者会見をして、宣言しておきながら、実際は、やらない…
中止する…
水野の企業規模では、サウジアラビア政府と、共同で、大きなプロジェクトを推進する企業の実力が、決定的に不足しているからだ…
しかし、そんなことも、わからないなんて…
あまりにも、情けない…
あまりにも、愚か…
水野グループの次期後継者として、ありえない失態だ…
一体、なぜ、透は、そんなことを、したのだろうか?
考えた…
たしかに、透は、頼りない…
見るからに、威厳もなにもない…
が、
バカではない…
そんなことを、するほど、バカではない…
そう、思った…
しかし、それは、買い被り?
私の買い被り?
透を、買い被り過ぎている?
透を、高く、評価し過ぎているのだろうか?
私は、思った…
私は、考えた…
が、
いずれにしても、透に会ってみる必要がある…
あるいは、直接、会わないまでも、連絡してみる必要がある…
連絡して、本当に、透が、自分から、進んで、そんなバカなことを、したのか?
聞いてみる必要がある…
私は、思った…
私は、考えた…
そして、そんなことを、考えながら、これでは、まるで、私が、水野の関係者か、なにかのようだと、思った…
まるで、透の姉のようだと、思った…
なぜなら、私の方が、透より、年上だからだ…
だから、私が、透の姉のようだと、思った…
が、
そこまで、考えて、これは、やはり、好子さんの役割だと、考えた…
透の別れた妻である、好子さんの役割だと、気付いた…
透と、好子さんは、結婚は、したものの、半年足らずで、離婚したから、現在は、赤の他人に違いないが、透と、好子さん…いや、好子さんだけでなく、好子さんの兄の正造や、弟の新造さんとも、透は、仲が良いといっていたからだ…
いまだに、連絡を取り合う仲の良い幼馴染だと、言っていたからだ…
それゆえ、私が、この立場で、透に、連絡を取るのは、違う…
違うと、あらためて、思ったのだ…




