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恋かもしれない 恋愛偏差値ゼロ 第3部  作者: トモサン


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106/128

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 106

「良平さんの怒りは、収まらない?…」


 「…それは、そうでしょ? 下手をすれば、水野が、どうなるか、わからない…そんなビッグプロジェクトを、父が、透(とおる)をそそのかして、やらせたんです…失敗に終われば、大変なことになる…」


 「…」


 「…だから、要は、それを、うまく着地させることです…」


 「…着地させること…」


 「…そうです…」


 「…それは、一体、どうやって…」


 私が、言いかけているにも、かかわらず、正造が、勝手に電話を、切った…


 ガチャと、電話を切った…


 私は、思わず、


 「…正造さん!…」


 と、叫んだが、後の祭り…


 電話は、切られた後だった…


 私は、恨めし気に、電話を見て、


 「…正造のヤツ!…」


 と、呟いた…


 いつもながら、私が、話している最中に、電話を切る…


 その行為が、許せなかった…


 実に、許せなかった…


 「…まったく、アイツは…」


 と、気が付けば、声を出していた…


 自分の部屋で、声を出して、米倉正造を、罵っていた…


 しかも、


 しかも、だ…


 アイツ呼ばわりしていた(爆笑)…


 それほど、親しくないにも、かかわらず、米倉正造を、アイツ呼ばわりしていた…


 それって、どうなの?


 心の中で、自分自身に突っ込んだ…


 米倉正造は、大日産業の取締役…


 一度、倒産しかけたとはいえ、上場企業の取締役…


 大金持ちのボンボンだ…


 片や、私…


 私、高見ちづる…


 私は、平凡な家庭に生まれた娘…


 お金持ちでも、なんでもない…


 そのお金持ちでも、なんでもない娘が、大金持ちのボンボンと対等…


 いや、


 どう見ても、自分の方が上…


 上から目線で、正造に接している(苦笑)…


 これは、おかしい…


 いくらなんでも、おかしい…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 いつのまにか、私は、調子に乗っていた!


 そう、気付いた…


 おそまきながら、気付いた…


 いつのまにか、私と正造を、対等に見ていた…


 いや、


 対等どころか、下に見ていた…


 そう、気付いたのだ…


 これは、いくらなんでも、おかしい…


 おかし過ぎる…


 そう、気付いた…


 よく、ドラマや、現実でも、男女が、一回寝ただけで、恋人面、夫婦面する、場面があるが、私は、まだ正造と寝ていない…


 それどころか、キスすら、していない…


 にも、かかわらず、女房面…


 あるいは、恋人面している…


 これは、まさに、バカな女…


 バカな女の見本だ…


 バカな、勘違い女の見本だ…


 私は、思った…


 今さらながら、思った…


 そして、それに、気付くと、正造と、距離を置こうと、思った…


 正造と、会わなかろうと、思った…


 いや、それを、言えば、今もまだ会っていない…


 ときどき、電話をするだけ…


 電話をするだけの仲だ…


 しかし、それも、止めようと、思った…


 正造とこれ以上、繋がっていても、正造と、私が、結婚できるわけではない…


 これは、昔で言えば、身分違いの恋…


 現実には、ありえない恋だからだ…


 いや、恋か、どうか、わからない…


 ただ、私が、正造に気を許しているのは、確か…


 これは、否定のできないことだからだ…


 しかし、


 しかし、だ…


 これ以上、正造に、関わってはいけない…


 これ以上、正造に関わっては、婚期が、遠のく(苦笑)…


 所詮、正造とは、結婚はできない…


 にもかかわらず、このまま、ズルズルと正造と付き合っていては、私の結婚が、遠のく(涙)…


 それが、わかる…


 嫌でも、わかる…


 そして、これ以上、結婚が、遠のけば、私の価値が、失われる…


 女の価値は、若さ…


 若さだと、断言したものがいる…


 あるいは、喝破したものがいる…


 これは、事実…


 まぎれもない、事実だ…


 たしかに、私は、他人様から、女優の常盤貴子さんの若いときに、似ていると、よく言われる…


 女優の常盤貴子さんを小柄にした美人と、よく言われている…


 が、


 その美人の賞味期限も、年齢で決まる(苦笑)…


 私は、まだ、33歳だが、これが、倍の年齢の六十代になったら、美人と周囲の人間は、私をチヤホヤしてくれない(笑)…


 せいぜい、40歳まで…


 いや、


 これは、私の願望か…


 せいぜいが、ここ数年…


 35、6歳までか?


 しかしながら、それでは、若い二十代の男から、見たら、十分にオバサンだ…


 決して、私を女として見ては、くれないだろう(苦笑)…


 だから、これ以上、米倉正造に関わっては、いけないと、思った…


 これ以上、ズルズルと、米倉正造と、付き合っては、いけないと、思った…


 付き合いが、続けば、どうしても、期待する…


 自分は、口では、否定するが、心の底では、もしかしたら、正造と、結婚できるかも、と、期待する…


 それが、怖い…


 自分でも、怖い…


 だから、会わないに、限る…


 これ以上、正造には、会わないに、限る…


 会えば、正造との結婚を期待する…


 だから、会わないに、限る…


 会わずに、どこか、別の男を探すに限る…


 別の結婚相手を探すに、限る(苦笑)…


 そう、思った…


 そう、思ったのだ…


 

 それから、私は、何事もなかったように、M商会に復帰した…


 会社に通勤した…


 「…ご迷惑をおかけしました…」


 と、詫びた…


 今度、やって来た営業所長に詫びた…


 が、


 反応がなかったというか、薄かった…


 正直、私になんの興味もない様子だった…


 私は、落胆したが、反面、これでいいと、思った…


 水野良平が、この先、私をどう扱うかは、わからない…


 今度、来た営業所長もまた、私の監視を続けるのかは、わからない…


 が、


 今、見た、今度の営業所長の様子では、それは、なさそうだった…


 私を監視して、水野良平に、報告することは、なさそうだった…


 なにより、私に、関心がなさそうだった…


 それは、見ていれば、わかる…


 私に興味があるか、ないか?…


 見ていれば、わかる…


 きっと、水野良平は、今回の件で、コリゴリしたのだろう…


 なにしろ、私を監視していた、前の所長の前沢は、船見さんと、不倫の挙句、警察沙汰になった…


 結局、前沢の横領の疑惑は、晴れたが、代わりに、それを、仕掛けた、船見さんが、逮捕された…


 これは、痛手…


 水野良平にとって、痛手だったに違いない…


 なにしろ、水野本体ではないが、水野グループの会社の営業所で、横領騒ぎがあって、それが、世間に知られたのは、イメージダウンだからだ…


 率直に言って、企業の横領は、ありふれている…


 銀行を見れば、わかるが、ありふれている…


 が、


 その原因が、私だとしたら、その原因を作ったのは、良平…


 まがうことなく、良平だからだ…


 良平が、私をこの営業所に、入れたから、こんなゴタゴタが、起こった…


 私を、この営業所に入れなければ、こんなゴタゴタは、起きなかった…


 が、


 まさか、良平は、船見さんが、米倉報公会の人間だとは、思わなかったのだろう…


 いや、


 そもそも、良平は、船見さんを、知らなかっただろう…


 まさか、水野グループの総帥が、子会社の末端の営業所のメンバーが、どんな人間が、いるか、把握していたとは、思えないからだ…


 きっと、良平は、後から、真実を知っただろう…


 平造の息子の正造から、真実を聞いて、驚愕しただろう…


 まさか、私と同じ営業所に、米倉報公会のメンバーがいて、その人間が、私に嫉妬して、それが。原因で、前沢を陥れたとは、夢にも、思わなかっただろう…


 真相を、聞いて、絶句したに違いない…


 それより、なにより、自分の会社に米倉報公会のメンバーが、いることに、驚いたかも、しれない…


 いかに、平造と、昵懇の間柄とはいえ、平造の息のかかった人間が、自分のグループ会社にいたのは、驚きだったろう…


 例え、自社に害を与えていなくても、米倉報公会のメンバーならば、平造の指示があれば、水野にいても、平造の指示に従うだろう…


 それは、おおげさに言えば、日本の自衛隊に、いても、他国からの指示があれば、その指示に従う…


 要するに反乱軍…


 指示を受けていても、本来は、別のところから、指示を受け、その指示に従う可能性が、高い…


 そして、それを、考えれば、恐怖しかないからだ…


 水野の場合は、軍隊ではないのだから、戦争をして、内部で、反乱が起きるようなことは、起きないだろうが、情報が、米倉に筒抜けになる可能性が大…


 それは、やはり、恐怖以外の何物でもない…


 いかに、良平が、平造と昵懇の間柄とはいえ、互いに隠しておきたいことは、あるからだ…


 なにより、水野の会社員で、ありながら、本当は、米倉に忠誠を誓っている会社員が、いるとしたら、それは、良平にとって、恐怖でしかないからだ…


 最悪、水野の持つ、極秘情報を、米倉に知られることになる…


 米倉=平造に知られることになる…


 それは、恐怖でしか、ないからだ…


 だから、良平は、今回、新しく、私のいる営業所に所長として、やって来た人間に、私のことを、言わなかった可能性が高い…


 私、高見ちづるの監視を命じなかった可能性が高い…


 それが、わかるのは、何度も言うように、今度やって来た営業所長の私に関する関心だ…


 誰が、どう見ても、私に関心があるようには、見えない…


 それゆえ、私を監視していないだろう…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、


 そして、だ…


 営業所長も変わり、船見さんも、いなくなった…


 米沢京子は、相変わらず、同じ営業所にいたが、私に関わることは、なかった…


 それより、なにより、正造が、指摘した…


 サンドバック状態と言う言葉…


 この営業所で、私に対する風当たりというか…


 なんとなく、居づらい雰囲気が、少しは、改善されてきた…


 これまで、私自身は、入院するまで、実感は、なかったが、この営業所の雰囲気になれないことで、私自身に大きなプレッシャーが、かかっていたのだろう…


 それが、カラダに現れた…


 たかだか、風邪が悪化した…


 そういうことだろう…


 たかだか、風邪を引いただけだが、それが、肺炎になりかけた…


 これは、職場のプレッシャーで、心身が喪失して、本来は、風邪を引いただけなのに、予想外に悪化した…


 つまりは、プレッシャーで、心もカラダも弱っていた…


 そんな状況で、風邪を引いたから、悪化した…


 悪化して、肺炎になりかけたということだ…


 そういうことだ…


 そして、それが、少しは、緩和された気がした…


 職場の雰囲気には、正直にいって、まだ慣れなかったが、それでも、以前から、比べれば、少しは、よくなった…


 これは、主に、慣れの問題…


 私も、以前に比べれば、この職場に、少しは、馴染んで来たということだ…


 そして、そんなふうに、月日が流れたと思いけや、違った…


 違ったというのは、ある日、一人の男が、私の帰りを待って、会社の前で、待っていたからだ…


 その男は、良平…


 水野グループ総帥の水野良平だった…


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