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地球鎮守府  作者: 山内海
地球鎮守府
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第十二話  ペルセウス腕海戦 終盤 

第十二話  ペルセウス腕海戦 終盤 









「前衛艦隊が交戦を開始しましたぜ。親分」


 古参のビロク兵が告げる。


「ラプシヌプルクルか。最近よく顔を合せる。蛇神のうちでは小ぶりな方だな。前回散々追い散らしたから、大きさもミミズ並だ。だがこいつの顎門の守りは堅いぞ」


 エリドゥは面白くなさそうに呟く。


「おまいさん、大丈夫なのかい? 浩平や会長、副会長、それに星陵の生徒も乗っているんでしょう?」


 相変わらずエリドゥの膝の上に陣取り、天音は心配そうに訊ねる。


「子供等に関しては心配ない。生身で来ている訳ではないからのう。吹き飛んだとことで『いやな夢を見た』と起きた後思うくらいだ」


 天音は未だに、いまいち状況がわかっていない。

『そなたは今、夢を見ている』この長い夢の冒頭で天音はエリドゥにそう言われた。

 それは良いとして、ほかの夢の登場人物はどうなんだろう?

 みんなが一斉に同じ夢を見ているのだろうか?

 それとも自分の頭の中だけの出来事なのだろうか?

 今、自分は地球に向かって飛来する小惑星群を撃退する夢を見ている。

 作戦が失敗に終わり、『ああ、いやな夢を見た』となったとき、どうなるのだろうか?

 小惑星群が来ることも、夢の中の出来事で、目が覚めたら普通の日常に戻れるのだろうか?


「ま、いいか、こう悩んでいるのもどうせ夢なんだし」結局そういう結論に至り、天音はそれ以上追求しないようにした。


「親分! 旗色が悪そうですぜ」


 モニターには巨大な鬼の顔に喰いつかれようとしている東○タワーが映っている。


「速度を上げろ、助太刀する!」


「へい!」


 見る見るうちに距離を縮める『一四五まる』。

 そのまま加速を続ける。


「アジスが三下共を蹴散らしてくれている。美味しい所を持っていくぞ! 角笛を鳴らせ! 全速力で顎門に飛び込む!」


 船内で『中えりりん』と『チビえりりん』が一斉に角笛を吹く。


「尻に目薬、お口に座薬ときたもんだ!」


 『きたもんだ!』の『だ!』のところでガツン! 慣性制御が殺しきれない、強烈な衝撃がブリッジを襲う。

 天音はエリドゥに抱きかかえられ無事だった。

 エリドゥの駆る『一四五まる』はアジスの艦隊の陣形の真ん中を突っ切り、ブラックホールも飛び越えて鬼の口に突っ込んだ。

 顔の下半分を一瞬で失ったラプシヌプルクルは機能を停止し、自らが作ったブラックホールに吸い込まれてゆく。

 『一四五まる』はすぐに反転し、制御を失った後も地球に衝突する可能性のある小天体の破壊を始める。

 老将軍に隙はない。

 遅れてアジスの艦隊も掃討戦に参加する。

 ブラックホールは鬼の顔の残骸をほとんど吸い込んだ時点で消失した。


「今回は楽勝だったな」


 エリドゥは事も無げに言う。


 こうして、ペルセウス腕海戦は地球防衛艦隊の勝利で終わった。


「エリドゥー! こわかったよー!」


 半べそのアジスがスクリーンに映る。

 泣いているだけではない。

 片目と両鼻から血を流して壮絶な顔になっている。


「よくがんばったなアジスよ。さあ帰ろう地球へ」


やさしくエリドゥは言う。


「うん」


 アジスの横には手を握り合う浩平とシタテルが映っている。


「みんな無事なのね」


 涙ぐんで天音が言う。


「いやだな天音君。僕の顔を見てよ!無事なもんか」


 むくれてアジスは言う。


「大丈夫かシタテル」

 とか、


「はい、浩平さんが手を握っていてくれたおかげです」

 とか、いちゃつく若夫婦の会話が、アジスの背後から聞こえる。



 艦隊は地球に向けて帰路につこうとした矢先。エレヒより緊急通信が入ってきた。


「別方向から地球に向けて新たに三柱の蛇神が接近中です。『レムル・ヤトノカミ』『レムル・シウコアトル』そして、……。そして『レムル・ランテマリオ』!」


 悲鳴に近いエレヒのオペレーターの声。

『一四五まる』の歴戦の船員達がが凍りつく。


「『レムル・ランテマリオ』双頭の蛇神。1万3千年前の意趣返しか……」


 鼻にしわを寄せて呟くエリドゥ。

 報告にショックを受けたのか、アジスはその場で卒倒し、救護班に運ばれてゆく。


「おまいさん……」


 天音がエリドゥを見上げている。


「心配するな。地球を守護して幾星霜。これより多数の蛇神を相手取った事もある」


 努めて明るくエリドゥは言う。

 しかし、地球文明は何度か滅びてしまったと聞いている。

 エリドゥが護りきれなかったことも過去にあったのだ。

 多数の蛇神と戦い、エリドゥはその時の人類を守りきれたのか? 


 天音は恐ろしくて聞くことが出来なかった。

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