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五月二十日 午後三時四十分
頭痛が収まったので、私は再び静香を訪ねた。
彼女は本邸の奥にある客間で帳簿の整理をしていた。
祖父の死後も、まるで今まで通り仕事を続けている。
「話を聞かせてください」
私が言うと、静香は手を止めた。
「何についてでしょう」
「写真のことです」
しばらく沈黙が続いた。
「高城様」
静香は静かに言った。
「あなたは事故の日のことをどこまで覚えていますか」
「それは昨日も聞かれました」
「答えてください」
私はため息をついた。
「雨でした」
「ええ」
「警察が来た」
「ええ」
「祖父が泣いていた」
そこで言葉が止まる。
「……それだけです」
静香は目を閉じた。
「やはり」
「何がです」
彼女は答えなかった。
代わりに一枚の紙を差し出した。
古い診療明細だった。
日付は事故の一か月後。
患者名。
高城恒一。
私の名前だった。
「精神科?」
私は思わず声を上げた。
「なぜ私が」
「覚えていないのですか」
「覚えていません」
「そうでしょうね」
静香の表情が曇る。
「あなたは長い間、その記憶を失っていますから」




