結集
各地の村に、回状が回り、
人々は祝祭の日を待たずして、志木原の社に集まった。
神子たちは武器を持たず、旗も掲げず、
ただ、立った。
春花が、一歩前に出る。
土を踏みしめ、空を仰ぎ、人々を見、告げた。
「聞いてください。
季節と共に生きる皆さま。
春は、芽吹くために。
夏は、水を巡らせるために。
秋は、実りを分け合うために。
冬は、命を守るために――
季節は、そうして巡ってきました。
けれど今、この地では、芽吹く前に踏まれ、
水は行き場を失い、実りは土に戻ることを許されず、
冬を越す力さえ、削がれています
……それは、
季節が背いたのではありません。
人の営みが、
理から離れてしまったのです。
私は、命じるために立ってはいません。
戦えとも、奪えとも、申しません。
ただ――春が、戻れるように。
水が、流れ出せるように。
実りが、土へ帰れるように。
その道を、塞がないでほしいのです。
もし、それが叶わぬなら。
この地は、また巡る力を失ってしまう。
私達は、季節の声を、伝える者です。
理が、ここに戻るまで。
……私達は、ここにおります。」
社の中が静まり返る。
一人の男が、ゆっくりと前へ出た。
腰を下ろし、地面に膝をつく。
「俺は……」
声は震えていたが、消えなかった。
「俺は、春を返してほしい。」
その瞬間だった。
後ろで、誰かが同じように膝をつく音がした。
さらに、もう一人。
杖をついた老人。
幼子の手を引いた女。
誰も合図をしていない。
ただ、土に近づき、頭を下げた。




