開戦
西の王国。
巨大な樹に囲まれた玉座の間。
テンペスト・グラードは静かに立っていた。
失っていた右腕。
そこに雷と樹が絡み合い、新たな腕が形作られていく。
紫電が走る。
樹皮が筋肉のように脈打つ。
完全ではない。
だが、戦うには十分。
テンペストはゆっくり拳を握る。
雷が爆ぜる。
「問題ない」
部下が報告する。
「東の炎は出力半減のまま。氷の少年は第二覚醒域です」
テンペストは目を細める。
「だが、質が変わった」
一瞬だけ感じた違和感。
炎が戻りかけた瞬間。
「単独ではない力だ」
低く笑う。
「ならば試す」
玉座の間に雷が落ちる。
「単一進化個体を投入。王都を包囲せよ」
兵たちがざわめく。
「そして――」
テンペストは空を見上げる。
「我も出る」
紫雷が天を裂く。
「開戦だ」
⸻
王都。
突然、警鐘が鳴る。
「西・北・南に高魔力反応!」
兵が叫ぶ。
城壁の外に現れる樹の魔物。
数は多くない。
だが一体一体が異様に強い。
兵士たちが押される。
「硬い……!」
「再生が速い!」
リシェルが指示を飛ばす。
「陣形崩さないで!属性連携!」
グレイスは氷を放ち、足止めする。
セラフィナが炎で焼く。
だが今までより削れない。
「質が違う……」
その時。
空が暗くなる。
紫の雷雲。
そして――
遠く西の空に、巨大な雷樹が立ち上がる。
その頂に立つ影。
テンペスト。
雷を纏い、王都を見下ろす。
「東の炎よ」
声が雷に乗って響く。
空気が震える。
兵士たちが動きを止める。
「貴様は未完成のままか」
セラフィナの炎が強く揺れる。
悔しさ。
怒り。
そして、恐怖はない。
隣にグレイスが立つ。
距離は近い。
テンペストが続ける。
「完成してみせるか」
挑発。
完全な宣戦布告。
雷が城壁近くに落ちる。
爆発。
衝撃。
戦争が始まった。
グレイスが低く言う。
「行くぞ」
セラフィナが頷く。
「ええ」
二人は並ぶ。
まだ共鳴は起きない。
だが。
王が動いた。
もう逃げ場はない。
西と東。
全面戦争が始まる。




