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39 兄と妹

以前にもこういうの見たっけ。


うん、確かに見た覚えはある…が。


以前は幼い子供たちのケンカだったが…今回はとても見てて気まずい…。


俺は誰かの部屋にいた。


この部屋は誰の部屋かは分からないが、少なくともこのまま見ていいのかと悩んでしまう。


月明りの入るこの部屋には学習机があり、そこには俺と同い年くらいと思われる高校二年生の参考書があった。


それは別にいい。


問題はベッドだ。


そこには二人寝ていた。


顔を覗き込み、俺は思わず後ずさった。


男と女。


着衣が乱れていないので、ただ二人で寝ているだけ、だ。


誰なのかは分からないが、男は結構イケメンだな。女は…まあ、普通かな。


でも、この男…どこかで見たことあるような?


女の方も…見たことあるような…気がするんだけど。


男と女は同じ方向に向いており、男が女に背を向けている。


女は男の背中のパジャマを軽く掴んで寝ていた。


…俺は何を見せられているんだ?


頼むから、エッチな展開だけは…ちょっと望んでいるけど、やはり勘弁してほしい。


すると、俺の心の声が聞こえたかのように、女がゆっくりと体を起こしたのだ。


反射的に机の下に隠れた。


いや、こんなのバレバレで悲鳴上げられたらどうしようかと…いや、そもそもどうしてここに俺はいるんだよ!


意味わからねー!


そんなことを思いつつ、じっと女の行動を観察する。


「…ありがとう」


そう小さな声で言うと、女は…ここからはっきり見えたわけではないが、あれは頬にキスをしたようだ。


長い髪をかき上げると女は俺の存在は見えないかのように通り過ぎ、部屋を出ていった。


…何なんだよ、これ…。


俺は思わず女の後を追った。


すると、向かいの部屋に入り、ゆっくりと、音を出さないようにドアを閉めていた。


男は、それに気がついていないようで、全く動くことはなかった。


ますます意味が分からない。


恋人同士なら別にあのまま寝てればいいんじゃ…いや…部屋の内装からして男は高校生、女もどう見ても年の変わらないくらいだもんな。


さすがに高校生が一緒に寝ているとか…マズイよな。


いや、その前に、この部屋に入って行ったってことは同居しているってことなのか?


高校生で恋人同士の同居…。


羨ましい…。


じゃなくて、結構特殊な状況だよな?


あれか?


親が再婚して、血のつながらない二人がこうなった、とか?


そういやそういうマンガあった気もする。


だから夜にこっそり…か。


「君にはそう見えたのかい?」


あぁ、あの声だ。


こういう訳の分からない世界に来たときは必ずコイツが関係しているよな。


「どういうことだよ、自称心の友。これはどこの誰のお話なんだよ?」


振り返るとやはり顔のない自称心の友が立っていた。


「あれはね…」


スッと俺の横に立つと、不気味なのっぺりとした顔を俺に向けた。


「兄と妹なんだよ」


俺は改めて言葉の意味を考えた。


そして、思わず声が出た。


「は!?」


おいおい、兄と妹!?


いや、世の中、俺の常識で測れないことは多いとは思うよ?


でもさ、俺は間子にそういう感情一ミリも抱いたことないし、そういう目で見たこともない。


確かに体は最近成長してきたなぁと思うけど、そこに性的衝動はない。


そう、そんなことよりも…。


「そうだね。君は年上の綺麗なお姉さんが好きだもんね」


余計な一言を言われたので自称心の友を思いっきり睨んでやった。


「余計な一言じゃないと思うよ。本当のことだし」


いや、睨んだ理由はそこじゃない。


間子のことを思い出させておいて、そうやって茶化したことに腹が立ったのだ。


どういう形であれ、妹が生きている兄を見るのは辛かった。


俺にはもう、妹は…いない。


もう…消えてしまったんだ。


「いくら考えても終わったことは変わらないよ」


気がつけば、俺は自称心の友を殴っていた。


当たらないかと思ったが、俺の拳で自称心の友は倒れた。


「酷いな…」


自称心の友がゆっくり立ち上がる。


反撃を警戒したが、自称心の友は何もしてこなかった。


「反撃なんてしないよ。どうやらこちらの配慮が欠けていたようだね。すまなかった」


頭を下げる自称心の友に俺は「あ、あぁ」と気の抜けた返事しか返せなかった。


「ところで…ここはどこなんだよ」


聞く相手がコイツしかいないので、とりあえず聞いてみる。


「ここはね、君が見ておかなくてはならない場所なんだよ」


「見ておかなくてはならない?」


妹が兄にキスするところをか!?


悪いがそういう方面に興味はない。


どちらかといえば香織と…。


「それは好きにすればいさ。香織もきっと喜ぶんじゃないかな?」


クソ!いちいち心読むなよ!


…恥ずかしいだろが。


「大丈夫。君くらいの男の子なら普通だよ」


ムカツク!


心読まれない方法ってないのか!?


「あるけど、君には無理かな」


これだよ!これがムカつくんだよ!


さっきのだって分かってて挑発したんだろ!俺が間子のことで落ち込んでるのを知ってて…楽しんだに違いない!


「それは誤解だ。そんなに性格は悪くはないよ。ただ、言葉の選び方を間違ったけどね」


コイツと話しているとどうも調子が狂う。


「これから君は、大きな決断をするわけだが」


「決断?」


「セロに願いを言うんだろ?」


そうだ。


今度セロに会ったとき、俺は願いを言う。それがオーチェとの約束だ。


「君がどんな願いを言うのか…楽しみにしておくよ」


どんな願いを言うか?そんなのオーチェと約束した「こんな愚かなことはやめてくれ」を言うつもりなんだが…。


「それ、言えるといいね」


ますます意味が分からない。


願いを言うのに何かあるのか?


…願い…か。


本当に…何でも叶えてくれるのか?


何でも…か。


「願いを言うのは君だ。君の思う願いを言うといいよ」


そう言い残し、自称心の友は姿を消した。


俺は…何を願えばいいのだろうか?


そして、本当に願いを言えば全て終わるのだろうか?


あれこれと考えているうちに、俺の意識は少しずつ、薄れていくのであった。


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