高嶺の花はどこまでも高く
ヤンデレ重愛スイッチが入ったなど一ミリも知らない翌日。
「今日こそ…今日こそカレンちゃんに『お前なら合格だ』と言ってもらえるくらいの男になって俺から告白するぞ!」
気合十分で教室のドアを開けた俺は、その場に固まった。
「あ…ユウくん、おはよう♡」
カレンちゃんが、少し頬を染めてこちらを振り返る。
その姿は、あまりにも神々しい『超絶美少女』へと覚醒していた。
元々クラスでも高嶺の花だったが、今日の彼女は次元が違った。
艶やかに整えられたサラサラの髪、ほんのりピンク色のリップ、さらには俺の好みを徹底的に研究したと思われる、上品でどこか可憐さを引き立てる完璧なメイク。
あまりの可愛さと美しさに、教室中の生徒が見とれて息を飲んでいる。
な…なんだあの圧倒的な美は!!??
俺の脳内に、絶望のショックが駆け巡る。
俺が髪型を整え、学年二位を取り、内面を磨いて「少しは追いつけたか?」と思っていたのに、カレンちゃんはさらにその遥か上を飛んでいたのだ。
俺が『10』成長したら、彼女は『1000』の美しさを手に入れて返してきた。
「こ、これじゃ…いつになっても釣り合わないだろっ!?」
俺はガバッと頭を抱え、膝から崩れ落ちそうになる。
「俺がどれだけ自分磨きをしても、カレンちゃんは俺の遥か先を行ってしまう!やっぱりカレンちゃんは、俺なんかが届かない本当の『高嶺の花』だったのか!!」
どん底の絶望に打ちひしがれる俺。
しかし。
(え? ええええっ!?)
目の前で膝をついて絶望しているユウを見て、カレンはパニックに陥っていた。
(なんでぇぇぇ!?ユウくんに『可愛い』って言われたくて、昨日の夜から必死にメイクとスキンケアを研究して気合を入れてきただけなのにっ!!)
カレンの脳内で、悲鳴が響き渡る。
(なんで『釣り合わない』なんて言うの!?違うの!私はユウくんに相応しい女の子になりたくて…ユウくんの隣にいても恥ずかしくないように頑張っただけなのに!!)
ユウからすれば「カレンちゃんが高すぎて届かない」という絶望。
カレンからすれば「ユウくんを喜ばせたくて可愛くなったのに、なぜか引き離してしまった」という焦燥。
「うぅ…もっとだ。もっと自分を追い込まないと、彼女の隣に立つことすら許されない…」
メラメラと執念の炎を燃やし、さらなる過酷な自分磨きを決意するユウ。
そんなユウの背中を見つめながら、カレンは瞳に底知れぬ重愛の光を宿し、固く拳を握りしめた。
(…私は絶対に逃がさないから。ユウくんが私を追いかけてくれるなら、私はいくらでも可愛くなってみせる…そして、二度と離れられないように、私から捕まえてあげるんだから♡)
すれ違いのベクトルが狂気の領域へと加速していくのを、俺はまだ何も知らなかった。




