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35 二人にしか分からないこと

俺は大きな立方体の岩を生成する。


大きいと言っても俺の倍程度だ。


だが、相手からもこの岩は見えるはずだ。


大事なのは妨害されないこと。そして、作り上げることだ。


まずはまた、周囲に岩の森を生成して、更にダミー土人形を作り時間稼ぎの準備をした。


そして、創作物のイメージをする。


記憶が少し曖昧だが、できるだけ細かく思い出すようにしよう。


そんな俺に容赦なく、相手は攻撃をしてきた。


どんな名前を付けているかは知らないが、俺はこの相手の技を「空間斬り」と名付けた。


いきなり空間を斬る…過去に俺の首を切り飛ばした技だ。


辺りにいた一体の土人形の首が吹っ飛んだ!まるでロシアンルーレットしてるみたいだな、これ…。


俺はそんな中、必死にイメージする。


すると、岩は少しずつ俺のイメージ通りの形になっていく。


イメージすれば作れるってのは便利なものだ。


この能力あれば一流造形師になれそうだな。


俺はある像を作り上げた。


そう、その像とは…「魔法武闘少女 ららりん」である。


昔、24話放映されたが、魔法と武闘、両方半端な魔法少女として今でも酷評されているアニメだ。


しかし、この像を作った意図は香織ならきっと分かるはずだ。


そう、俺が香織にプレゼントしたハンカチのアニメが魔法武闘少女ららりんである。


いきなりこんな像を見せられて、何も思わないはずはない。


しかも、主人公のららりんこと夢野楽々(ゆめのらら)がハンカチと同じ、右手で魔法のヌンチャクを振りかざしているところを再現しているのだ。


出来の良さに思わず見惚れてしまうほどである。


ここまでくると色を付けて部屋に飾りたいかも。


しかし、像を鑑賞できたのは一瞬であった。


夢野楽々は見事なまでに左右に真っ二つにされてしまった…。


おい!結構気に入ってたんだぞ、この作品!!


それにしても才能の無駄遣いである。


無駄にリアリティがあり、髪や服の躍動感が今まで動いていたものを土人形にしたかのように素晴らしい作品なのに…。


それを瞬殺かよ…。


うなだれる俺。


しかし、そのスピリットスキルの無駄遣いが…相手が香織じゃないと俺に教えてくれた。


相手は何の躊躇いもなく夢野楽々の像を壊したのだ。


香織なら、一瞬でも動きが止まったはずだ!


あんなに思い入れのあるハンカチのキャラを忘れるわけがない!


相手は…相手は…香織じゃないんだな…。


俺の頬に一筋の涙が流れた。


よかった。あのお姉様の言っていること、本当だったんだ…。


だが、そんな安堵を許さないかのように相手からの空間斬りが襲い掛かってきた!


この言い方は自分でもおかしいと思う。


これだと空間斬りがまるで「見えている」みたいじゃ…。


「えっ!?」


何が見えているんだ!?


俺の頭の中には自分の周りがまるでRPGの3Dマップに見えていた。


それを斜め後ろ、少し高い位置から見ているかのような画像が、光っている人間らしきものを中心にイメージとして俺の頭に浮かんできた。


この光ってる人間が俺…なのか?


その画像には、相手からの空間斬りの軌道らしきものが…黒い太い線のような感じにはっきりと見えている。


まさかと思いながらも、俺はその軌道の外へと転がって逃げた。


すると、近くにあったダミーの土人形の首が切断されていた。


「な、何だよ今のは…。それにこの景色は一体…」


目で見える景色と頭の中のイメージのような景色が同時に俺には見えていた。


慣れない感覚に少し気持ち悪くなる。


そんな俺に向かってまた先ほどの空間斬りの軌道らしきものが頭の中のイメージで見えた。


今度は伏せてみた。


すると、頭上で「ブゥン」という音がし、後方にあった岩々が斬り裂かれていた。


「まさか…これって…」


二度も外したことが意外だったのか、相手は今度は複数の空間斬りを放ってきた。


俺は今度は逃げずに空間斬りの軌道に対してイメージをしてみる。


軌道が歪み、俺に向かって来ないイメージだ。


すると俺の左右で再び岩が斬り裂かれていた。


「そういうことか」


鏡を見たわけではないのでわからないが、俺の顔には、きっと笑みがこぼれていたに違いない。


「これが…空間コントロール…なのか?」


使えた…。


空間コントロールが…使えたんだ!


これで…相手と互角の条件だ!


俺は何発も放たれた空間斬りをきれいに避けきって見せた。


そんな俺を見て相手が急に距離を取った。


この戦いで初めて相手が俺を警戒した…と見ていいかもしれない。


もしくは…何か仕掛けるために距離を取ったのか?


こちらも油断せず警戒を…。


そう思った瞬間、俺の足元が無くなり、自由落下を始めた!


「な、な、何だよこれ!?」


落ちてすぐ、俺のいた場所は自動ドアが閉まるように閉じて消えた。


これって…どこかに飛ばされたってことか!?


いや、その前に!


俺は下を見る。


「地面は…見えないのか…無いのか…分からないが真っ暗だな…」


とりあえずランデルーズを真下に放つ。


ランデルーズは直進して、何も当たらず消えていった。


「とりあえず地面は無いみたいだな」


これで落下して激突して終わり、というのはなさそうである。


しかし…どうやって戻ればいいんだ?


というかこのままずっと落ち続けるとかあるのか!?それはそれで大問題なんだけど…。


こういう時、まずはイメージだな。


ここと自分のいた場所を繋ぐイメージ…。しかも横に向かってだな。


もしこのまま落ち続ける場合、そのまま元の空間に繋げれば、俺は落下している加速で地面に激突してしまう。


仮に横向きに繋がれば吹っ飛んだように転がるが、いくらか衝撃はマシなはずだ。


すると、俺の目の前にドアが現れ、ドアが自動で開く。


やはり某猫型ロボットアニメのせいで、どこか違う場所に繋がるイメージってドアになってしまうのかね?


そんなことを思いつつ、ドアをくぐる。


すると、いきなりずっこけたように地面を滑り、止まる。


メチャクチャ痛いじゃないか…。


痛みを堪えて立ち上がる俺。


辺りを見渡すと、先ほど戦っていた場所であった。


無事戻って来れたようだ。


立ち上がり辺りを見渡すと、相手が空に向かって何か言ってるように見えた。


何をしているのだ?


そんな相手を見ていると、相手もこちらに気がついたのか、動きを止める。


先に動いたのは相手だった。


いきなり消えたかと思うと俺の目の前に現れ、容赦ない中段の鋭い蹴りを放ってきた!


油断していたので脇腹に喰らい転がる俺。


だが、踏み込みが甘かったのか思いのほか痛くはなかった。


いや、違う。


立ち上がる俺は相手の状態に違和感を感じた。


相手は尻もちをついていた。


どういう…ことだ?


俺は相手の足元を再度見た。


…ざまあみろ。


自業自得だ。


相手の右足の下に砂が溜まっており、どうやらそれで足を滑らせたようだ。


「あれは…ららりんの残骸だ」


壊されたららりん像は砂となり、その場に砂溜まりとなった。


相手は俺に渾身の蹴りを喰らわすために、そこに踏込んだようで、それでも無理やり蹴り飛ばしたので俺はダメージが軽く、相手は体勢を崩し尻もちをついたようになったようだ。


「それなら!」


俺は相手が立ち上がる前に相手の足元の砂で右足を捕らえ、動けなくした。


立ち上がろうとした相手は再び尻もちをつくこととなり、自分の足に絡みついた砂を振り払おうともがきだした。


「今度はこっちが空間コントロールを使わせてもらう!」


俺は空間を繋ぎ、相手の背後に回り込む。


「ランデルーズ!」


使い慣れてない空間移動のせいか、体勢は崩れたものの相手の肩口をかすめた!


かすめた場所を相手は押さえながら、その場から消えた。


俺は辺りを見回す。


いない…どこに消えたんだ!?


先ほどの3Dマップみたいな感覚…とりあえずオホディパロと名付けるか。


オホディパロで周囲に相手がいないか調べてみる。


どこだ…どこにいるんだ…。


オホディパロの範囲に相手はいない。


どこか遠くに逃げたのか?


いや、アイツは空間転移できるんだ。アイツに距離は関係ない。


次に何を狙って来るか、が問題だ。


俺より空間コントロールを使い慣れている分、もしかしたら必殺技みたいなのを隠し持っていたりすることも考えておかないと。


焦馬の時も雫の時もこういう時に気を緩めて失敗している。


何よりこの空間コントロールを使うヤツには何度も負けているんだ。


油断なんかできるわけ…。


ふと俺の目の前に”何か”が現れた気がした。


しかし、何も見えない。


何だ、今の変な感覚は?


再び周囲を警戒する。


また、何かが現れた気がして振り返る。


何もない。


何だ?


この変な感覚は?


”何か”をされているが、何をされているのか分からない。


オホディパロで再び周囲を探査するも何もない。


だが、妙な不安感だけが高まっていく。


何をする気だ?


空間斬りは見切れる。


相手がどこか別の場所に俺を飛ばしても帰ってくることはできる。


見えないところからの正拳や蹴りに対しては、俺の体にいつでも岩を使って防御できるように構えている。


これ以上どんな攻撃があるんだ!?


どんな…あれ?


片頭痛…か?頭が痛い気がする。


これも何かの攻撃か?


…いや、攻撃された感じはなかった。


それにしても…どういう…あれ?


妙に息苦しい気がする…。


何だよ…これ…。息苦しい…。


原因を考えようとするが…集中できない。


何が起きて…いるんだ?


俺は必死に体を動かすが、気だるく重い。


おかしい…何だよ、これ…。


何とか俺は歩き出す。


とにかくこの場を離れなければ…。


一歩一歩…まるで亀のような速度で移動する。


これは空間コントロールを使った攻撃…なのか?


だとしたら、空間コントロールは俺の身体にも何か影響を及ぼす攻撃方法がある…のか?


ヤバイ…頭がぼんやりとしてきた…。


頭に手を当てる。熱はないようだが…。


息苦しい…疲れたか?


いや、これは…呼吸しづらくなっている。


酸素が…不足している…のか?


俺は慌てて光の玉…ボラデルーズを作り四方に飛ばす。


しかし、ボラデルーズはそのまま飛んでいった。


「何なんだ、どういうことなんだ!?」


オホディパロで周囲の確認をする。


しかし、周囲に何もなく、俺がいるだけ…いや、ちょっと待て。


そういえば俺、何で光って見えるんだ?


光のコントロールを使うからか?


もっと拡大して俺をよく見てみよう。


俺はイメージで俺をズームしてみる。


すると、俺は何か薄い膜のようなもので覆われているように見えた。


光を纏っている?いや、そんなことはしていない。


相手から見える俺の姿?


その割には俺の本来の姿が薄っすら見えている。


これって…これってまさか!


俺はさらに詳細な空間分析をイメージする。


「そういうことか…。アイツ…俺を空間ごと覆い…酸欠にさせたんだな。まさかそんな策をつかってくるとはな。これじゃあビニール袋被って戦っているみたいなもんじゃないか…」


攻撃が直線的なので、こういうトラップのような攻撃はしてこないと思っていた。


だが、それは逆に俺にそう思い込ませるための作戦だったというのだろうか?


「空間を囲むだけなら近くにいなくてもできるってことか…」


それにしてもこれは致命的かもしれない。


酸欠のせいで体が重い。


こんな状態では相手の次の攻撃に対応できるかどうか…。


それにしても…酸素不足ってこんなに早くなるものなのか?


体感では一時間くらい戦っている気がするが…まさか初めから仕掛けていたのか!?


だとしたら相手は。


・空間斬り


・周囲の探査


そして…


・俺の周囲の空間遮断


…三つだ。


相手は三つ同時に使っていたということになる。


俺にはそんな芸当できない。


それにこの読みが当たっているならもう一つ考えておかないとならないことがある。


本当に三つだけなのか、ということだ。


もし四つ、五つと使えるのなら…他のトラップも警戒しなくてはならないし、余力を持って相手は戦っていることになる。


何よりそんなに並行使用ができる相手…どれだけセンスあるんだよ。


もしかして天才の類なのか?


なるほどな。


あのお姉様が体力消費したって話はこれが原因かもな。


今まで俺が何度挑んでも勝てなかった理由もこれも原因の一つかもしれない。


考えを巡らせているとオホディパロに反応があった。


また空間斬りが接近してきている!


「そんな遠距離からの攻撃なんか…」


回避行動を取ろうとした瞬間の出来事であった。


オホディパロが…反応しなくなった!


「な、どういうことだよ!」


最悪な考えが浮かぶ。


以前シエロは俺のランデルーズを霧散させ無効化した。


同じ能力があればできると言っていた。


つまり、相手は俺のオホディパロに干渉してきて…無効化したというのか!?


これじゃあまた、見えない空間斬りになる!


一発目の空間斬りは軌道を覚えていたのでなんとか避けることはできた。


問題はこれからだ。


またオホディパロを発動させる。


一瞬だけ発動し周囲が見えるが、すぐに消えた。


その一瞬で見えた空間斬りは一発。


俺は身をよじり回避する。


マジかよ…。これはキツイぞ…。


同じ能力同士の戦いって相手からの阻害も考えて戦わなきゃならないのかよ!


それにもし今妨害しているとしたら…四つも同時に並行してスピリットスキルを使えてるってことかよ…。


俺とは比べ物にならないくらい器用なヤツってことになるな。


まるで勝ち筋が見えない。


何度やり直しても、お姉様に新たなスピリットスキルをもらっても…これじゃあ無理だ…。


もう…俺に勝ち目はない。


せめてシエロがいたら…相談できたりするんだけどな。


いるはずのないシエロを探して視線が横に動く。


生きてた頃はうるさい猫だと思っていたんだけど…な。


ふっと力が抜け、膝から崩れ落ちた。


そんな時、突如現れた相手が俺の右頬に蹴りを入れてきた!


まともに食らい転がる俺。


もう意識が飛びそうだ…。


ここまでやっても勝てないんだ…。


これ…無理ゲーだろ。


視線を相手の方に向ける。


もう…好きにしてくれ。


俺は相手に懇願するかのように、力のない視線を送った。


もう…このまま…。


…このまま?


そうか…それだ。


このままでいいんだよ。


このままじゃないと…ダメだ!


また今回も賭けにでなきゃならない…俺には学習能力はないらしい。


俺は拳に力を入れ気合を入れる。


さてと、この空間遮断、逆に利用させてもらおうか!



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