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恋かもしれない 恋愛偏差値ゼロ 第3部  作者: トモサン


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107/128

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 107

良平は、会社に入らずに、会社の近くにいた…


 おそらくは、用心していたのだろう…


 私の勤めるM商会は、水野グループとはいえ、言葉は、悪いが、末端の会社…


 その証拠に、私の住む家から、数駅離れただけの、私の住む駅からすれば、数倍大きな駅の前にある雑居ビルの一室に間借りしている、小さな営業所…


 水野グループとはいえ、それを、知らないものも、いるだろう…


 それぐらい、小さな営業所…


 だが、それでも、もしかしたら、中には、水野良平の顔を知っているものも、いるかも、しれない…


 それを、良平は、恐れたのだろう…


 水野良平は、水野グループ会長…


 あまりテレビに出ることは、ないが、それでも、良平の息子の透(とおる)と、好子さんが、結婚したときに、テレビに出た…


 大物の財界人だからだ…


 なにより、今の時代、ネットで、検索すれば、良平のような有名人は、たやすく、画像を見つけることができる…


 どんな顔をしているか、知ることが、できる…


 だから、本人だとバレる可能性が高い…


 それが、わかっているから、会社にも顔を出さなかったのだろう…


 私のいるM商会の営業所に顔を出せば、何事かと、なる…


 まさか、水野グループの総帥が、わざわざ、顔を見せるなんて、営業所の誰も、考えても、いないからだ…


 いわゆる、顔バレ…


 それを、避けるために、わざと、会社の近くで、私を待っていた…


 営業所のある雑居ビルの前ではなく、少し離れた場所で、待っていた…


 それも、これも、顔バレを防ぐため…


 そのためだ…


 私は、


 「…高見さん…」


 と、路上で、いきなり、良平に声をかけられて、ビックリした…


 が、


 すぐに、良平だと、気付いた…


 この前も、こうして、私を待ち伏せして、私に、声をかけてきたからだ…


 だから、もう、声を覚えていた(苦笑)…


 なにより、路上で、いきなり、声をかけられることなど、普通は、あるものでは、ないからだ…


 だから、余計に、その声を覚えていた…


 もう、何度も経験があるから、覚えていた(苦笑)…


 それゆえ、私は、声のする方向を急いで、振り返り、水野良平の姿を確認すると、


 「…ご無沙汰しています…」


 と、頭を下げた…


 十分に、腰を折って、頭を下げた…


 そして、そんな態度を取りながら、内心、


 …これでは、まるで、秘書…


 …水野良平の秘書のようだ…


 と、思った…


 同時に、考えた…


 いや、


 気付いた…


 逮捕された船見さん…


 彼女のことを、考えた…


 ハッキリ言って、顔はあまりよくないが、スタイル抜群の長身の女性…


 彼女のような女性が、秘書に、似合っていると、思った…


 いや、


 それを、言えば、あの米沢京子も同じ…


 船見さんと、同じ、スタイルのよい、長身の美人…


 だが、なぜか、彼女のことは、忘れていた…


 それは、なぜか?


 それは、やはり、船見さんが、横領で、逮捕されたからだろう…


 不倫相手の前沢を陥れるために、わざと会社の金を使い込み、前沢に罪を着せたからだろう…


 それゆえ、彼女のインパクトが強かった…


 そういうことだろう…


 そして、それを、思えば、私のように、背の低いちんちくりん(涙)な女より、船見さんのように、背が高く、スタイルの良い女の方が、秘書が、似合うと思った…


 なぜか、水野良平に頭を下げながら、思った…


 そんなことを、思った(苦笑)…


 私が、丁寧に頭を下げると、良平が、


 「…高見さん…体調は、どうですか?…」


 と、実に、心配そうに、私に声をかけてきた…


 私は、頭を上げながら、


 「…おかげさまで、全快しました…会長のおかげです…」


 と、言った…


 良平は、


 「…いや、そんなことは…」


 と、戸惑って、言って、それから、


 「…とにかく、良かった…」


 と、続けた…


 私は、その姿を、見て、違和感があった…


 なぜか、他人行儀というか…


 私に距離を置いて、接しているからだ…


 私が、それを、考えていると、


 「…今度の件では、高見さんに、ご迷惑をおかけしました…」


 と、いきなり、良平が、私に頭を下げた…


 「…とりわけ、前沢君の不倫に、高見さんを、巻き込んでしまった…」


 と、忸怩たる声色で、告げた…


 私は、その言葉で、あらためて、この良平が、前沢を通じて、私を監視していたことを、思い出した…


 きっと、良平は、それが、私にバレたことが、気まずかったのだろう…


 そう、思った…


 まさか、私自身、良平に監視されているとは、夢にも、思わなかった…


 そして、それ以上に、良平が、私を息子の透(とおる)のお嫁さん候補と、真剣に考えていることに、驚いた…


 たしかに、私が、自分で言うのも、なんだが、良平に好かれているのは、わかっていた…


 これは、誰でも、同じ…


 同じだ…


 相手が、自分を好きか、嫌いか、相手の態度を見れば、わかる…


 仮に、好きなような態度をとっていても、本音では、嫌いな場合もあるものだが、それは、やはり、態度を見れば、わかる…


 どこか、ちょっとした仕草でわかるからだ…


 相手が、気付かないところで、嫌悪の表情を浮かべているとか(笑)…


 もっと、わかりやすい例で、言えば、そのひとのいないところで、そのひとの悪口を、言っているからだ(爆笑)…


 だから、簡単にわかる…


 そして、それを、眼前の水野良平に当てはめれば、ことごとく当てはまらない…


 私を心の底から、好きだと、わかる…


 そして、それゆえ、私も良平が、好きだった…


 もちろん、この好きに変な下心はない…


 ただ、誰もがそうだが、自分を好きなひとは、そのひとを好きなものだ…


 例外は、恋愛(苦笑)…


 いくら、相手が、自分を好きでいてくれても、


 「…このひとは、ちょっと…」


 と、いうことが、あるからだ…


 そして、下心…


 これは、男女ともにだが、相手のルックスや、お金が目当てなのが、見え見えの場合は、引く(苦笑)…


 これは、誰もが、同じだろう…


 私とて、例外ではない…


 私のカラダ目当てに男が、寄ってくれば、引くだろう…


 いや、


 それは、ないか?


 なにしろ、私は、身長が、155㎝と、小柄…


 カラダ目当てなら、あの船見さんのような女に限る…


 長身で、スタイルの良い女に限る…


 胸も、お尻も、大きな女に限る…


 あらためて、思った…


 思ったのだ…


 そして、私が、そんなバカなことを、考えていると、


 「…高見さん、お時間は、ありますか?…」


 と、良平が、丁寧な口調で、私に聞いてきた…


 「…少し、高見さんと、お話したいのですが…」


 良平が、続ける…


 すでに、予想した言葉を続ける…


 この水野良平を見た、瞬間、私に、用事があって、私を待ち伏せしているのは、わかっていた(苦笑)…


 そもそも、用事が、なければ、私を待ち伏せているわけがない…


 当たり前のことだ…


 なにより、私を待ち伏せしているのは、水野良平…


 水野グループ総帥…


 私の勤務するM商会の親会社のトップ…


 最初から、私に断る選択肢など、あろうはずがなかった…


 それゆえ、


 「…ハイ…」


 と、頷いた…


 すると、その途端、良平の顔が、和んだ…


 「…良かった…」


 と、しみじみ、呟いた…


 私は、それを、見て、まるで、私に、告白した、高校生の男のコのようだと、思った…


 高校生が、好きな女のコに、


 「…今度の日曜日、暇? よかったら、ボクといっしょに…」


 と、いうやつだ(笑)…


 それで、相手の女のコが、


 「…うん、いいよ…」


 と、頷けば、まるで、天にも昇るような、嬉しそうな顔をする…


 それと、似ている…


 それゆえ、良平には、悪いが、つい、クスリと、笑ってしまった…


 そして、それを、見た良平が、


 「…なにが、おかしいんですか?…」


 と、真顔で、聞いた…


 それを、聞いた私は、躊躇なく、


 「…だって、会長ったら、まるで、好きな女のコに、告白する高校生の男のコのようですよ…」


 と、笑った…


 それを、聞いて、良平が、唖然とした…


 「…高校生の男のコ?…」


 唖然とした表情で、呟く…


 「…そうですよ…」


 私が、笑って、言うと、


 「…そうですか? まさか、高見さんに、そう見られているとは、思いませんでした…」


 と、顔を赤くした…


 途端に、なぜか、私も居心地が、悪くなった…


 まさか、父親と同世代の男に恋をするわけはないが、相手が、私を女として、意識しているのであれば、こちらも、反射的に、相手を、男として、意識してしまう…


 当たり前のことだ…


 年齢は、関係なく、つい、意識してしまう…


 そして、そんな私の心の内が、良平にバレるのは、マズい(苦笑)…


 それゆえ、すばやく、話題を変えた…


 慌てて、話題を変えた…


 「…そんなことより、会長…立ち話もなんですから、お話があるのでしたら、場所を変えて…」


 と、言った…


 良平もまた、その言葉を待っていたようだ…


 「…わかしました…どこか、近くの店に入りましょう…」


 良平が、ホッとした表情で言う…


 私も、そんな良平を見て、ホッとした…


 こんな路上で、三十過ぎの女と、六十過ぎの男が、モジモジしていては、困る(爆笑)…


 高校生の男女ではないのだ…


 だから、ホッとした…


 実に、ホッとした…


 まさか、これが、恋の始まり?


 そんなこと、あろうはずも、なかった(爆笑)…


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