表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/70

第0069撃「メタ氏、M学院に合格する!!」の巻


平成4年1992年、3月、中学3年の3学期。


普段、愛犬のぺるは母が散歩に連れて行くとき以外、

基本的にベランダに出してオシッコをさせていました。

ぺるはオシッコをしたくなるとガラス戸を爪で音を立てて掻き、

戸の前で大きく吠えます。

「ぺる、シーシーか?」と小生がいちおう訊くと、

「ワンッ!」とぺるが答えました。

ガラス戸を開けると、外から入ってくる風が少し暖かく感じられました。


玄関のチャイムが鳴りました。

M学院からの郵便でした。

おそるおそる開封すると、

「合格しました」の文字が目に飛び込んできました。

まさか、と思いました。

受かるはずがないと思っていたのに。

ほとんど勘でマークシートを塗りつぶしたのに。

いつのまにか、正解を霊視、

あるいは勝手に自動書記モードになっていたのだろうか。


しばらく合格通知を眺めたあと、十分ほど、

動物園の山猫のように狭い家のなかをうろうろ歩き回りました。

甲村(仮名)のやつも合格通知を手に、

いまごろ歓びで舞いあがっているんじゃないやろか。


電話をかけてみました。

甲村の声は妙に平然としていました。

「で、合格したわけやな!?」と小生が訊くと、

「いやー、落ちたよー」と言います。

冗談で落ちたと言って、

あとで実は合格やねーん、と笑うつもりなのだろうと思いました。

しかし何度訊きなおしても返事は変わらない。

どうやら本当に不合格のようでした。

小生の気力も二十パーセントほどにしぼみました。


それでも合格は合格です。

翌日、小生はどこか浮き足立った気分で学校にいました。

英語の授業中、

先生の話の途中でアメリカ横断ウルトラクイズの真似をして

「ピンポーン!」と口に出してしまいます。

先生が驚いて「どうしたの?」と訊くので、

皆を笑わせるつもりで適当なことを答えました。


一度目は笑いで済みましたが、

二度三度と続けると「いちいちうるさいねん」と同級生たちに散々言われ、

教室の空気は冷えました。

休憩時間になっても非難は続きます。


そんななか大月(仮名)が、

「夢野は大人になったら男前になる顔やで。おれにはわかる」と言いました。

不意の褒め言葉に、少し救われた気がしました。


そこへ突然、校内放送が流れました。

「図書室より三年四組の夢野直時君、

『けんかの仕方教えます』がいまだに返却されていません。

至急返却に来てください!」


教室にどっと笑いが起こりました。

よりによって題名まで言わなくてもいいのに、と思いました。

〈笑わせているのではなく、笑われているのだ〉と気づき、

穴があれば入りたい気分でした。


その本を一年以上返していませんでした。

佐江衆一『けんかの仕方教えます(岩波ジュニア新書78)』。


最初は、自分を虐めてくる相手に、

格闘で圧勝するための技を学ぼうと思って借りました。

けれど読んでみると、

理不尽なことにどう向き合うか、

自分を曲げずに生きるとはどういうことかが書かれていました。

「けんか」とは殴り合いではなく、

自分の考えを持ち他人と向き合う姿勢なのだと語る本でした。


少し難しく感じ、あとでちゃんと読もうと思っているうちに、

返却期限をこえて、月日だけが過ぎていました。

読書もまた中途半端です。


これ以上恥をさらさぬよう、

翌日は本をナップサックに入れて登校し、

全力ダッシュで図書館へと駆け込みました。


その日の深夜三時からは

『福山雅治のオールナイトニッポン』がありました。

弾き語りをしながら話す「ましゃ」は実に格好よく、

小生もあんなふうに軽やかに生きられたらと思ったのでした。


T-BOLAN「離したくはない」(1992年)

YouTubeで視聴する https://youtu.be/FjG4A3_whXY?si=2H1c6LukSOgD0fG1


続く。果てしなく続く……。

(まだまだ続くよーっ!お楽しみに〜!)



いつもお読みくださり、

無限の無限のありがとうございまする☆

ブックマーク(フォロー)していただけますと嬉しいです。

では、ご氣元よう‼️

( ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝ )੭⁾⁾

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ