3人の特訓
訓練場に、乾いた風が吹く。
セラフィナは腕を組み、三人を見渡した。
「第二覚醒は、力が増える段階じゃないわ」
静かな声。
けれど、揺るがない。
「第一覚醒は“使う”段階。第二覚醒は“理解する”段階よ」
グレイスは目を伏せる。
レオルは頭をかく。
リシェルは腕を組み、真剣な目で見つめる。
「氷は凍らせる力じゃない。“停止”」
「風は吹き飛ばす力じゃない。“空間”」
「水は流す力じゃない。“循環”」
セラフィナの視線が順に刺さる。
「自分の属性をどう“定義するか”。それが第二覚醒」
沈黙。
最初に口を開いたのはレオルだった。
「じゃあ俺、空間支配? なんか最強感あるな」
「語感だけで決めないで」
リシェルが即座に返す。
「どう扱うかまで考えなさい」
「はいはい」
空気が和らぐ。
グレイスは小さく息を吐く。
“停止”。
凍らせることじゃない。
動きを止める。
魔力の流れも。
風の運動も。
――世界の動きそのものを。
⸻
「理屈は分かったわね?」
セラフィナが一歩踏み出す。
「なら、実戦よ」
炎が揺れる。
空気が熱を帯びる。
三人は自然に散開する。
レオルが前。
グレイスが左。
リシェルが後方。
「三重構造で来る!」
リシェルの声。
炎が層を成して迫る。
一枚目をレオルが弾く。
だが二枚目で押される。
「外側じゃなく内側の流れを崩して!」
レオルの風が軌道を変える。
グレイスが踏み込む。
氷刃ではない。
足元の砂塵を――止める。
炎の揺らぎが一瞬鈍る。
その隙間を、レオルの風が突き抜ける。
リシェルの水が、乱れた魔力を整え、流れを制御する。
三つの属性が重なった。
セラフィナは動かない。
だが、炎の層がはっきりと歪んだ。
確かに、届いた。
静寂。
レオルが息を呑む。
「……今の、当たったよな?」
リシェルが頷く。
グレイスは拳を握る。
セラフィナは炎を消した。
その瞳は、わずかに柔らいでいる。
「上出来」
それだけ。
だが、十分だった。
「もう、背中を守る側じゃないわね」
夕陽が三人の影を伸ばす。
並んだ影。
少し重なり合う。
レオルが笑う。
「次は本気で来いよ」
「調子に乗らないの」
リシェルも笑う。
グレイスは空を見上げた。
強くなれる。
届く。
守れる。
そう思えた。
風が、優しく吹く。
――その日、王都から風が消えた。




