恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 115
透が、私の方が、好子さんより好きって…
いくらなんでも、それは、ありえない…
なぜなら、好子さんは、透と、幼馴染…
昨日、今日、知り合った私とは、知り合った年月が違う…
なにより、好子さんは、お金持ち…
平凡な庶民出身の私とは、違う…
いや、
違うのでは、ない…
比較にならないほど、違う…
当たり前のことだ…
それゆえ、
「…好子さん、そんなバカなことは…」
と、言った…
言わざるを得なかった…
「…バカなことじゃ、ないわ…」
「…バカなことじゃ、ない?…」
「…そうよ…これは、真実…ホントのことよ…」
「…」
「…透と、いっしょに、暮らしたから、よくわかった…透は、私より、高見さんが、好きなの…」
「…ウソ?…」
「…ホント…」
「…だって、透さんは、好子さんと、幼馴染で、子供の頃から、好子さんに、憧れていたんじゃ…」
「…それは、そうだけれども、今、好きなのは、高見さんの方…」
「…今、好きなのは…ですか?…」
「…きっと、高見さんには、失礼だけれども、高見さんの方が、私より、新鮮だし、私より、魅力があるのかも、しれない…」
「…新鮮…」
「…そうよ…だって、高見さんは、透と、知り合って、まだ一年も経たないし、それに、比べ、私は、子供の頃から、知っている…だから、そういう意味では、私に、新鮮さは、ない…」
「…」
「…それに、高見さんの魅力?…」
「…私の魅力って?…」
「…高見さん、頼れるのよ…」
「…頼れる?…」
「…男でも、女でも、相談しやすい人間って、いるでしょ? こういっては、高見さんに、失礼だけれども、学歴は、関係ない…頭の良し悪しは、関係ない…ただ、頼れるっていうか…そんな感じ…たぶん、透から、見た、高見さんって、それなのよ…」
「…ウソ?…」
「…ホント…」
そんなこと、思っても、みなかった…
そんなこと、考えてみなかった…
「…たぶん、私と高見さんが、同じ顔だから、余計に、透も、私と、高見さんを、比べちゃうんだと、思う…同じ顔だから…当たり前よね…」
「…それは、そうですが…」
「…それに、高見さんを新鮮っていったのは、透は、私と幼馴染だから、互いに、相手のことは、知り尽くしているというか…それゆえ、新鮮さがない…」
「…」
「…誰でも、そうだけれども、知り尽くしたものより、新しいものの方が、魅力的に映る…」
「…」
「…だから、余計に、高見さんに、惹かれたんだと、思う…」
「…」
「…まあ、悔しいと言えば、悔しいけれど…」
好子さんが、笑った…
が、
どこか、刺がある笑いというか…
正直、対応に、困った(苦笑)…
これでは、まるで、私が、好子さんの恋のライバル(笑)…
そのライバルに、褒められている…
それゆえ、どうして、いいか、わかなかった…
ただ、好子さんとの話から、あらためて、なぜ、水野良平が、私から、透を、説得させようとするのか、わかった…
ぶっちゃけ、男も女も、その男と女が、好きな異性から、説得させるのが、一番、効果がある…
誰もが、自分が、好きな相手の言うことなら、聞くからだ(笑)…
だから、その相手が、好きな異性に説得させるのが、一番…
一番、効果的だ…
私は、思った…
私は、考えた…
きっと、それが、わかっているから、あの良平も、私に透を説得させようと、しているのだろう…
あらためて、思った…
そして、私が、そんなことを、考えていると、
「…高見さん…」
と、好子さんが、私の名前を呼んだ…
「…ハイ…なんでしょうか?…」
「…透に、会いたい?…」
「…それは?…」
「…会って、透を、説得するんでしょ?…」
「…どうして、それを?…」
「…さっき、高見さんの口から、良平おじ様の名前が出たから…」
好子さんが、笑う…
「…今、どうして、高見さんから、電話があったのか? ピンと来たの…」
そう、言われると、どうして、いいか、わからなかった…
図星だったからだ…
「…きっと、高見さんの話なら、聞いてくれる…」
「…」
「…なんて、ことは、ないでしょうけれども、私より、高見さんの方が、話ができると思うわ…」
好子さんが、笑いながら、言った…
正直、こんなふうに、言われると、どう答えていいか、わからなかった…
だから、黙った…
「…」
と、答えなかった…
代わりに、
「…好子さん、透さんが、今、どこにいるか、知っているんですか?…」
と、聞いた…
話を変えようとしたのだ…
「…大体は、ね…」
即答した…
「…では、好子さんが、会って、透さんを、説得すれば…」
「…私じゃ、ダメ!…」
「…」
「…高見さんじゃ、なければ…」
そう言われる、どう返答して、いいか、わからなかった…
ただ、困った…
困ったのだ…
「…まあ、とにかく、高見さん、一度、透に会って…」
好子さんが、言う…
「…透に、会って、話してみて…」
私は、
「…ハイ…」
と、言おうか、どうか、迷った…
「…ハイ…」
と、言うのも、おかしいし、言わないのも、おかしい…
そう、考えたからだ…
だから、どう答えて、いいか、わからなかった…
だから、
「…」
と、黙った…
途端に、
「…ちゃんと、聞いてる? 高見ちづる…」
と、好子さんが、私を叱った…
私は、すぐに、
「…ハイ…聞いてます…」
と、答えた…
「…だったら、よろしい…」
好子さんは、わざと、居丈高に、言った…
それから、
「…プッ!…」
と、吹き出した…
そして、その後、いかにも、楽しそうに、笑った…
爆笑した…
私は、戸惑ったが、なんと、言っていいか、わからなかった…
だから、黙った…
「…」
と、なにも、言わなかった…
好子さんは、笑った後、一転して、真面目な口調で、
「…とにかく、高見さん…透に会ってみて…」
と、言った…
「…高見さんが、その役目は、嫌なのは、わかる…でも、それでも、会ってみて…」
「…」
「…これは、命令よ…高見ちづる…」
「…命令?…」
「…そうよ…業務命令…」
「…えっ? 業務命令?…」
「…だって、今、高見さん、良平おじ様の率いる水野グループの社員でしょ? そのおじ様が、高見さんに、透に会ってくれと、言ったわけでしょ? それが、業務命令じゃなくて、なんだと言うの…」
そう、言われて、絶句した…
文字通り、絶句した…
たしかに、言われてみれば、その通り…
その通りだった…
が、
考えも、しなかった…
そんなこと、考えも、しなかった…
我ながら、トロいと言うか…
大トロ…
トロ過ぎる(苦笑)…
私は、今、水野良平の紹介で、水野グループのM商会に、転職した…
それを、考えれば、水野良平の依頼を断ることなど、できなかった…
当たり前だった…
しかし、そんな当たり前のことに、気付かなかったなんて…
相変わらず、トロい…
相変わらず、鈍いというか…
自分で、自分自身に呆れる…
そんなことも、気付かなかった自分自身に、呆れた…
そして、そんなことを、考えていると、
「…高見さん、ようやく、自分の置かれた立場に、気付いた?…」
と、好子さんが、電話の向こう側から、笑いながら、言う…
私は、
「…ハイ…」
と、言わざるを得なかった…
「…だったら、よろしい…」
好子さんが、電話の向こう側から、わざと、偉そうに、言う…
私は、
「…わかりました…」
と、言わざるを得なかった…
当たり前だった…
つくづく、自分が、情けなかった…
こんなことも、気付かなかった自分が、情けなかった…




