恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 101
なにが、思うことが、できてきたのか?
もしかしたら?
もしかしたら?
私は、米倉と水野の争いに巻き込まれたのかも、しれない…
そう、気付いた…
今さらながら、気付いた…
なぜ、そう思ったのか?
それは、前沢だ…
私の勤めるM商会の営業所長の前沢の動きだ…
前沢は、以前、ファミレスで、私と、二人きりで、話したときに、自分は、転職組だと、言った…
転職組=中途入社だと、言った…
つまりは、いわゆる、プロパー…
新卒で、水野に入社したわけではない…
どこかの会社に勤めていて、そこを辞め、水野グループに転職したわけだ…
水野グループのM商会に、入社したわけだ…
いや、
転職してきたのが、M商会とは、限らない…
水野本体の可能性も高い…
出向や派遣で、水野本体から、M商会にやって来た可能性も、高いからだ…
それゆえ、もしかしたら、あの前沢が、カギを握っているのかも、しれない…
もしかしたら、水野と米倉の争いのカギを握っているのかも、しれない…
私は、思った…
私は、考えた…
だったら、船見さんは、なんだ?
あの船見さんの役割は、なんだ?
考えた…
アレは、もしかしたら?
もしかしたら、前沢の動きを封じるため?
前沢が、水野あるいは、米倉のどちらかの陣営に属しているか、わからないが、前沢の動きを封じるため、船見さんが、私と接触した可能性がある…
要するに、私を、通じて、私の口から、
「…実は、船見さんに、こんなことを、言われた…」
と、前沢に言わせたいのだ…
あるいは、船見さんの口から、前沢に、
「…前沢さん…私以外にも、高見さんと、不倫しているの?…」
と、言わせたいのだ…
なぜ、そうしたいのか?
それは、おそらく、前沢に、プレッシャーを与えるため…
前沢が、米倉、水野のどちらの陣営に属しているか、わからないが、どっちの陣営に属していても、自分の属している陣営からも、敵方の陣営からも、プレッシャーを与えられることになる…
要するに、裏切るな! と、いう圧力…
無言の圧力だ…
普通に考えれば、前沢は、水野陣営だが、実は、米倉のスパイの可能性もある…
正造が、水野には、米倉のスパイが何人もいると、明言した…
そのスパイの一人の可能性もある…
あるいは、真逆に、前沢は、水野陣営だが、米倉のスパイに誘われている…
あるいは、脅されている可能性もある…
脅されているというのは、船見さんとの不倫…
それを、ネタにして、脅されている可能性もある…
不倫=弱点だからだ…
弱点=弱みだからだ…
それゆえ、その弱みに付け入られた可能性がある…
私は、そう、見た…
私は、そう、睨んだ…
いずれにしても、それは、憶測…
私の憶測に過ぎない…
この病院を出たら、なにか、行動を起こして、その証拠を掴まなければ、ならない…
私は、考えた…
考え込んだ…
そして、なにより、今回の一番の驚きは、あの透が、サウジアラビア政府と、組んで、水野が、なにやら、大きなプロジェクトをすると、大々的に発表したこと…
父の良平に無断で、発表したことだ…
透の発表にパニクった良平は、なにをしていいか、わからなかった…
一体、なぜ、いきなり、透が、そんな発表をしたのか、皆目、見当もつかなかったからだ…
なにしろ、私にすら、透が、どうして、あんなことを、したのか、わかったら、教えて欲しいと、懇願したぐらいだ…
が、
それが、実は、平造の仕掛けたことであると、先日、正造が、私に教えてくれた…
なぜ、そんなことをしたのか?
それは、意趣返し…
意趣返し=復讐だと、言った…
好子さんと透が、離婚した復讐だと、言った…
そして、それを、聞いたときは、ただ驚いただけだったが、もし…
もし、だ…
良平が、それを、知ったら、どうなるだろう?
平造の仕掛けたことだったと、知ったら、どうするだろう?
当たり前だが、激怒するだろう…
そして、当然、良平もまた、平造に復讐するだろう…
そして、もし、その復讐が、今回の件に繋がっているとしたら?
十分、考えられる展開では、ないか?
私は、思った…
激怒した良平が、なんらかの形で、平造に復讐する…
平造=米倉に復讐する…
そんな未来が、見て取れた…
そんな将来が、見て取れた…
私の入院は、一週間近くに及んだ…
私は、一時も早く、退院したかったが、医者が、許さなかった…
おそらくは、良平に、きつく、命じられていたのだろう…
検査結果は、単なる風邪に過ぎないが、肺炎になる可能性もあったらしい…
それで、入院が長引いた…
私自身は、率直に言って、そんな自覚は、まるでなかった…
ただ、単に風邪を引いただけ…
カラダの調子が、悪いと、思っていただけだった…
それゆえ、風邪の具合が、悪く、肺炎になりかけていると、医師から、聞いたときは、驚いた…
まさか、そんなに悪いとは、露ほども、思っていなかったからだ…
現に、入院していても、重病で、ぐったりしているということは、なかった…
目覚めている時間が、多かった…
それゆえ、退屈だった…
医師から、私が、思った以上の重病だったと聞いたときは、ビックリ仰天したが、後は、退屈…
なにしろ、病院のベッドの上で、寝ているだけだったからだ…
そして、考えたのは、一つ…
おそらく、私は、今、勤めているM商会に、勤務していて、私が、思っていた以上のプレッシャーを感じていたのだろうと、いうことだ…
私自身、33歳で、転職した…
それまで、大学を新卒で、入社した金崎実業を辞めて、中途入社したM商会…
33歳になってからの転職…
おそらく、それは、私が、思っていた以上に、私自身にプレッシャーを与えていたのだろう…
それが、カラダに現れた…
そういうことかも、しれない…
心より、先に、カラダが、悲鳴を上げた…
そういうことかも、しれない…
私自身は、そんなこと、露ほども、思ってなかった…
ただ、良平に、転職先を紹介してもらい、転職した…
そんな認識だった…
が、
きっと、私が、思っているよりも、私自身が、今度の会社に慣れるのが、大変だったのだろう…
なにしろ、入社したときから、あの米沢京子が、私を敵視してきた…
理由はさっぱりわからないが、私を敵視してきた…
それが、大きかったのかも、しれない…
後で、私を敵視する理由がわかったが、それまでは、どうして、私を敵視するのか、さっぱりわからなかった…
それゆえ、プレッシャーが、半端なかった…
33歳まで、生きてきて、初めての経験だった…
学生時代は、それなりに、バイトをして、さまざまな職場を、経験した…
これは、以前も言った…
父が、学生時代は、いろんなバイトをして、世間を見ておきなさい…
大学を出て、会社に入れば、そんなことは、できないから…
と、言ったからだ…
それゆえ、学生時代は父のアドバイスを実践した…
その結果、さまざまなアルバイトに従事した…
が、
これも、以前も言ったように、嫌な職場は、すぐに辞めた…
ブラック企業は、すぐに辞めた…
だから、我慢して、続けた職場は、ない…
それが、今回、初めて、我慢して、職場にいた…
あの米沢京子のさらすプレッシャーの中にいた…
そして、それが、私が、思っていた以上に、私に影響を与えた…
影響=ダメージを与えた…
そういうことかも、しれない…
それが、私自身、気付かないところで、私にダメージを与えて、それが、カラダに現れた…
風邪という形で、現れた…
しかも、それが、単なる風邪ではなく、肺炎になりかけるほどの重症だったということかも、しれない…
自分でも、気付かないほど、あの米沢京子の行動は、私にダメージを与えた…
そういうことかも、しれない…
私は、あらためて、そう、思った…
そして、もし、あの米沢京子が、私になんらかのダメージを与えることが、目的だったとしたら、それは、成功だと、思った…
なにしろ、彼女のせいで、体調が悪化したのだ…
こんなことは、経験がなかった…
33年、生きてきて、経験がなかった…
33年、生きて、初めての経験…
彼女が、私に嫉妬して、私を、目の敵にしているのなら、それが成功したと言える…
私を憎くて、目の敵にしたのなら、成功したことになる…
私は、思った…
私は、考えた…
そして、
そして、だ…
こんなことは、誰にでも、ある…
生きていれば、誰にでも、あることだ…
そう、思った…
たまたま、私は、33歳になるまで、そんな経験はなかった…
ただ、それだけに、過ぎない…
こんな経験は、世間にありふれている…
どこの職場でも、どんな人間にも、あることだ…
そして、それを、思えば、今の人間は、恵まれていると、思った…
なにに、恵まれているのか?
それは、会社だ…
転職だ…
今は、昔と違って、転職に、社会が、寛容になった…
昔は、一生涯、ひとつの会社に勤めるのが、普通だった…
とりわけ、世間に知られた有名企業なら、そうだ…
嫌でも、途中で、辞めることができなかっただろう…
それゆえ、今の私ではないが、会社が嫌で、そのプレッシャーで、心身ともに、衰弱しきったものも、大勢いたに違いない…
しかしながら、今は、昔とは、違う…
テレビをつければ、転職のCMを、至るところで、見ることができる…
それを、見れば、当たり前だが、そのCMの転職会社を使った転職が、世の中にありふれているのだろうと、思う…
嫌なのに、辞めることが、できないなんて、どうかしている…
嫌なら、辞めれば、いいが、それが、できない社会は、どうか、している…
私は、たぶん、あの米沢京子のせいで、体調を崩したが、正直、たいしたことは、ない…
会社を辞めたいほどでは、ない…
だが、会社を辞めたいほど、追い詰められているのに、辞めれない社会って、一体、どんな社会なんだろうか?
考えさせられる…
なにしろ、今は、出戻り…
有名企業を退職しても、戻ることが、できると、ネットで見た…
これは、驚いた…
さすがに、一度、辞めた会社に、戻ることは、ありえないと、思った…
個人経営の中小企業なら、いざしらず、大手の企業で、それは、できないと、思ったからだ…
つくづく、時代は、変わったと、思う…
たかだか、33歳の私から、見ても、変わったと、思う…
心の底から、思う…
そして、そんなことを、考えながら、入院生活を過ごした…
ほぼ、一週間を過ごした…
そして、退院した…
退院して、自宅に戻った…
そして、テレビで、見たのは、前沢だった…
前沢の逮捕のニュースだった…




