知性でお応えします
「外面だけじゃダメだと…つまり『外面(見た目)だけじゃなくて、学力や知性といった内面を見せなさい』という深遠なメッセージだったんだな!」
カレンちゃんの愛の深さを再確認した俺は、さっそく行動に移した。
ちょうど来週には期末テストが迫っている。
この世界の男子は、勉強すら適当だ。
将来は国や女子に養ってもらえばいいやと高を括り、授業中は居眠り、テストも赤点スレスレが当たり前。
だが、俺は違う。
カレンちゃんという高貴で優秀な女子に認められるため、放課後は図書室に籠もって死ぬ気で猛勉強を開始した。
「ふぅ…この公式、こう展開すればいいのか」
シャツの袖をまくり、腕のラインを覗かせながら、真剣な眼差しでペンを走らせる。
集中しすぎて少し汗ばむ首筋。
小さな文字を見やすくするためにかけた、知的な黒縁メガネ。
まさかその時、本棚の陰でカレンちゃんが悶絶しているとは知る由もなく。
(と、尊すぎるっ!!息が…息ができないっ!!)
本棚の隙間からユウの姿を目撃したカレンちゃんは、口元を両手で押さえ、必死に胸を上下させていた。
(男子が…男子が図書室で勉強してる!?しかも袖捲くり&黒縁メガネ!?なにそのインテリフェロモン!?カッコよすぎて心臓が跳ね上がっちゃうっ!!)
「ん?あ、カレンちゃん!」
気配を感じて顔を上げると、本棚の陰に立ち尽くすカレンちゃんを見つけた。俺はすっとメガネを外し、爽やかに微笑む。
「勉強?ここ、隣開いてるよ。良かったら一緒にやらない?」
「ひゃいっ!?」
断る間もなく、俺は彼女を隣の席へと招き入れた。
「ここ、ちょっと解き方がややこしいんだよな。俺なりの解き方なんだけど、こうやると分かりやすいと思う」
「あ…う…あっ…」
距離ゼロ。
身を乗り出してノートを指差し教えるユウ。
ふわりと漂う知的な男性の匂いと、耳元で響く心地よい低音ボイス。
(ち、近い近い近い!!いい匂い!いい匂い!…教え方まで上手い!なんで…なんで暴言を吐いて傷つけた私なんかに、こんな優しく勉強を教えてくれるのぉぉぉ!!??)
カレンちゃんの脳内メーターは、とっくに限界を突破して振り切れていた。
◇◇◇◇
そして、テスト返却日。
張り出された学年順位の掲示板前は、大騒ぎになっていた。
「嘘でしょ…学年二位に男子の…ユウくんの名前があるんだけど!?」
「顔もモデル級で、頭まで学年トップクラスなの!?完璧すぎるでしょ!」
女子たちの歓声と驚愕の声を背に受けながら、俺はテスト用紙を手にカレンちゃんの席へと向かう。
「カレンちゃん!」
「ユ、ユウくん…」
俺は満面の笑みで、点数が書かれた答案用紙を見せた。
「カレンちゃんのおかげで頑張れたよ!まあ、学年一位のカレンちゃんには届かなかったけどね」
カレンちゃんは目を丸くする。
そう、学年首位の座に君臨していたのは、他でもないカレンちゃん自身だった。
「でも、これで少しは内面も鍛えられたかな?あとは…もっと優しさとか、頼りがいを磨けばいいのかな?」
首を少し傾げ、太陽のように眩しいド直球の笑顔を向ける俺。
(私…私のために!私を目標にして、学年二位まで登り詰めてくれたの!?酷いことをされたのに、私に認められたい一心で!)
罪悪感。
そして、私好みの完璧で一途な男になりすぎていて怖い(好き…大好き!)という狂おしいほどのトキメキ。
「あ…え…ユウ、くん…」
二つの感情が凄まじいスパークを起こし、脳の許容量を超えてしまったカレンちゃんは、顔を真っ赤に熟させたままプシューと頭から湯気を吹き出し、そのまま机に突っ伏して意識を失いかけるのだった。




