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五月十七日 午後一時十二分
祖父の葬儀は、いかにも高城家らしいものだった。
豪華ではあるが派手ではない。
格式はあるが、成金趣味ではない。
地方政財界の重鎮たちが次々と焼香に訪れ、広い本家の庭には黒塗りの車が何台も並んでいた。
私は喪服姿のまま、縁側からその様子を眺めていた。
雨が降りそうな曇り空だった。
祖父が死んだというのに、涙は出なかった。
悲しくない訳ではない。
だが、私の中にはそれ以上に大きな感情があった。
憎しみだ。
十年間育て続けた憎しみ。
今日、その決着をつける。
庭の向こうで、叔父の俊介が来客への挨拶をしていた。
背筋を伸ばし、穏やかな笑みを浮かべている。
周囲から見れば理想的な後継者だろう。
だが私には違う。
父を殺した男。
その一言に尽きる。
隣には叔母の美咲もいた。
黒い着物姿で、親族たちに丁寧に頭を下げている。
共犯者。
そう思うたびに胸の奥が熱くなった。
「恒一様」
声を掛けられた。
振り返ると執事の瀬川だった。
七十近い年齢だが、背筋は今でも真っ直ぐだ。
「お客様がお呼びです」
「今行きます」
私は立ち上がった。
だが頭の中では別のことを考えていた。
今夜だ。
今夜、俊介は死ぬ。




