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紅炎戦記  作者: えみり


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54/71

開戦

西の王国。


巨大な樹に囲まれた玉座の間。


テンペスト・グラードは静かに立っていた。


失っていた右腕。


そこに雷と樹が絡み合い、新たな腕が形作られていく。


紫電が走る。


樹皮が筋肉のように脈打つ。


完全ではない。


だが、戦うには十分。


テンペストはゆっくり拳を握る。


雷が爆ぜる。


「問題ない」


部下が報告する。


「東の炎は出力半減のまま。氷の少年は第二覚醒域です」


テンペストは目を細める。


「だが、質が変わった」


一瞬だけ感じた違和感。


炎が戻りかけた瞬間。


「単独ではない力だ」


低く笑う。


「ならば試す」


玉座の間に雷が落ちる。


「単一進化個体を投入。王都を包囲せよ」


兵たちがざわめく。


「そして――」


テンペストは空を見上げる。


「我も出る」


紫雷が天を裂く。


「開戦だ」



王都。


突然、警鐘が鳴る。


「西・北・南に高魔力反応!」


兵が叫ぶ。


城壁の外に現れる樹の魔物。


数は多くない。


だが一体一体が異様に強い。


兵士たちが押される。


「硬い……!」


「再生が速い!」


リシェルが指示を飛ばす。


「陣形崩さないで!属性連携!」


グレイスは氷を放ち、足止めする。


セラフィナが炎で焼く。


だが今までより削れない。


「質が違う……」


その時。


空が暗くなる。


紫の雷雲。


そして――


遠く西の空に、巨大な雷樹が立ち上がる。


その頂に立つ影。


テンペスト。


雷を纏い、王都を見下ろす。


「東の炎よ」


声が雷に乗って響く。


空気が震える。


兵士たちが動きを止める。


「貴様は未完成のままか」


セラフィナの炎が強く揺れる。


悔しさ。


怒り。


そして、恐怖はない。


隣にグレイスが立つ。


距離は近い。


テンペストが続ける。


「完成してみせるか」


挑発。


完全な宣戦布告。


雷が城壁近くに落ちる。


爆発。


衝撃。


戦争が始まった。


グレイスが低く言う。


「行くぞ」


セラフィナが頷く。


「ええ」


二人は並ぶ。


まだ共鳴は起きない。


だが。


王が動いた。


もう逃げ場はない。


西と東。


全面戦争が始まる。

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