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五月十七日 午後四時三十八分

 高城家本邸の裏手には古い車庫がある。


 戦前に建てられた煉瓦造りの建物だ。


 葬儀の最中、誰も近づかない。


 私はそこで叔父の車を見つめていた。


 黒い高級セダン。


 今夜、叔父は市内のホテルへ向かう。


 葬儀後の親族会議があるからだ。


 私は数日前から準備を進めていた。


 ブレーキホース。


 少しだけ傷を入れる。


 すぐには切れない。


 だが高速道路に入れば。


 あるいは山道の下り坂なら。


 十分だ。


 事故になる。


 誰も疑わない。


 警察も保険会社も。


 全て不運な事故として処理するだろう。


 私は工具を片付けた。


 完璧だった。


 十年間考え続けた末の結論だ。


 失敗するはずがない。

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