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五月二十日 午後九時三分
車庫。
油の匂い。
夏の日差し。
幼い自分。
笑っている。
工具箱。
父の車。
「だめですよ」
誰かの声。
瀬川だ。
若い頃の瀬川。
「触ってはいけません」
だが私は笑っていた。
父の真似をしていた。
車を整備する父の真似。
格好良かったから。
褒められたかったから。
だから。
だから――
私は。
「やめろ……」
思い出したくなかった。
だが記憶は止まらない。
工具。
ボルト。
ナット。
外した。
そして。
元に戻したつもりだった。
子供の手で。
何も分からずに。
「いやああああああっ!」
私は叫んでいた。
気付けば床に膝をついている。
静香は何も言わない。
ただ見守っていた。
十年間。
ずっと見守っていたように。
「違う……」
涙が止まらない。
「違う……」
だが否定できなかった。
思い出してしまった。
あの日。
自分が何をしたのか。
何をしてしまったのか。




