防衛
警鐘が空を裂く。
三方向同時侵攻。
単一進化個体。
数は少ない。
だが、質が違う。
重い魔力が空気を圧迫する。
⸻
北門
最初に崩れかけたのは北。
巨大な樹の腕が城壁を叩く。
石が砕け、兵士が吹き飛ぶ。
「支えろ!」
土属性部隊が防壁を重ねる。
だが二撃目で粉砕。
風刃が飛ぶ。
しかし魔物は身体を傾け、最小限で回避。
「学習してる……!」
グレイスが前に出る。
地面に手をつく。
氷が一気に広がる。
足元を凍らせ、動きを奪う。
だが樹皮が軋み、ひび割れ、再生。
「長くは止められない!」
セラフィナが炎を放つ。
爆炎。
だが分散される。
「収束型でいく!」
炎が細くなる。
一点集中。
その間、風部隊が視界を奪う砂塵を巻き上げる。
水部隊が関節部を冷却。
再生速度が落ちる。
「今だ!」
氷槍が核を露出。
炎が貫く。
しかし半壊止まり。
魔物が暴れ、兵士を弾き飛ばす。
一人が立ち上がる。
血を流しながら槍を突き立てる。
「守るんだろ!」
その叫び。
士気が上がる。
全員で押し込む。
氷、炎、風、水、土。
総力。
最後は氷で完全拘束し、炎で核を焼き切った。
北門、撃破。
だが。
皆、息が荒い。
肩で呼吸する。
グレイスの腕も震えている。
セラフィナの炎も揺れている。
リシェルが言う。
「休む時間ないわ。南が崩れそう!」
グレイスが歯を食いしばる。
「……行くぞ」
走る。
疲労を抱えたまま。
⸻
南門
到着した時には城壁が抉られていた。
耐炎型個体。
炎を浴びても焦げるだけ。
兵士が押される。
「温度差を作れ!」
リシェルの指示。
水流が魔物を包む。
急冷。
樹皮にひび。
グレイスが氷でさらに温度を落とす。
セラフィナが炎を圧縮。
だが魔物は突進。
氷壁が砕ける。
衝撃が走る。
グレイスが膝をつく。
「まだだ……!」
兵士二人が横から突撃。
関節を固定。
その一瞬。
炎が核を貫く。
爆ぜる。
南門、撃破。
歓声はない。
ただ、安堵。
グレイスは汗を拭う。
セラフィナも無言で息を整える。
リシェルが低く言う。
「西が最後」
三人は目を合わせる。
疲労が顔に出ている。
それでも。
グレイスが笑う。
「守るんだろ?」
セラフィナが小さく頷く。
「当然よ」
再び走る。
足は重い。
でも止まらない。
⸻
西門
最悪だった。
再生特化型。
斬っても、凍らせても戻る。
兵士が倒れる。
城壁に取りつかれる。
「二重核よ!」
リシェルが叫ぶ。
「同時に潰さないと無理!」
魔物が氷嵐を裂く。
セラフィナが焼き払う。
だが再生。
グレイスの氷が鈍る。
疲労が限界に近い。
「合わせる……!」
三人が位置を取る。
兵士たちも動く。
風でバランスを崩す。
土で足を固定。
水で魔力循環を一瞬分断。
その瞬間。
氷が左核を凍結。
炎が右核を焼却。
同時。
完全同時。
巨体が、崩れる。
西門、撃破。
完全防衛。
だが三人はその場で膝をつく。
息が荒い。
腕が重い。
リシェルが呟く。
「……一度は守った」
グレイスが立ち上がる。
ふらつきながら。
「まだ終わってない」
その時。
空気が変わる。
重い。
冷たい。
瓦礫の向こうから、
ゆっくりと歩いてくる影。
ゼノ。
静かに、前線へ現れた。




