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五月十九日 午前十時十五分

 高城家の本邸は広い。


 母屋、離れ、蔵、庭園、茶室。


 さらに山の中腹には先祖代々の墓所まである。


 私は屋敷内を歩き回った。


 使用人たちの動きを確認するためだ。


 だが怪しい人物は見当たらない。


 誰もが祖父の死後の後始末に追われていた。


 その時だった。


「恒一様」


 声を掛けられた。


 古参の庭師だった。


「何か?」


「危ないところでした」


 庭師は苦笑した。


「昨日、東の庭の石灯籠が倒れかけておりまして」


「倒れかけて?」


「はい。誰かが電話をくれましてね」


 私は息を止めた。


「電話?」


「匿名でしたが」


 その瞬間、全身の血が冷えた。


「その電話、いつです?」


「三日前です」


「内容は?」


「東庭の灯籠が危険だから確認しろ、と」


「誰から?」


「分かりません」


 庭師は首を振った。


「声も変えていたようですし」


 私はその場を離れた。


 胸の鼓動が速い。


 叔父だけではない。


 匿名の人物は以前から動いている。


 しかも、かなり前から。

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