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泣き虫ワンコ 前編

涼視点です。今回は短めですが後編に続きます。

目が覚めた。


まだ朝日は完全に登ってはいないがまぁだいたい早朝と言える時間である。これがいつも道理に眠ったのならずいぶんと早起きだか昨夜はそうでないので当てはまらない。


「………ヴァーぁー。んっんんっ!!あーあー。よし。声も出るな。」


なにしろ首を絞められて意識を失ったので起きたときに確認しないと恐ろしいことになる。

………首を絞められることに慣れつつある自分に気づいてちょっとむなしくなった。


「あー…。ちょっと鏡でも見てくるか…。」


ぺたぺたと裸足で床を歩く。今まで特には気にしていなかったが首を絞められて意識失うときはどういう仕組みなのだろう。酸素が吸えなくて窒息なのか、頸動脈を押さえられて脳に血液が行かなくて意識を失うのか。はたまた両方か。まぁどちらでも変わりはないか。


「うわぁ…。」


ある程度は予想していたがもうがっつりどす黒い痕が残っている。


「あー…。また小雪に怒られる…。」


なんで抵抗しないの!!って怒られる。幸いといってよいかわからないが今回絞められた所は首の下の部分。タートルネックなどで隠せる場所。


「………土日があってよかった。」


前回佑に首を絞められたときは次の日が普通に平日だったのでものすごく困った。仕方がないので学校はタートルネックなどで隠せないかわりに包帯をぐるぐる巻いて学校に行った。ものすごい騒ぎになったが。


「いや本当に今日、明日休みでよかった…。」


正直なところこの2日間で消えるとは思っていないがせめて薄くなってくれると嬉しい。

暗く変色した痕を指でなぞる。特には痛みはない。

佑の癖は多分一般的なものではない。それくらいは私でもわかっている。でも拒否出来ないのだ。


「困ったことだなぁ。」


まぁいつまでもみていてもどうにもならないので佑の元に戻る。


「佑。起きたか?」


「………涼…?あれ…俺何してたっけ?」


「気にするな。起きたなら朝ごはんにしよう。…あぁその前に顔を洗ってこい。ひどい顔だ。」


記憶が飛んでるならちょうどいい。あれがフラッシュバックしても困る。


「 …。あ、涼…。それ………あ、 ああああああぁ!!涼、涼、涼、涼、涼、涼、涼、涼、涼、涼、涼、涼!!そうだ、そうだ…!俺また………また涼殺そうとした…。」


「気にするなと言ったろう。いつものことだ。お前が暴走したなら受け入れてやる。大したことじゃない。」


あぁやっぱりフラッシュバックした。まぁ首の痕を隠していないから当たり前か。いつまでも隠せるものではないから隠すつもりもないし。混乱しつつある佑をぎゅっと抱き締める。


「あああああああああぁ!!涼!!だめだ!!だめだ!!だめだ!!涼、近づいちゃだめだ!!………また殺しちゃう…。」


「とりあえず落ち着いて深呼吸しろ。話はそれからだ。」


ヒューヒューと音が漏れる。うまく落ち着けばいいが。

佑の暴走が始まったのはいつくらいのことだったろうか。私に関わるなにかが引き起こしているのは知っていたが未だにどんなことが引き金になるのかまったくわからない。

初めて首を絞められたのはたしか私が中学生になりたてのころ。ちょうど両親が交通事故で死んでからだった気がする。

両親が死んで泣くこともなかった私のそばでずっと佑は泣いていた。

次の日には泣き止んでいたが佑があんなに泣いたのはあれっきりだ。まぁ暴走したときにはよく泣いているけれども。


「涼、涼、涼…。」


すがり付く佑をもう一度しっかり抱き締める。

初めて首を絞められた時のことはよく覚えている。

ひんやりと冷たい両手が首に回りじわじわと力がこもっていく感覚。薄れる意識に霞む視界。

濡れていく自分の顔とぐちゃぐちゃな顔の佑。


あの日から佑はおかしくなっていたと思う。

涼だってさすがに気がついてるんです。

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