魔道具オタク
◆(レイジ視点)
某日、俺は便利屋の共有スペースに寝転がり、ぼーっと魔術の教科書を読んでいた。
「——魔道具は魔術研究の一環で生まれたものであり、それまでの魔術は紙に刻印することによる魔導書としての側面が強かった……ふーん」
「ん! 魔道具の話!?」
急に耳元で声がして思わずソファから転げ落ちた。
「大丈夫?」
「……だいじょうぶ。てかなんだ今の食いつきは」
「え、魔道具の話でしょ? 何か気になることとかないの? 何でも教えるわよ!」
すっごい饒舌だな……美玲はたまにこのような、普段の冷静さからは考えつかないような熱狂的状態になる。目を輝かせ聞いてもいないことを語りだすのだ。
考えてみれば全部魔術とか、特に魔道具の時だな。ガジェット好きみたいなもんか。
「美玲って魔道具が好きなのか?」
後でこの発言を後悔した。
「……! もしかしてレイジ! 魔道具に興味あるのかしら!?」
「え、あ、はい」
「いいわ! 教えてあげる!!!」
美玲は腰に手を当てふんぞり返ると、普段持ち歩いている魔道具箱を持ち出した。
なんというか、子供が褒められたくて何かを喋り始める時みたいな……
「まずはこの箱! 実はこれ自体も魔道具なのよ!」
「ほうほう」
「強度増加の術式が多重に刻印されているの。さらにそれだけじゃなくて魔力をにじませた特殊なインクによって周りを加工しているのよね! しかも割と高いうえにこの色っていうのが実は少しずつ違うのよ! つまり、それぞれが世界に一点ものなの! いいでしょう!」
「すげえな」
勢いはすごいが一点ものの魔道具か。たしかにすごいな。
「私は家にあと何個かストックしているのだけど、それについては置いておいて、私がいつも使うものについて教えてあげましょう!」
ふむ。
「これは見たと思うけど結界の展開に使うものね! 魔力を込める割合を調整することによって魔力にどれだけ強いかの比率を変えられるというのは他の結界魔道具と変わらないけど、とにかくコスパがいいのよね! これは事務所共用のもので私のものはここにはないのだけど、数が多くないとはいえ利便性でみたときこれが結界魔道具のナンバーワンね」
ほうほう。
「こっちも見せたと思うけど、拳銃の形を模した魔道具ね。細かい種類を元にはしてるわけではないけど他にもモデルの違うものがたくさんあるわ! 性能は簡単、魔力を弾丸に変換した後、高速射出することができる。威力の増減は自由自在だし、なによりも操作の補助! これがあるから当てやすいのよね! 私のお気に入りよ!他にも気に入ってる理由が——」
…………なるほど?
「これは——こっちは——ああこれも——」
やばい、こいつ止まらん! だんだん話についていけなくなってきた!
少し流れを変えないと!
「どれもすげぇんだけどさ。そんなに買っててお金って大丈夫なのか?」
瞬間美玲が魔道具を持った手と、とめどなく愛があふれ出していた口を止める。
そして無表情のままこちらへと向いてくる。
「金欠よ」
「え」
「気になった魔道具をすぐに買ったりすると、気づくとお金が無くなっているの。それで私はいつでも金欠よ」
美玲の目から涙がツーと垂れる。
「だからあまりコンビニとかに頼らずに自炊しているのよ。今月も厳しくて……」
こいつやばい。魔道具ジャンキーすぎる。てかそしたら初めて会ったとき……
「俺と初めて会ったときコンビニの袋持ってなかったか?」
「そのときはたまたま喉と小腹が空いていたから……やむを得ず」
こんなやつから500円分のものを奪ったのか俺は。
「……今度なんか奢るよ。メシとか」
「そんな、気にする必要ないわよ」
「いいから……」
俺の憐れみを含んだ視線に、美玲は目を細め少し頬を膨らませていた。




