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紅炎戦記  作者: えみり


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55/71

防衛

警鐘が空を裂く。


三方向同時侵攻。


単一進化個体。


数は少ない。


だが、質が違う。


重い魔力が空気を圧迫する。



北門


最初に崩れかけたのは北。


巨大な樹の腕が城壁を叩く。


石が砕け、兵士が吹き飛ぶ。


「支えろ!」


土属性部隊が防壁を重ねる。


だが二撃目で粉砕。


風刃が飛ぶ。


しかし魔物は身体を傾け、最小限で回避。


「学習してる……!」


グレイスが前に出る。


地面に手をつく。


氷が一気に広がる。


足元を凍らせ、動きを奪う。


だが樹皮が軋み、ひび割れ、再生。


「長くは止められない!」


セラフィナが炎を放つ。


爆炎。


だが分散される。


「収束型でいく!」


炎が細くなる。


一点集中。


その間、風部隊が視界を奪う砂塵を巻き上げる。


水部隊が関節部を冷却。


再生速度が落ちる。


「今だ!」


氷槍が核を露出。


炎が貫く。


しかし半壊止まり。


魔物が暴れ、兵士を弾き飛ばす。


一人が立ち上がる。


血を流しながら槍を突き立てる。


「守るんだろ!」


その叫び。


士気が上がる。


全員で押し込む。


氷、炎、風、水、土。


総力。


最後は氷で完全拘束し、炎で核を焼き切った。


北門、撃破。


だが。


皆、息が荒い。


肩で呼吸する。


グレイスの腕も震えている。


セラフィナの炎も揺れている。


リシェルが言う。


「休む時間ないわ。南が崩れそう!」


グレイスが歯を食いしばる。


「……行くぞ」


走る。


疲労を抱えたまま。



南門


到着した時には城壁が抉られていた。


耐炎型個体。


炎を浴びても焦げるだけ。


兵士が押される。


「温度差を作れ!」


リシェルの指示。


水流が魔物を包む。


急冷。


樹皮にひび。


グレイスが氷でさらに温度を落とす。


セラフィナが炎を圧縮。


だが魔物は突進。


氷壁が砕ける。


衝撃が走る。


グレイスが膝をつく。


「まだだ……!」


兵士二人が横から突撃。


関節を固定。


その一瞬。


炎が核を貫く。


爆ぜる。


南門、撃破。


歓声はない。


ただ、安堵。


グレイスは汗を拭う。


セラフィナも無言で息を整える。


リシェルが低く言う。


「西が最後」


三人は目を合わせる。


疲労が顔に出ている。


それでも。


グレイスが笑う。


「守るんだろ?」


セラフィナが小さく頷く。


「当然よ」


再び走る。


足は重い。


でも止まらない。



西門


最悪だった。


再生特化型。


斬っても、凍らせても戻る。


兵士が倒れる。


城壁に取りつかれる。


「二重核よ!」


リシェルが叫ぶ。


「同時に潰さないと無理!」


魔物が氷嵐を裂く。


セラフィナが焼き払う。


だが再生。


グレイスの氷が鈍る。


疲労が限界に近い。


「合わせる……!」


三人が位置を取る。


兵士たちも動く。


風でバランスを崩す。


土で足を固定。


水で魔力循環を一瞬分断。


その瞬間。


氷が左核を凍結。


炎が右核を焼却。


同時。


完全同時。


巨体が、崩れる。


西門、撃破。


完全防衛。


だが三人はその場で膝をつく。


息が荒い。


腕が重い。


リシェルが呟く。


「……一度は守った」


グレイスが立ち上がる。


ふらつきながら。


「まだ終わってない」


その時。


空気が変わる。


重い。


冷たい。


瓦礫の向こうから、


ゆっくりと歩いてくる影。


ゼノ。


静かに、前線へ現れた。

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