黄金時計広場
リューノはイチヤナにある黄金の時計台がある広場に立っていた。
この黄金の時計台は名前の通り黄金で覆われた時計で、その派手さからイチヤナ国民には集合場所としてよく使われる場所だ。
地元民には黄金時計と呼ばれ親しまれている。
「賀露島さん....遅いです!!」
もう黄金時計に30分前には到着しているリューノ。
もしかしたら賀露島にすっぽかされたのでは無いのかと心配になってソワソワし出す。
でも実はもうこの黄金時計の広場にいるのではないのか?と思い周りを見渡す。
広さとしてはリューノが本気で走って10秒で1周出来る程度の広さしか無いが、その広場に密集する人だかりで気づいていないのかもしれない。
広場の付近にも黄金時計の周りに集まる人たちで一杯だった。
「う~ん。この人数なら見つからなくても当たり前ですよね。探しますか...」
辺りを見渡しながら賀露島の姿を探し歩くリューノ。
するとリューノは後ろから1人の女性に声をかけられる。
「やあリューノ君。いつか振りだね?」
「あっ!ジーナさん!!」
その女性はとても凛々しく気の強そうな見た目の女性。
勿論その筈だ。
彼女は王都メイシコ直属騎士団の女性だけで編成された組織、高嶺隊の隊長コーヨフ・ジーナ・ウェイクソードである。
カリスマ性が無ければ王都騎士団の隊長が務まる訳がない。
「いやぁ~高嶺隊の隊長であるジーナさんにお声をかけて貰える何て光栄です!」
「何言ってるんだい。ワタシはリューノ君をかなり買ってるんだよ?」
ジーナはそう言うと人差し指をリューノの額に当て、顔を近づけてくる。
ジーナが近づけてくる顔にリューノは慌ててジーナから距離を取り、顔を赤くしながら謝る。
それはまるでリューノをからかっているようだ。いや完全にからかっている。
そんなリューノを見て笑うジーナ。それを見て、自分がからかわれていた事を知ったリューノはムスッと不機嫌な顔をする。
その顔を見たジーナも笑いながらリューノに謝る。
「ごめんごめん。久しぶりだから、からかいたくなるのよ。だから許してね?」
「別に良いですけど...」
「ならお詫びにリューノをワタシの隊に入れてあげようか?」
「..なっ...何を言ってるんですか!?男性禁制の高嶺隊に僕が入れるわけないじゃないですか!!」
「ハハハ」と笑うジーナ。どうやら、まだリューノをからかっているようだ。
また拗ねるリューノを見てジーナは又も同じように笑いながら謝る。
「ハハハ..でもリューノなら女装すれば入れるかもね?」
「無理に決まってるじゃないですか。女性の体格してませんよ。」
リューノの顔は確かに女性よりの顔立ちではある。しかし彼はこれでも騎士団員である。
かなり鍛えこんでいて、それなりに筋肉はある。
「そうだね~。流石にこの筋肉じゃ駄目だよね~」
そう言いながらリューノの服に手を忍ばせ、腹筋をペタペタと触りだす。
別に触ることに関しては良いのだが、ジーナが鼻息を荒くしているのが凄く気になる。
「あー!居ましたジーナ隊長!!探したんですよ~!!」
「げっ..フィーナ!もう来たのか!!」
「もう来たのかって何なんですか!?凄く探したんですよ!?」
少し離れた所から別の女の子が走ってくる。
その子はジーナに近寄るとジーナに対して説教が始まった。
「ごめんねリューノ君。今日は、ここにいるフィーナと買い物に行かなきゃいけないの。」
「あっ..そうなんですね。こちらこそ貴重な休日をスイマセンでした。」
そう言って頭を下げるリューノ。
「ハハハ!良いのよワタシに休日は退屈だからさ。それに口外は駄目なんだけどリューノ君には言うけど、もうすぐ大規模な作戦が開始されるのよ!!」
「大規模..ですか?」
「まあ大規模って言っても簡単な作戦なんだけどね?流石に内容を詳しくは説明出来ないけど、もしかしたらリューノ君も参加するかもね?」
大規模作戦。恐らく数十人か数百人で編成されるのであろう。
主に反国軍の殲滅戦で編成される大規模作戦が近々にあると言うのだろうか?
内容は分からないが簡単な訳はない筈だ。
「油断は駄目ですよジーナさん!まだ反国軍に加担する爆弾魔も捕まって無いんですから!!」
そう。リューノが取り逃がしてしまった爆弾魔であるカヲンは今も何処かに息を潜めている。
もしジーナの大規模作戦の対象にカヲンがいたとすれば、妖精ナルタリカの加護無しで簡単に倒せる訳がない。
被害は甚大なものになる筈だ。
「そっか..爆弾魔の情報くれたのってリューノ君だったね。でも安心してね。今回は反国軍じゃないから。」
反国軍では無い?
なら王国騎士団が大規模作戦を実施してまで戦う敵とは何だ?
「今は詳しい事は説明出来ないけどリューノ君がこの作戦に参加するか、作戦終了の時にまた教えてあげるね?」
「ええ!その時はまたよろしくお願いします!!」
軽くウィンクするジーナ。そのウィンクは受け流し、リューノは目をキラキラさせながら深々と頭を下げた。
そして今度こそジーナはフィーナに連れていかれ、人混みに紛れて見えなくなった。
リューノは2人が見えなくなると近くにあった木に、もたれ掛かり空を見上げた。
「王国騎士団の隊長格の人と知り合いだなんて僕は幸せ者だな...」
リューノは有名人の知り合いであることに自分を改めて誇りに思った。
だが勘違いだとは思うがジーナが僕の体を触っていた時、少しだけ鼻息が荒かったのは何だろう?
改めて考えてみたが、やはり勘違いだろう。そんな事を考えていると横から声をかけられた。
「リューノ君!遅れてゴメン!!」
その声の主は賀露島だった。
賀露島は両手を上にあげて頭を下げる。謝罪なのだろう。
「いえいえ~大丈夫ですよ。私は騎士ですから待たされる事には慣れてますよ。」
「いや~本当に申し訳ないよ...。」
「ですがそこにいる少女は、どなたですか?」
リューノは賀露島の横でパンを貪るマチを見たことがないので賀露島とマチの関係を知らない。
「あ~この子?実は拾ってさぁ~。」
「拾った!?」
何か話がややこしくなってきた。
賀露島はそう思い、リューノがヒワイ島で眠ってしまっていた間の出来事を説明した。
するとリューノは納得したように頷いた。
「良かったです。派遣騎士とはいえ、少女誘拐なんてしていたら私達の隊は壊滅ですよ。」
「そんな事を僕が絶対にするわけがないんだけどな..」
リューノは賀露島をからかうように悪い顔で笑っていた。
するとそんなリューノを見てマチがリューノの服をチョンチョンと引っ張る。
「ん?どうしたんだいマチちゃん?」
リューノはマチと同じ目線になるように膝を曲げる。
「イケメンのお兄さん~。あんまり賀露島のお兄さんをイジメるのは駄目だよ?」
「ハハハ。確かにそうだね?なら賀露島さんに今から謝るしかないね。賀露島さん!ゴメンなさい!!」
「なんか改めて謝られるのは恥ずかしいね...まあ冗談だって分かってるから良いけど..」
しかし意外だった。
マチが僕の為に、少しからかってきたリューノに謝罪を要求させるなんて。
そんな子とは思っていなかったが、さっきの物売りの少女の件といい凄く良い子なのだと実感した。
「まあそんなことより宿を探しますか!」
「..そうでした!実は私が予め調べた時に良い物件があると聞いてきたので、そこを見に行きましょう!!」
賀露島とリューノとマチは黄金に輝く時計台の広場を後にした。




