11/27
五月二十日 午前八時二分
昨夜見た黒い傘の人影が頭から離れなかった。
あれは偶然ではない。
私が祖父のノートを見つけた瞬間を見計らったかのように現れた。
そして消えた。
まるで、
それ以上調べるな。
そう警告しているようだった。
朝食の席には叔父もいた。
眠れなかったのか、少し顔色が悪い。
「体調でも悪いんですか」
思わず聞いていた。
俊介は意外そうな顔をした。
「珍しいな、お前から話しかけてくるとは」
「別に」
「少し疲れただけだ」
そう言って苦笑する。
私はその顔を見つめた。
十年間憎み続けた男。
だが最近になって分からなくなってきた。
本当にこの男なのか。
祖父のノート。
瀬川の話。
匿名の通報者。
どれも叔父を犯人とするには噛み合わない。




