第六十三話 ドリモンゲットだゲェェェェェ!
「ゲップを我慢してコーラを4本飲んだのよ!攻撃系炭酸モンスター『ポーラベアー』!あなたに決めた!!」
短パンオーバーオール姿のミスマルが、赤い缶のタブを引くと、中から瓶コーラを片手に持った白熊が飛び出した。
「コラー!」(鳴き声)
「うっぷ、ポーラベアー!『こうげき』!!」
声と一緒に別なものを出さないように注意しながら、ミスマルは命令する。
べちゃっと地べたに座っている白熊は、お尻をクイクイっと器用に動かして、敵のモンスター(宙に浮く髭のおじさん)に近付き、コーラの瓶で殴った。
『ミスターBOSS』に大ダメージ!
『ミスターBOSS』の反撃。
「ボス! ボス!」(鳴き声)
『髭ブーメラン』
髭のおじさんから髭が発射される。
クルクル回転する髭は、白熊の頭に突き刺さる。
「つっ! シタテル!」
「は、はい!! 『そうけん美女』!!、『そうけんヒール』!!」
「びじょびじょーー!」(鳴き声)
白熊の背後にいた葉っぱの服を着て、先に葉っぱのついた棒を持つ美少女が、棒で白熊をツンツンする。
「コッ、コラー!」(鳴き声)
熊は悶え、元気になる。
『ぺ○シマン』の全体こうげき、『比較広告』!
「しゅわーーー!」(鳴き声)
赤い棒グラフと赤より大きい青の棒グラフが降ってくる。
ポーラベアーとそうけん美女は、下敷きになる。
「ぐ、えげつな。『ポーラベアー』! 反撃! これでトドメだ! 全体攻撃『スカッど爽やかミサイル』!!」
赤い缶を集めて作った大きなミサイルが、ミスターBOSSとぺ○シマンに直撃する。
『どっぎゃーーん!!』
『戦闘に勝利した! ドリモンベース『コンビニノウソン』はKO社チームのものになった!!』
「やったあーー! 完、全、制、覇!」
短パンオーバーオールのミスマルとシタテルは抱き合って喜んだ。
エレヒの商業区画を再現した記憶樹内の仮想空間。
ドリンクモンスターズ エレヒ大会最後の対戦。
飲料連合軍最後の拠点、コンビニノウソンが陥落し、全て拠点に、KO社の赤い旗がたなびく。
「やりましたね姫!」
有翼のアプサラ人の集団がパタパタと飛んでくる。
「うん! ありがとう『シエロ』!」
ミスマルは、集団の先頭、紫リーゼントのアプサラ人とハイタッチをする。
「我が故郷のコーラ信者は、お役に立てましたかな?」
「たった たった! 勝負をひっくり返せたわ!」
ミスマルはご機嫌だ。
「つきましては……」
「判ってるわ。学園内の飛行許可ね。任せといて!」
ミスマルとシエロは悪い顔で頷き合う。
「ふふふ、姫も一度どうですか? 4階からの『姫様だっこダイブ』」
「えー? いいのー? でもー、ダーリンが何て言うか…」
「…………お兄様」
内股気味のシタテルは、悪代官のような腹黒フェイスの元兄から目をそらした。
「さあさあ! 兎に角完全勝利を記念して勝鬨をあげるわよ! せーっの!…」
笑顔で赤い缶を掲げ、息を吸い込むミスマルの頭の上に、小さな雨雲のようなものが現れ、そこから二本の巨人の指が生え、ミスマルの首根っこをつまむ。
「ミスマル姫!」
驚く一同の前で、指につまみ上げられたミスマルは、雲に吸い込まれて消えた。
最後まで笑顔のままだった。
「シタテル姫!」
驚いたアプサラ人達の視線はシタテルに集中する。
「慌てないで。多分えりりんです。その内私も……」
言い終わらないうちに再び現れた指に、シタテルは拐われてしまった。
「……私たちもログアウトしますか。今日は店を予約してます。戦勝記念のオフ会へと突入です! 飲み放題ですよ!」
気を取直し、シエロが笑顔でアプサラ人達に呼び掛けると、こんな答えが返ってきた。
「もう何も飲めないよ……」
遡ること数日。浩平の中でタケミナカタが眠りについた日の翌日。
浩平が自分のベッドで目を覚ました時、エレヒからの迎えが、浩平の家に着いたところだった。
黒スーツ姿。銀縁眼鏡で七三分けの気難しそうな男。
パリッと糊の利いたシャツと、白いスカート。そこから伸びる手足は褐色で、髪は銀色の女。
エリドゥの配下、サイオゥとバンジィである。
「専用のシャトルをコーディネートセンターのシャトルポートに待機させています。生活用品などもすべて用意します。必要とあらば取りにも来させますので、最低限のものだけ持ってください」
サイオゥが神経質そうな声で、丁寧に告げる
「よ、40秒で支度しな!」
バンジィは浩平と目を合わせず、何故か赤面しながらぶっきらぼうに言った。
「……」
寝起きの浩平は未だに事態が把握できていない。
ベッドから半身を起き上がらせた格好で、ぼんやりとバンジィを見詰めている。
「………っっっっっ、ううっ、もう!」
顔を逸らし何かにじっと耐えていたバンジィは、とうとう抗しきれず、浩平の横に座って、パジャマを脱がそうと、ボタンに手をかけた。
「ほらほら! シャキッとしな! まだ寝ぼけてんのかい、しょうがないねえ、あたしが着替えさせてやるから!」
目に異様な光を宿したバンジィは、恐ろしい手際のよさで、ボタンをはずす。
──くそーっ! なんだこのかわいい生き物は! 一刻も早く巣まで持って帰って、冬眠の間中、股に挟んでおきたいぞ!!
「いかん、これはダメなやつだ。人選を誤ったな」
サイオゥは頭を抱える。
「……え? おあ! 何? 何ですか?! バンジィさん!」
やっと意識がはっきりしてきた浩平は、慌てて自分の脱がされかけのパジャマを押さえる。
「……っつ、」
目に痛みを覚えた浩平は、片目を瞑る。
「……どうしたのその目? 片方真っ赤だよ」
手を止めたバンジィは、浩平の顔を押さえ、心配げに覗き込む。
「これは急いだ方が良さそうだな。浩平君。朝食はシャトルで取ろう。ご両親と妹さんに挨拶したらすぐ出発だ!」
サイオゥはそう言ってポケットから電話を取り出す。
「ジンカン。そっちはどうだ? うん、急いでくれ……」
バンジィは着替えの手伝いを再開したが、急にズボンにかけた手を止めた。
「うっ! ぐんぐにーるが、もーにんぐ、ぐろーりぃ……」




