恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 113
そして、そんなことを、考えながら、お風呂を出た…
長風呂は、マズい…
これ以上、お風呂に入っているのは、マズい…
先日も、長風呂のし過ぎで、気持ち悪くなり、危うく、吐きかけた(苦笑)…
気持ちが悪くなって、危うく、吐く寸前になった…
さすがに、もう一度、それを、繰り返すわけには、いかない…
なにより、母に見つかるのが、怖い…
鬼のように、怖い母に、見つかるのが、怖い…
だから、私は、慌てて、お風呂から、出て、カラダをバスタオルで、拭いて、下着を着ると、自分の部屋に行った…
自分の部屋で、好子さんに、電話をかけようと、思ったからだ…
昼間、水野良平は、私に、透を、説得させるのに、当たり、好子さんや、兄の正造、あるいは、新造さんに、連絡をするべきだと、言った…
彼らなら、間違いなく、今、透が、どこにいるか、知っているはずだと、言った…
透は、誰よりも、彼ら、3人に、気を許していると、言った…
水野家の透と、米倉家の3人は、幼馴染…
互いの父親の水野良平と米倉平造が、仲が良かったから、互いに、子供を連れて、互いの家庭に、遊びに行ったからだと、言った…
それゆえ、透と、米倉家の3人は、親戚並みに仲がいい…
そして、今、会社にも、出社せず、身を隠した透と、おそらく、今も連絡を取り合っていると、良平は、言った…
つまりは、今も、それほど、仲がいいのだろう…
大人になって、普通は、もうなんの関係が、ないのが、大半だが、仲が、いいのだろう…
私は、思った…
私は、考えた…
私にも、当然、幼馴染がいる…
近所に住んでいたり、幼い頃は、いっしょに、小学校に通学した幼馴染がいる…
が、
当然、今は、なんの関係もない…
稀に、近所や、地元のスーパーで、見かけることあっても、挨拶をすることがあったり、なかったりする…
これは、相手次第…
相手が、久しぶりに会って、会話をせずとも、会釈したりする場合は、こちらも、会釈で返すが、なにも、しないで、無視する場合は、こちらも、無視する…
そういうことだ…
つまりは、相手の態度に合わせて、こちらも、態度を変える…
別の言い方をすれば、それぐらい、幼馴染といっても、距離感がある…
透や、好子さんたちとは、比較にならないほど、距離感がある…
それゆえ、羨ましい…
率直に言って、羨ましい…
私には、そんな親しい幼馴染は、いないからだ…
そして、それを、言えば、友達もそう…
友達も、同じだ…
中学、高校、大学と、学生時代、仲の良かった友人は、いるが、今は、もう、誰とも、付き合いはない…
もう大学を出て、十年は、過ぎている…
大学を出た、最初の数年は、仲の良い友人たちと、会社が、休みの夏休みや、冬休みに、集まったが、それも、いつのまにか、自然に消滅した…
理由は、簡単…
時々、会って、昔話に花を咲かせるより、より現実を見るというか…
今、いる、会社の同僚や、今、付き合っている異性との、交際を優先したからだ…
それゆえ、どうしても、学生時代の友人たちとは、疎遠になる…
誰もが、そうなのかも、しれない…
誰もが、同じなのかも、しれない…
以前、勤めていた金崎実業の同僚に、その話をしたら、自分も、同じだと、笑った…
自分も、大学を卒業して、最初は、大学時代の友人は、地方出身者が、多くて、会えないから、地元の高校時代の友人たちとは、付き合いがあったが、次期になくなったと、笑った…
いつのまにか、高校時代の友人たちより、今現在付き合っている会社の同僚や、付き合い出した恋人との時間を優先する…
その結果、昔の友人たちと、付き合う時間が、なくなり、自然に消滅する…
そう、笑った…
その話を、今も、思い出す…
だからだろう…
透と、好子さん、正造、新造の3人が、今も、仲が良いと聞くと、羨ましくなる…
私には、そんな仲の良い人間は、誰一人いないからだ…
だから、羨ましくなる…
そして、そんなことを、考えながら、好子さんに、電話をした…
自分のケータイから、米倉好子さんに、連絡をした…
が、
いつまで、待っても、好子さんは、電話に出なかった…
代わりに、流れてきたのは、留守電のメッセージ…
…ただいま、電話に出ることが、できません…御用のある方は、この後、メッセージを入れて…
と、流れた…
これは、想定外のことで、驚いたが、一方で、当たり前のことだとも、思った…
電話をかければ、相手が、いつも、電話に、出るわけはないからだ(苦笑)…
そんな、いつも、自分に都合がいいことは、ありえないからだ…
だから、メッセージが、終わると、
「…好子さん…米倉好子さんですか? …高見です…高見ちづるです…ご無沙汰しています…また、今度、あらためて、お電話致します…」
と、言って、電話を切った…
正直、緊張した…
電話の留守番メッセージを入れるときは、いつも、緊張する…
相手が、いないにも、かかわらず、ただ、自分が、一方的に話す…
そんなことは、誰もが、日常では、ありえないからだ…
だから、緊張する…
滅茶苦茶、緊張する…
そして、メッセージが、入れ終わって、すぐに、連絡があった…
ケータイが、鳴ったのだ…
スイッチを押すと、すぐに、
「…高見さん?…」
と、いう声が、ケータイから、聞こえてきた…
私は、満を持した、あるいは、待ちかねた感じで、
「…ハイ…そうです…高見です…」
と、慌てて、言った…
すると、ケータイの向こう側から、
「…そう、その声…」
と、実に、楽しそうに、好子さんの声が聞こえてきた…
「…高見さんの声…私と高見さんは、顔が、そっくりだけれども、高見さんの方が、可愛らしい…高見さんの方が、女優の常盤貴子さんの声に似ている…」
と、言った…
これまで、一度も、聞いたことのないことを、言った…
私は、正直、驚いた…
これまで、好子さんとは、幾度となく、会話をしたが、そんなことは、一度も、話したことが、なかったからだ…
だから、驚いた…
これまで、一度も話したことのないことを、言い出したから、驚いた…
同時に、これは、なぜ?
もしかして、誰かに、言われたからでは?
とも、考えた…
誰からに、言われたから、これまで、一度も、聞いたことのないことを、言い出した…
そう、考えるのが、自然だからだ…
そう、気付いた…
だから、ストレートに、
「…好子さん、なんで、いきなり、そんなことを、言い出したんですか?…」
と、聞いた…
そして、間髪入れずに、
「…今まで、一度も、そんなこと、おっしゃったこと、ないじゃないですか?…」
と、言った…
すると、少し、間があった…
少し、逡巡があった…
きっと、いきなり、私が、そう、突っ込んだから、どう、答えていいか、わからなかったのだろう…
「…言われたのよ…」
と、悔しそうに、言った…
「…言われた? 誰にですか?…」
「…透よ…透…」
思いがけず、透の名前が出た…
待望の名前が出た…
「…せっかく、こっちが、心配して、透に、電話を、かけてやると、いきなり、アイツ、好子と、高見さんは、顔が、そっくりだけれども、高見さんの方が、声が、可愛らしいなと、言って…ホント、頭に来る…二人とも、女優の常盤貴子を小柄にした感じだけれども、声は、高見さんの方が、可愛いと、言って…ホント、失礼なヤツ…」
電話の向こう側から、好子さんが、むかっ腹を立てていた…
が、
どこか、違う…
なにが、違うのか?
それは、怒っていても、相手に、本気で、怒ってない…
言葉は、悪いが、プロレスというか…
あらかじめ、決まっている中で、怒っている…
あらかじめ、決まった想定内の中で、怒っている…
つまりは、相手に対して、甘えがある…
甘え=馴れ馴れしさがある…
つまり、それが、幼馴染だからだろう…
幼馴染ゆえに、互いに気を許しているからだろう…
互いが、どんな人間か、知っているから、気を許しているからだろう…
結婚して、半年も経たずに離婚しても、気を許しているからだろう…
お互いが、心底、相手を嫌って、離婚したわけでは、ないからだろう…
私は、思った…
私は、考えた…
そして、
そして、だ…
今、好子さんが、言った言葉…
こっちが、心配して、と言う言葉が、刺さった…
私の心に刺さった…
それゆえ、私は、
「…心配…」
と、だけ、言った…
わざと、言った…
その言葉を、聞いた、好子さんが、すぐに、食いついた…
「…そうよ…透のヤツ…サウジアラビア政府と、共同で、なにか、大きなことを始めると言って、こっちも驚いて…たしかに、水野は、米倉よりは、大きいけれども、そんな一国の政府と組んで、なにかを、することができるほど、大きくは、ない…だから、それを、心配して…」
私は、それを、聞きながら、別のことを、考えた…
この好子さんが、透を、心配して、透に、電話を入れた…
それは、わかる…
しかし、それは、好子さんの発案か?
それとも、誰かに、頼まれたのか?
考えた…
なにより、幼馴染とは、いえ、結婚して、半年も経たずに、離婚した相手…
やはり、自分から、電話を、かけるのは、気まずいのでは?
と、考えたのだ…
それゆえ、私は、わざと、
「…そんなに、透さんが、心配だったんですか?…)
と、聞いた…
わざと、聞いた…
すると、すぐに、
「…そんなこと、ないわ…でも、正造に頼まれて…」
と、言った…
「…正造さんに?…」
「…そう…」
来た!
やはり、来た!
やはり、ここで、正造の名前が出た!
そう、思った…




