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廃墟の無法地帯ナンヨーン

場所はイチヤナから少し離れたナンヨーン。

治安の悪さは人間(ヒューマン)族の領域内では一番治安が悪い場所で知られるナンヨーン。


昔栄えていたであろう高い建物の廃墟がズラーと並んでいる。

この場所は騎士団の管理には入っておらず無法地帯そのものだ。



明らかに反国軍や他種族の不法侵入者や伏兵が居てもおかしくは無いほど隠れるには、もってこいだ。


なので騎士団とてこの無法地帯に潜む反国軍や他種族不法入国者を野放しにするわけにもいかないので、調査を定期的には行っている。

だがやはり危険はあるため、敢えて騎士団ではなく冒険者が雇われてナンヨーンを調査する。




「..ッチ。こんな広い範囲にいる敵を探せってのは無茶な話だろうが...全く騎士団も無茶な依頼をするもんだぜ...」



「だが敵に出会わないって事は良いことだ。死に急ぐお前には丁度良いしな。」



「は?ふざけんなよフクニーグ!俺はもう簡単には死なねぇ!!」



そんな2人の会話に割って入ろうとする者がいた。



「え?じゃあアタシとやってみる?」



その正体は理楊だ。包帯は以前よりは取れていた。だがまだ所々に巻かれている。



「ハハハ理楊ちゃん..それは勘弁だ...冗談だと思うけど..」



「な~に?冗談だって気づいた?バーミンもアタシの冗談に気づいてきたじゃん!!」




冗談であっても理楊の口からそういう言葉は聞きたくない。

彼女にとって冒険者で最上級ランクであるゴールドのフクニーグは愚か、妖精族であるナルタリカですら圧倒している。



そんなバーミンとフクニーグに理楊が本気になる訳がない。

そんなことがあるとすれば、彼女が賀露島が恋しくなって軽い暴走状態になるときぐらいだろう。


バーミン達は理楊こうなる状態を賀露島症候群と呼んだ。



何百何千と並ぶ高層の建物の中をしらみ潰しに探していく。

見つかる確率なんて少ない。



もし反国軍が潜んでいる建物に入っても奴等はコチラより先に探知するだろう。

そうなればソソッと逃げるだけだ。


コチラとしては罠を警戒しながら慎重に行かなければならない。なので中々捕まえられない。



だがこの徘徊も決して意味の無いものでも無いらしい。

一年を通して千人ぐらい検挙、捕縛に成功している。つまり戦闘は、いつ始まるのかは分からない。




「おい早く済ませるぞバーミン!モタモタしてっと定時になっちまうぞ?」



「くそ!それは許さねぇ!俺は反国軍を1人でも多くぶっ殺さねぇと気がすまねぇ!!」



バーミンは基本頼まれれば大抵の事はやるが、反国軍が関連していると分かるとやる気が変わる。


バーミンは反国軍に関わったばかりに酷い目に逢いっぱなしだ。だから反国軍に対して恨みがかなり募っている。




「くっそ!こんなん見つかる訳ねぇ!!」



「バカ野郎!そうやって大きな声出したりするからだろうが!!」



「は?ふざけんなよ?俺の所為だっていうのか?」



下らない口喧嘩を吹っ掛けるバーミンを退屈そうに欠伸をする理楊。

理楊もただ歩き回っているだけの作業に飽きてきた。




「ねぇバーミン?」



「..え!?あっ..なんだった理楊ちゃん...?」



少し怯えた表情をするバーミンに理楊がニヤニヤしながら問いかける。



「そんなにその反国軍って人達に会いたいなら会わせてあげてもいいよ?」




「「.........は?」」



バーミンとフクニーグは同時に気の抜けた声を漏らす。

突然何を言い出すかと思えば反国軍に会わせてやるときた。

これに対してクエスチョンマークが出ない者は居ないだろう。



「..だからアタシがその反国軍っぽい奴等を教えてあげるって言ってるじゃん!」




何を言っているのかサッパリ分からないバーミン達。

少しは理楊について分かってきたと思ったが、やはりまだ早いみたいだ。




「も~。..しょうがないな~。教えてあげるし!この建物をあと2階分上がったフロアの北側にいるわよ?」



そうやって指を指す理楊。

バーミンはまさかと思い理楊が指差す方向に気を向けて、魔力反応を探知してみる。


するとそこに反応が4つほど出た。




「フクニーグ!居たぞ!反国軍の兵だ!それに今、探知結界を察知されたから逃げられるぞ!!」



「なっ何だと...本当にいたのか!?」




探知は使用者の力量による所があるが、使用者の魔力に反映し大きな円の結界が発動し、その結界に入った者の魔力を感じとる。



人からは止まる事なく漏れ続ける魔力の元である魔素が出ていて、探知結界でこれを探知できる。

しかし探知をするという事は逆に探知されると言うことにもなる。


探知魔法の結界に入れば、誰が何処にいるのかを瞬時に魔力と魔素で判断出来るが、同時に自分の結界の魔力を知られてしまうのだ。



ボールを後ろから投げられれば、投げた者は後ろにいる。..っと言う判断が出来るように探知結界は使用した時点で敵にも自分の居場所を教えるものなのだ。



「フクニーグ!早くしねぇと逃げられるぞ!!」



「分かっている!理楊有り難う!理楊のお陰で敵を見つけて...っていない!?」



「は!?いや何で居ないんだよ!!」



理楊がすぐさっきまで居たのに居なくなったのでバーミンとフクニーグは困惑する。

しかし勝手気ままな所がある理楊の事だ。またその辺に行ってるんだろう。



とりあえずバーミンが先程探知結界で見つけた敵の方角に槍を向けた。

するとフクニーグがそれを見てバーミンの槍を必死に止める。



「バカ野郎!建物を壊すんじゃねぇ!知らねぇのかバーミン!?」



バーミンは廃墟の町ナンヨーンに来たのは初めてあり、ここでのルールを知らなかった。


この廃墟の町は今こそ廃れているが、昔はかなり栄えていたようだ。

大都市イチヤナよりも栄えていたらしく、そびえ立つ沢山の高層の建物が物語っている。



「この町は廃墟だが歴史的建造物として壊しちゃいけねぇ事になってんだ!罰則くらうぞ!!」



「は!?何でこの状況でそんなルールを守らなきゃいけねぇんだよ!それに見られてなけりゃ!!」



バーミンは槍を再度構える。

そして魔力を込めて放つ寸前でフクニーグに腕を掴まれる。

バーミンは放とうとする槍を納める。



「どうしてだ..もしアイツ等が町の市民達に危害を加えたら、どうするんだよ...」



「バーミン..それでも駄目なんだ...」



バーミンが舌打ちをする。

もう追いかけても追いつけないだろう。




「何で俺達以外誰も居ないのにそんなにヒソヒソとやらなきゃいけない?この一帯で誰か見てんのかよ?」



「あぁ..見てるぜ奴は常に...」



「一体どっからだよ!!」




フクニーグがゆっくりと指を指す。

バーミンもその指の方向を見る。そして察する。それが意味する事を。




「空..なのか.....!?」

フクニーグは黙って頷く。



「アイツは常に上空から俺達の行動を見てやがる。そんな俺らが建物を破壊した何て事になれば終わりだ。罰則..それは死だからな。」



バーミンはここで気づく、この町に来る前に騎士団の者から行かない方が良いと言われていた事に。

それに建物を傷つけるなよと念入りに言われていたのも思い出した。




「そういう事だったのかよ..だが見てるならソイツが自分から反国軍を探し出せば良いんだろうが!何で俺達に現地で捜索させるんだよ!!」




フクニーグは頭を抱えてハーとため息を吐く。

そしてその者の名前を吐く。




「ソイツの名前はお前も知ってる有名人だ。名はシャイリン・リュミエール。俺が知る中で最も強いエルフ族だ。」



「...ハハハ....何でナンバーズ最強が敵じゃなくて俺達を監視してんだよ...しかもエルフ族!?」



「お前はランクがゴールドじゃ無いから知らない様だが、アイツは明らかに反国軍と通じてるからな...あとエルフ族なのは本当だ。」



今バーミンが聞いている事は恐らくトップシークレットな話だろう。フクニーグがナンバーズ最強リュミエールが反国軍と通じていると言うのも話を聞いていたら分かる。


リュミエールがどんな能力を持っているのかは分からないが、空から監視できる者ならばワザワザ探さなくても反国軍の本拠地を見つけるのは容易いはずだ。

しかし敢えてリュミエールはこれをしないらしい。


寧ろ王都側の人間を監視し、動きを制限させるやり方を取っている。

まるで指揮官が敵側の人間のような感覚。



だが可笑しい。




「なら何でリュミエールは今もなお王都側にいるんだよ!可笑しいだろ!奴が反国軍と繋がってるのは明らかだろうが!!」



「それは王都上層部だって知ってんだよ..だがお前は分かってねぇんだよ...アイツの異常さを...」



バーミンは呆れたように話す。もう何もかも諦めているようなそんな感じである。



「上層部はな...アイツを敵に回したくねーんだよ....」



「は!?何それ?訳わかんねぇよ!ソイツを敵に回したくねぇから自分達の軍を他種族に指揮官させてんのかよ!!」



上層部がワザと敵を自軍の指揮官にさせている。理由はソイツを敵に回したくないときた。

こんなあり得ない事が解り通っていいのか?良いわけがない。


そもそも人間の軍である筈なのにエルフ族が指揮をしているという事自体おかしい。

いやおかしい事だらけだ。



バーミンは改めて自分がこの世界について全く分かっていない事に気づかされる。

リュミエールが人間族では無くエルフだったなんて事も知らなかった。

だがこの事でバーミンはこの世界が腐っている理由だけは少し分かってきた。




「賀露島のこの世界に対しての考え方が分かってきたぜ..だから市民はこの事を知らされてないんだな?」



「当たり前だ。そんなことを市民が知ったら暴動所の騒ぎじゃ済まねぇぞ?そうなったら本当に王都どころか人間は終わるぞ?」



バーミンは黙ったまま拳を強く握りしめる。

暫くそんな空白の時間が続いた後に、バーミンが口を開く。そしてフクニーグに笑いかけた。




「まあなんだフクニーグ。教えてくれて有り難うな。その情報は秘密にしなきゃいけないんだろ?それをワザワザ有り難うな。」



「本当に済まない...。」



「安心しろよフクニーグ。この事は口外しないさ。ただ俺のメイシコへの考え方が変わっただけだ。」



バーミンが話終わると少し沈黙が生まれる。お互いが別々の方向を見ながら何かをするわけでもなく、ただボーと突っ立っている。


しかしそんな彼らに1つの悪寒が襲う。




殺気。放たれた異様な殺気。

それはバーミンもフクニーグも体験した事があるものだった。



理楊だ。殺気の発せられた場所は理楊が指差していた場所。

バーミンが探知結界で反国軍を見つけた場所だった。



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