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五月二十日 午前八時二分

 昨夜見た黒い傘の人影が頭から離れなかった。


 あれは偶然ではない。


 私が祖父のノートを見つけた瞬間を見計らったかのように現れた。


 そして消えた。


 まるで、


 それ以上調べるな。


 そう警告しているようだった。


 朝食の席には叔父もいた。


 眠れなかったのか、少し顔色が悪い。


「体調でも悪いんですか」


 思わず聞いていた。


 俊介は意外そうな顔をした。


「珍しいな、お前から話しかけてくるとは」


「別に」


「少し疲れただけだ」


 そう言って苦笑する。


 私はその顔を見つめた。


 十年間憎み続けた男。


 だが最近になって分からなくなってきた。


 本当にこの男なのか。


 祖父のノート。


 瀬川の話。


 匿名の通報者。


 どれも叔父を犯人とするには噛み合わない。

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