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恋かもしれない 恋愛偏差値ゼロ 第3部  作者: トモサン


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103/128

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 103

船見さんが、会社に戻ってきたのは、4日後だった…


 普通なら、


 「…どうして、こんなに、休んでいたの?…」


 と、話題になるところだが、違った…


 それは、やはり、前沢のことがあるから…


 それで、てんやわんやだから、違った…


 たしかに、会社は、表面上は、落ち着いていたが、内実は、違った…


 前沢が、いなくなったことで、警察の捜査も入った…


 これは、当たり前だった…


 容疑が収賄容疑なので、当然、警察が、この営業所にやって来る…


 そして、その際に、立ち会ったのは、私が、これまで、見たことも、会ったこともない、人物たちだった…


 その人物たちは、おそらく、本社のお偉いさん…


 私が、属する営業所の直属の上司たちだろう…


 なにしろ、私は、この営業所にやって来て、まだ一か月弱…


 それゆえ、基本的に、この営業所の中の人間しか、しらない…


 だから、誰かは、わからなかった…


 ただ、初めて見る人物たち…


 それが、私の感想だった…


 そして、そんな営業所中が、てんやわんやの最中だったから、船見さんが、休んでも、気にする人間が、いなかった…


 率直に言って、船見さんどころでは、なかったからだ…


 そして、こう言っては、船見さんに失礼だが、この船見さんが、存在感が、なかったのも、大きい…


 たしかに、カラダは、大柄で、色っぽくて、ナイスバディの持ち主だが、存在感が、薄いというか…


 率直に言って、存在感が、あまりない…


 だからかも、しれなかった…


 これは、会社でも、学校でも同じ…


 同じだ…


 カラダの大きさうんぬんではなく、存在感が薄いものも、いる…


 普通に考えれば、男女共に、カラダが、大きければ、目立つと思いがちだが、あにはからんや…


 大きくても、目立たないものも、いる…


 学校でも、職場でも、


 「…そう言えば、アイツ、休んでいたのか?…」


 と、いう具合だ…


 要するに、存在感が乏しい…


 カラダが、大きいにも、かかわらず、存在感が乏しい…


 だから、目立たない…


 まして、社内は、前沢の逮捕で、てんやわんやだった…


 それゆえ、船見さんの欠勤は話題にならなかった…


 会社で、さして、話題にならなかった…


 あるいは、船見さんは、前沢さんと不倫をしていたから、警察に、身柄を拘束されて、休んでいたのでは?


 と、考えたが、確証はない…


 確証=証拠はない…


 復帰した船見さんは、淡々と仕事をしていた…


 その表情からは、苦悩の色は読み取れなかった…


 表情に、変化は、なかった…


 休む前と、同じだった…


 だから、余計にわからなかった…


 彼女、船見さんが、本当に、前沢さんと不倫をしていたのかも、わからないし、まして、警察から、事情聴取を受けていたかも、どうかも、わからなかった…


 謎だった…


 まったくの謎だった…


 そして、そうこうする間に、この営業所の中から、代理で、営業所長になるものが、現れた…


 あくまで、代理…


 正式に営業所長になったわけではない…


 正式に、営業所長が、赴任するまでの、つなぎだった…


 しかしながら、その男は、やる気満々というか…


 実に、嬉しそうだった…


 当たり前だが、自分が、この営業所の所長になるとは、夢にも、思っていなかったのだろう…


 まさに、棚からぼたもち…


 あるいは、青天の霹靂というか…


 自分でも、思っても、いない、幸運が、振ってきたようなものだったからだ…


 実は、以前、私も、こんな光景を見たことがある…


 以前、勤めていた金崎実業でも、これと、同じ光景を見たことがある…


 当時の金崎実業の所長が、ヘッドハンティングされて、退職…突然、いなくなったのだ…


 それゆえ、パニック…


 誰が、営業所長になるのか、営業所内でも、格好の噂になった…


 そして、当面は、営業所内の№2が、臨時の営業所長になった…


 これが、一番、やりやすいからだ…


 同じ営業所にいれば、その営業所のことが、よくわかっている…


 それゆえ、営業所長に最適だった…


 そして、その№2が、仮の営業所長になり、このまま、正式に、営業所長に就任すると、思われていたのだが、違った…


 本社から、別の人物が送られてきて、正式に、営業所長に就任した…


 当然、それまで、仮の営業所長だった人物は、落胆…


 見るに見れないほど、落胆していた…


 落胆=憔悴していた…


 そして、実は、その人物の落胆は、周囲のひとたちにも、関係していた…


 営業所内の大半のひとたちが、№2のひとが、仮の営業所長ではなく、まもなく、正式に、この営業所の所長に就任すると、思い、№2の人物をおだてていたのだ…


 仮に、その人物のひとが、田中さんだと、すると、


 「…次の営業所の所長は、田中さんで、決まりでしょ? なにしろ、田中さんは、この営業所が長いし、この営業所のことなら、なんでも、知っているから、このまま、所長に昇進するのが、会社としても一番、やりやすい…」


 とか、


 「…そりゃ、外から来て、いきなり、この営業所の所長を、誰かに任せるより、このまま、田中さんに、任せた方が、会社としても、リスクが少ないから、そうなるに、決まっているよ…」


 とか、営業所内や、会社の飲み会で、若手の社員たちに言われるものだから、本人もすっかり、その気になって、


 「…いや、そんなことは、わからないよ…まだ、正式にボクに決まったわけじゃないし、どんでん返しがあるかも…」


 と、言い、謙遜しつつも、本人は、喜色満面…


 自分が、次の営業所長に決まった気分だったのは、誰の目にも明らかだった…


 が、


 そのどんでん返しがあった…


 当初、いわゆる内部昇格で、その田中さんが、昇進して、このまま、正式に営業所の所長に、就任すると、思われたが、まったくの別の人物が、外からやってきて、所長に就任した…


 田中さんの憔悴は、誰の目にも、わかった…


 田中さんが、落胆したのは、もちろんだが、それ以上に、苦労したのは、周り…


 同じ営業所内のひとたちだった…


 田中さんに、この先、どうやって接すれば、いいか、わからなくなったからだ…


 そして、中には、今度やって来た所長に、露骨にすり寄るものもいて、人間性が、露骨に現れるものも、いた…


 それまで、あらわにならなかった人間性が、露骨に現れたものも、いた…


 こういった非常時にこそ、その人間の人間性が、現れるものだからだ…


 私は、今、それを、思い出した…


 突然の前沢の逮捕で、思い出した…


 思い出したのだ…


 そして、そして、だ…


 この騒動が、意味するものは、なにか?


 考えた…


 いや、


 誰が、この騒動を仕掛けたのか?


 考えた…


 偶然とは、思えないからだ…


 そして、普通に、考えれば、米倉…


 米倉平造が、関わっていると、思った…


 透(とおる)と、離婚した、好子さんに、対する意趣返し…


 意趣返し=仕返しだと、思ったからだ…


 それゆえ、前沢を、なんらかの形で、陥れたと、思った…


 が、


 違った…


 違ったのだ…


 黒幕は、平造では、なかった…


 というか、実行犯は、前沢では、なかった…


 実行犯は、船見さんだった…


 あの船見さんだった…


 彼女が実行犯…


 会社の金をちょろまかした…


 それを、前沢が、知り、彼女に詰め寄ったのが、発端だった…


 慌てた船見さんが、私に近付いた…


 きっと、船見さんは、私の正体を、知っていたのかも、しれない…


 正体というと、おおげさだが、私が、M商会の親会社の水野本体の会長、水野良平の推薦で、M商会に、やって来たのを、知っていたのかも、しれない…


 いや、船見さんは、明らかに知っていた…


 おそらく、前沢経由で、知っていた…


 前沢とて、バカではない…


 私が、水野良平の推薦で、やって来たことを、会社の誰かから、聞いたに違いなかった…


 それを、船見さんに、漏らしたらしい…


 それで、船見さんは、一計を案じた…


 私に、わざと、前沢との関係を仄めかした…


 それを、知った前沢は、慌てた…


 動揺した前沢は、どうして、いいか、わからなかった…


 そして、その動揺した前沢のことを、告げたのは、あの米沢京子だった…


 彼女、米沢京子が、平造に、告げたのだ…


 水野良平のライバルの米倉平造に告げたのだ…


 平造は、このチャンスを逃さなかった…


 率直に言って、会社内での収賄=横領は、珍しいことではない…


 銀行を代表する、お金を扱う会社の中では、日常茶飯事といえば、言い過ぎだが、ありふれている…


 ラーメン屋や、牛丼屋などの飲食店、あるいは、コンビニなどでも、ありふれている…


 ただ、問題は、公にしないだけ…


 金額が、たいしたことがないのが、大きい…


 通常、個人が、ちょろまかすのは、せいぜいが、ウン十万…


 五十万にも満たないだろう…


 店の金をちょろまかした証拠を突きつけ、本人が、払うと言ったから、警察に通報しない…


 それが、大半だろう…


 これが、百万や、一千万を超えれば、当然通報する…


 しかし、金額が少ないから、警察に通報しない…


 警察に通報することで、店の評判が、悪くなることを、恐れてのことだ…


 警察に通報して、ことが、公になり、世間に知れ渡る…


 店は、被害者だが、風評被害というか…


 「…そんなひとを、雇っていたなんて、なんて、店かしら…」


 とか、言われて、店の評判が、悪くなる可能性があるからだ…


 だから、できれば、公にしたくない…


 そういうことだ…


 前沢の話に戻ろう…


 動揺した前沢の動静に気付いた米沢京子が、前沢のことを、平造に告げた…


 平造は、それを、聞いて、躊躇なく、警察に通報した…


 前沢は、この営業所の責任者として、警察に事情聴取された…


 それゆえ、前沢は、出張中として、会社に出てこなかった…


 逮捕された当初は、しらばっくれていた前沢だが、警察に証拠を突きつけられると、言い逃れは、できなかった…


 証拠と言うのは、横領…


 すでに、前沢は、船見さんが、会社の金を使い込んでいたのを、知っている…


 いずれ、警察が、家宅捜査で、営業所の書類を調べれば、簡単にわかるからだ…


 だから、口を、割った…


 が、


 捜査は、思わぬところに、飛び火した…


 船見さんのことだ…


 彼女の横領のことだ…


 彼女、船見さんの正体…


 彼女こそ、米倉平造の手先の者…


 彼女こそ、米倉報公会の関係者だった…


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