表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/18

第3話「手中の熱」

 薄暗い岩肌に、荒々しい呼気がぶつかっては反響している。


 這うようにしてたどり着いた洞窟の奥で、彼は壁に背を預けたまま苦しげに身を丸めていた。




「……で。あたしは、何をどうすればいいんだい」


 水色の髪を無造作に掻き上げ、ディーネは腕を組んで見下ろす。

 戦う術ならいくらでも知っているが、これは戦闘でも治療術でもない。

 ただ、毒の作用として“異常な生理反応”が起きているだけだ。


「……教えるものか。頼むから、俺から離れろ……」


 血が滲むほど唇を噛み締め、彼は掠れた声で拒絶する。

 自らの状態を理解しながらも、なお彼女を遠ざけようとするその執着が、ディーネにはひどく歯痒く、苛立たしかった。


「……ほんと、いい加減にしな」


 舌打ちと共に手を伸ばし、彼を覆う布地を力任せに引き剥がす。

 恥ずかしいけど今はそれどころじゃない。毒の影響範囲を確認するための処置だ。


 抵抗する気力すら残っていない彼の身体を露わにすると、ディーネは自らの衣服にも手を掛け、次々と冷たい地面へ放り投げた。


 ひんやりとした空気が、素肌を撫でる。

 その刺激が、毒による過剰な反応をわずかに観察しやすくする。




「あんたが言わないなら、自分で探り当てるまでさ」


 彼に詰め寄り、その間近で反応を確認する。

 初めて目にする男の身体に、ディーネは思わず眉をひそめた。


(……これ、普通じゃないよね? リビドリア特有の症状か)


 彼女は指先で慎重に触れ、反応の変化を観察するように動かす。

 そこには意図も快楽もなく、ただ毒の作用点を探るための試行だけがある。


「っ……ぁ……!」


 彼の喉から、抑えきれない反応が漏れる。

 それが刺激への反射であることを確認し、ディーネはわずかに目を細めた。


(ちょっと触れただけでこれかい!? でもまだ……)


 観察結果を更新するように、指の動きを微調整する。

 やがて彼の身体が大きく跳ね、反射的な排出が起きる。


 それによって一瞬だけ熱のピークが下がるのを確認し、ディーネは小さく息を吐いた。


 だが、症状はまだ終わっていなかった。


「……これじゃ、足りないってのかい……」


 額の汗を手の甲で拭う。 一度落ち着いたように見えた熱は、まだ収まる気配がなかった。




 自分にできる処置は、もう一つしか残されていなかった。


 ディーネはゆっくりと身を起こし、荒い息を繰り返す彼の上にまたがるように腰を下ろしていく。


 これは、判断だ。

 情でも衝動でもなく、毒の進行を止めるための最終手段。


 見下ろす青い瞳には、揺らぎはない。


「……応急処置だよ。文句は後で聞く」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ