頼りがいのある男とは
翌日。
「ふぅ…今日も気合を入れていくか!」
『優しさと頼りがい』。
カレンちゃんに認められるための次なる課題を胸に秘め、俺は教室のドアをガラリと開けた。
一歩踏み入れた瞬間、教室内のピリついた空気が肌を刺す。
「ほら、言えよ」
「ユウく~ん、この子が言いたい事があるんだって~」
教壇の前。
そこには、俺にバッサリ切られたはずの陰湿女子グループが、カレンちゃんの背中を強引に押し出していた。
カレンちゃんは青ざめた顔で唇を震わせ、今にも泣き出しそうな瞳で佇んでいる。
…チッ、またアイツらか。
女子グループの企みは明白だ。
クラスメイトの注目を集める前で、カレンちゃんに無理やり『嘘告白』をさせて、彼女の尊厳を完全に踏みにじるつもりなのだろう。
だが、甘い。実に甘いぞ!
『優しさと頼りがい』…なるほど!カレンちゃんは、ピンチの時に俺が『困っている彼女を颯爽と守れる頼もしい男かどうか』を試すために、あえてこんな状況を受け入れたんだな!?
見破ったぞ、カレンちゃんの深謀遠慮!
ここは男ユウ、全力を示させてもらう!
「ゆ、ユウくん…私っ」
消え入るような声で、カレンちゃんが涙ぐみながら口を開く。
「私…本当は…君のこと…」
彼女がその言葉を口にして、女子グループの格好の標的になろうとした…その瞬間。
「そこまでだ」
スッ、と。
俺はカレンちゃんと女子グループの間に割り込み、カレンちゃんを自分の背中に庇うように立ちはだかった。
「…え?」
ポカンとするカレンちゃん。
俺は背中のカレンちゃんを振り返り、優しく、そしてこの上なく頼もしい微笑みを向けた。
「言わなくていいよ、カレンちゃん、どうせまた嘘告白の暴言とかだろ?」
「えっ?でも、私…本当にっ」
「君が俺のために、どれだけ不器用で、激しい『愛の発破』をかけてくれたか…俺には全部伝わってるから、それと愛の告白は俺からさせて、カレンちゃんに釣う男になったら、ちゃんと言うから」
ポン、と優しくカレンちゃんの頭に手を乗せる。
(ち、近いっ!頭ぽんぽん!?頼もしい背中…男性の優しい手の温もり!?)
カレンちゃんの思考がフリーズする。
俺はそのままクルリと向き直し、女子グループを冷ややかな眼光で射殺した。
「君たち。昨日の今日で、まだ懲りていないのか?」
「ひっ!な、なによ!ウチらはカレンがユウくんに言いたい事がありそうだから、場を作ってあげただけで…」
「人の好意や覚悟を、自分たちのくだらない嫉妬の道具にするな!」
俺は静かに、しかし教室中に響く通る声で告げた。
「カレンちゃんは、俺をここまで引き上げてくれた恩人であり、俺が一番尊敬している女性だ。彼女を不快にさせる存在は、たとえ誰であれ俺が許さない!」
決まった。
どうだ!庇う優しさ、そして理不尽な圧力に屈しない圧倒的頼りがい! これぞ男の中の男!
自画自賛する俺の背後で。
「あ…うあ…あっ…」
カレンちゃんの顔面は、尋常じゃない熱を帯びて真っ赤に沸騰していた。
(恩人!?尊敬している!?守ってくれた…私みたいな悪魔を、みんなの前で堂々と『一番大切だ』って庇ってくれたっ!!)
罪悪感の暴風雨。
そして、目の前にある自分を守ってくれる完璧で格好良すぎる男への、理性を粉砕するほどの愛おしさ。
限界を迎えたカレンちゃんの視界がぐにゃりと歪む。
「あ…ユウ、くん…だい、す…っ」
「カレンちゃん!?」
言葉の途中で膝から崩れ落ちたカレンちゃんを、俺は慌ててお姫様抱っこで受け止めた。
「熱い!?大変だ、風邪か何かか!?保健室へ運ぶぞ!」
「「きゃあああ!?お、お姫様抱っこぉぉぉ!!??」」
クラスの女子たちが悲鳴を上げる中、俺はカレンちゃんを抱きかかえ、廊下を颯爽と駆け抜けていくのだった。




